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岸谷五朗・寺脇康文・葵わかなが『The PROM』大阪公演に向け抱負。「みんなが窮屈な思いをしている今、届けたい」
3月10日~4月13日の東京公演に続き、5月12日から大阪で上演される『Daiwa House Special Broadway Musical「The PROM」Produced by 地球ゴージャス』。岸谷五朗、寺脇康文、葵わかなが大阪市内での会見に登壇し、緊急事態宣言発出が迫るなかでの率直な想いや、大阪公演への意気込みを語った。(取材・文/小野寺亜紀 舞台写真撮影/引地信彦、NAITO)
NEWS & INFORMATION 2021 4/29 UPDATE
2018年にブロードウェイで開幕、2019年のトニー賞7部門にノミネートされ、豪華な顔合わせでの映像化も注目を集めたミュージカル『The PROM』を、地球ゴージャスが日本初上演。3月10日~4月13日の東京公演を終え、5月12日~16日までフェスティバルホールで大阪公演を行う。(※当初の5月9日開幕が12日開幕に変更)
会見が行われた4月23日は、緊急事態宣言の発出直前。昨年の地球ゴージャス『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』は、新型コロナウイルスの影響で大阪公演が全公演中止となっただけに、今作『「The PROM」Produced by 地球ゴージャス』はぜひ大阪で上演、成功させたいという思いがそれぞれの挨拶から伝わってくる。
岸谷五朗(以下、岸谷)「東京公演では『気づいたら涙が溢れ、最後大きな爽快感と感動が押し寄せ、拍手していた』というような感想をすごくもらいました。今、何か重いものを背負ってコロナのなかで生きているお客様たちが、この作品を観たときに特別な感情が湧いて、それが涙となり笑顔となるようです。大阪でも公演ができることをひたすら願って稽古をし、最高の舞台を持ってこられたらと思っています」
寺脇康文(以下、寺脇)「僕らのエンターテインメントが皆さんの一服の清涼剤になれば、という気持ちでやってきました。東京公演は(劇場の)半分のキャパでやらせてもらいましたが、歌って踊ってワッとなるエンディングで、明かりの点いた客席を見て『この状況でこれだけ来ていただいた』という気持ちになり、僕らは精一杯のパワーを皆さんにお送りし、お客様からもエネルギーをいただきました。PCR検査を頻繁にやりながら感染対策を万全にして千秋楽まで走り続けたので、ぜひ大阪でも作品を届けたい気持ちでいっぱいです」
葵わかな(以下、葵)「東京での36ステージを無事に走り切ることができてホッとしています。1カ月の公演のなかで、この作品のもつ明るさ、エンターテインメント性に富んだ作品の良さが今の日本のお客様にすごく届いたのを、劇場の空気感から感じることができて、本当に良かったなと思っています。大阪の皆様にも、あの前向きなエネルギーをお届けできるよう、さらに稽古に励みたいです」
葵わかな演じるエマは、アメリカの高校生。ダンスパーティ「プロム」に同性の恋人・アリッサ(三吉彩花)と参加しようとするが、多様性を受け入れられないPTAがプロムを中止。そこにブロードウェイスターたちが、自分たちの話題作りのためにエマを助けにやって来る。レズビアンという役柄に挑んだ葵をはじめ、それぞれがキャラクターについて語った。
葵「エマはプロムにアリッサと行きたくて仕方がないのですが、それを許さない周りの環境があり、スタートから難しい状況に置かれています。ブロードウェイから来る“ちょっと変わった大人たち”との出会い、アリッサとの衝突や、自身の葛藤もありつつ、自分らしく生きるために大切なことを見つけ成長していく、明るく元気な女の子です。恋人が同性ということはあまり意識することなく演じられました。人を好きな気持ち、アリッサが大好き!という核となる気持ちが純粋であればあるほど輝くキャラクターなので、そこを大切に演じています」
岸谷「“ちょっと変わった大人たち”が、私や寺脇さん、D.D.アレンを演じる大黒摩季さんや草刈民代さんです! ブロードウェイでスターになったと、自分のことをセレブだと言う人間的に欠けた部分を持っている醜い大人たちなのですが(苦笑)、エマによって清らかに浄化されていきます」
寺脇「僕が演じるトレント・オリバーは、有名なジュリアード音楽院を卒業している、ということばかり言っている男(笑)。裏表がなく、空気は読めないけど悪いやつではなくて、途中で大きな役割も果たしていく。核心をつく台詞も力むことなく言える男なので、非常に楽しんで演じています」
演出を担った岸谷は、葵について「主演として舞台に立つ力、精神力の強さ、芝居の巧さ、全てにおいてすごい女優さん。毎公演進化していて、大阪でもまだまだ僕らの想像を超える大きな成長をしていくのでは」と絶賛した。
また岸谷は、「この作品は学校で偏見や差別にあう、普通なら悲惨な物語になりそうなところを、エマの芯の強さでそれをひっくり返そうとする。重いテーマを音楽や笑いで吹き飛ばしていく作品であり、それがエンターテインメントの持つ力だと思わせてくれます。LGBTQに関しては、非常にセンシティブなことがたくさんあるので、俳優やスタッフに向けて何度も講習会を開きました。舞台のうえでそれをやるということは、非常にオープンにしないといけないし、みんなでざっくばらんに話せる環境が必要だと思いました」と、丁寧に言葉を紡いだ。
アリッサを演じる三吉彩花と葵は楽屋が一緒で、「メイク、発声、電子レンジのところに行くタイミングまで一緒になった(笑)」と話すほどのシンクロ率で、公演中も仲は深まったという。「彩花ちゃんは料理が上手なんですが、私にご飯を作ってきてくれて、胃袋をしっかりつかまれていました!」と葵は明るく打ち明ける。
さらに寺脇はD.D.アレン(大黒摩季・草刈民代)と、ホーキンス校長(佐賀龍彦・TAKE)が大阪公演ではWキャストになっている面白さについてコメント。「大黒摩季さんはパワフルな歌声とのギャップがある、甘えた感じの可愛らしいD.D.アレン。草刈さんは出てきただけで“大スター”というオーラがある強いD.D.アレンです。また、佐賀くんは非常に熱血で生真面目、生徒思いの校長先生を創り上げ、TAKEはスウィーティな歌声もですが、大人の包容力があり甘く生徒を包んでいく校長先生になったと思います。どの組み合わせかで全く違った印象になっていて、どれも魅力的です」
最後に3人が作品の見どころなどを力強くアピールした。
葵「何かしらうまくいかないことを抱えている、人間味のあるキャラクターたちばかりで、悩みの解決方法に観ている方は共感して下さるはず。地に足のついた部分がある一方、音楽やスピード感で、明るいエネルギーを巻き起こしていくのがこの作品の良さ。現代の私たちにすんなり届く“優しさ”みたいなものもあるので、それをみなさんに届けたいです」
寺脇「キャッチーな歌やダンス、群舞がまず見どころ。そして『自分らしく生きる』というテーマがあり、お客様が自分の生き方を明るく見つめていただけると思います。終わった後、『涙を流しつつ、顔はにこやか』という泣き笑いの感想を多くいただきました。幸せな思いにさせてくれる作品ですので、ぜひ楽しみにしていて下さい!」
岸谷「地球ゴージャスはずっとオリジナル作品を創ってきましたが、今の時代にやる演劇は何だろうと考えながらの26年間でした。今回はブロードウェイ作品ですが、2019年に現地で観たときはもっと巨大な笑いの渦に巻き込まれていく印象で、日本バージョンは寺脇さんも言いました通り“泣き笑い”、涙につながる作品というニュアンスも。今まさにコロナ禍で窮屈な思いをしている時に、届けたい作品になりました。何かお客様に心の栄養や、地球ゴージャス流の元気を与えられたら最高ですし、大阪でもっと素晴らしい作品になるよう毎日挑んでいきたいです」
【データ】
Daiwa House Special Broadway Musical
『The PROM』Produced by 地球ゴージャス
2021年3月10日(水)~4月13日(火) TBS赤坂ACTシアター
2021年5月9日(日)~5月16日(日) フェスティバルホール
※緊急事態宣言発出のため5月9日~11日の公演を中止。詳細は公式サイトへ。
脚本:ボブ・マーティン チャド・ベゲリン
音楽:マシュー・スクラー
作詞:チャド・ベゲリン
日本版脚本・訳詞・演出:岸谷五朗
出演:葵わかな 三吉彩花/大黒摩季・草刈民代・保坂知寿(トリプルキャスト)※保坂は東京公演のみ出演
霧矢大夢/佐賀龍彦(LE VELVETS)・TAKE(Skoop On Somebody) (ダブルキャスト)
藤林美沙 小浦一優(芋洗坂係長)
青柳塁斗 島ゆいか MARIA-E 百名ヒロキ
加藤潤一 仙名立宗 田口恵那 砂塚健斗 杉山真梨佳 鈴木百花
飯田一徳 織 里織 山田 元 酒井比那 酒井翔子 内木克洋 髙城 徹
岸谷五朗 寺脇康文