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萩尾望都さんも出席! スタジオライフ『PHANTOM』制作発表
創立30周年を迎えるスタジオライフが記念公演『PHANTOM THE UNTOLD STORY』の制作発表を行いました。萩尾望都さんの出席によるトークショーも開催。スタジオライフの代表作である『トーマの心臓』『訪問者』+『湖畔にて』連鎖公演上演も発表され、華やかな空気に包まれました。(写真/Yukari Watanabe 取材・文/大原 薫)
NEWS & INFORMATION 2015 10/21 UPDATE
『PHANTOM』は『オペラ座の怪人』で有名なファントム=エリックの今まで語られなかった生涯を描く作品(原作スーザン・ケイ)。2011年にPART1、2012年に後編PART2が上演され、今回PART1とPART2の連続上演となります。
脚本・演出を担当する倉田淳さん
「『PHANTOM』の原作に出会ってぜひ上演したいと思い、10年間あたためてきた作品。片田舎から豪華なオペラ座までどう舞台化するかが問題だったが、『レ・ミゼラブル』のマット・キンリーさんに舞台美術をお願いして、得も言われぬ雰囲気のある空間を作っていただきました。
エリックの人生を描く壮大なドラマでPART1では醜く生まれついた彼が自覚し、自分を受け入れて一人で生きていく決心をするまで、PART2ではその後の彼の姿を描きます。初演からいつか連続上演をすることを念頭においていた。今回の上演でさらなる深みを目指したい」
続いて、キャストが登場し、意気込みを語りました。
山本芳樹さん(PART1&PART2エリック)
「初回に引き続きエリック役を務めさせていただきます。今回は連続上演で演じさせていただく。自分でも未知の世界ですが、エリックの生涯を演じられるのは、俳優をやっている以上幸せなことだと思っています」
松本慎也さん(PART1エリック・PART2エリックの少年時代)
「『PHANTOM』は僕たちにとって思い入れの強い作品で、今回は満を持しての連続上演。エリックを演じるのは今回初めてですが、自分しかできないエリックを探してそれを舞台上で体現して、PART2でエリックを演じる笠原さんにしっかりバトンをつなげていきたいと思います」
笠原浩夫さん(PART1ジョヴァンニ・PART2エリック)
「山本はエリックの少年から大人へ、一人でやるということですが、僕は松本演じる少年エリックを受け継ぐことに。1月の『大いなる遺産』でも僕が大人ピップ、松本が少年ピップを演じていたので、すでにチームワークはばっちりです(笑)。エリックを再びやらせていただくのはとても光栄。真摯に演じ切りたいなと思っています」
関戸博一さん (PART1&PART2マドレーヌ)
「エリックの母親、マドレーヌをやらせていただきます。初演ではクリスティーヌを演じていました。エリックにキスをしてあげたクリスティーヌから、エリックにキスをしてあげない母親の立場に変わり、エリックの人生の始まりの物語に参加できることを幸せに思います」
久保優二さん(PART1ルチアーナ・PART2クリスティーヌ)
「『PHANTOM』初参加です。PART2では全世界の女優さんたちがうらやむクリスティーヌを男性の僕がやらせていただくことになりました。この一年間の30周年記念公演でいろんな役をやらせていただいたんですけどそこで得た糧をしっかりと自分の中に引き出して、親身にお芝居できたらと思います」
曽世海司さん(PART1ジョヴァンニ・PART2ラウル)
「初演から4年たってどのくらい感覚が残っているかなと思ったんですが、昨日稽古をしたら自分でもびっくりするくらい感覚が蘇ってきました。劇団にも熱や匂いが残っていて、それを踏まえて再演の深いところに入っていけるんだと思います。PART2ではエリックに翻弄されるラウル役。真摯に立ち向かっていきたいなと思います」
質疑応答ではキャスティングの意図を聞かれ、倉田さんが
「久保はまだおぼつかないところがあるけれど、相手の働きかけに素直に心が動いていく役者なので、彼の可能性に賭けました。エリックの山本と笠原は鉄板です。エリックは普通の人間と同じように生きたいと思いながら、醜さで周囲から退けられるために歪んだ人生になってしまう。痛みや苦しみが共有できるところに、山本と笠原には信頼を置いています。初演でクリスティーヌだった松本には、今なら(期待に)答えてもらえると思いエリックに挑戦してもらうことにしました。彼の歪みを構築しながらピュアな部分も残っているという複雑さをしっかり落とし込んでいけるんじゃないかと思います」
と答えました。
また、久保さんがエリック役の三人と共演した印象を聞かれ
「芳樹さんのエリックと一緒に稽古をしたとき、芳樹さんは仮面をつけてるんですね。仮面の奥に表情が透けて見えるような感じがして……」
というと、山本さんが顔を隠して久保さんに向かい合います。
久保「ああ、何か……見えました(笑)。皆さん、すごく頼りにしています」
と答えました。
続いて、スタジオライフの代表作『トーマの心臓』原作者である萩尾望都さんと倉田さんとの特別対談が行われました。イベント「The Rise of The Curtain ~Studio Life 30th Anniversary ACT2~」“アート×演劇”のギャラリー展で、萩尾さんがスタジオライフの登場キャラクターを描いた原画が展示されていましたが、その原画が屈強なSP(奥田努さん・仲原裕之さん)によって運び込まれ、会場を彩ります。
倉田「『トーマの心臓』の初演は1996年。20周年記念として再演させていただきます」
萩尾「2回目の公演から見せていただいているが、役者さんが卒業しても倉田さんの美意識が変わらないから安心して見ていられる。役者さんの変化のバリエーションも楽しめるんです」
倉田「萩尾先生の作品では普段使わない言葉を使っているんです。優しくて難しくない、美しい日本語なんですね」
萩尾「ドキドキ(笑)。倉田さんはよく“今はまだ役者が渋谷の若者みたいだけど、これからドイツに行きます”とおっしゃるんです」
倉田「登場人物も萩尾先生の絵からヒントをもらって演じていますね。たとえばユーリの瞳の陰りから、感じるものがあると思って。心情を絵に込めるのはどうなさっているんですか?」
萩尾「“この台詞の裏にはこういうことを思っているんだな”と思いながら描くんです。描いているうちに“これだよね”というところに行きついて、最後のひと押しが画面に出てくる」
倉田「今回は『トーマの心臓』『訪問者』に加えて、『湖畔にて』のリーディング公演もさせていただきます」
萩尾「『湖畔にて』は絵物語のような作品で」
倉田「絵から静かな湖畔の匂いが立ってくるんです」
萩尾「(昨年の『トーマの心臓』の特別イベントとして上演された)リーディングを見たら、自分の話なのに“いい話だなあ”と思って(笑)」
倉田「エーリクと(義父の)シドがぽつぽつと会話をしているのが素敵なんです。二人の間に(エーリクの亡母)マリエの影が見える。『トーマの心臓』もトーマが亡くなるところから始まるし、人は死と隣り合わせに存在しているなというのを萩尾先生の作品から感じます」
萩尾「昔から死はどこか遠くにあるものでなく、いつも身近にあるなと感じているんです。死んだ人を死んだと思っていないところがあるんですね。不思議だけれどそこにいると思う。私たちは亡くなった方と関わり合いながら生きているんだなと思います」
萩尾さんがスタジオライフに寄せるあたたかな思いが伝わり、早くも『トーマの心臓』『訪問者』『湖畔にて』上演への期待が高まる対談でした。
スタジオライフ『PHANTOM』は2015年11月11日~12月7日、シアターサンモールにて。
萩尾望都作品連鎖公演『トーマの心臓』『訪問者』+『湖畔にて』は2016年2月25日~3月13日、シアターサンモールにて上演されます。
スタジオライフ公式ホームページ http://www.studio-life.com/