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中村獅童主演、岩松了新作『青い瞳』製作発表に上田竜也、前田敦子らも登壇
岩松了さんによる書き下ろし『青い瞳』が、11月に東京・シアターコクーンで上演されます。8月28日に製作発表が行われ、主演の中村獅童さんと岩松さんのほか、上田竜也さん、前田敦子さん、勝村政信さん、伊藤蘭さんが登壇しました。(文:千葉玲子)
NEWS & INFORMATION 2015 8/31 UPDATE
新作『青い瞳』で岩松了さんが取り上げるのは、戦場から故郷へ帰ってきた帰還兵。中村獅童さん演じる帰還兵と、彼を取り巻く家族を中心に描かれます。会見ではまず、岩松さんが、執筆の動機について語りました。
「『青い瞳』は今回のために考えたのではなく、以前からやりたかった帰還兵の話です。ちょうどこの時期に、こんな豪華メンバーで、僕自身わくわくしてます。獅童くんとやった『羊と兵隊』(2008年)は身代わり兵隊の話でした。その後も戦争についての芝居『国民傘』(2011年)をやって、今回は第3弾。戦争が悪いことだと皆わかっていながら、なぜ終わることがないんだろう、という問いが自分の中にありまして。そのことを考えていく中で、帰還兵が戦争の大きな問題をかぶってしまう、戦争の後遺症というんでしょうか…その存在が大きなドラマになり得ると考えました」
現代に帰還兵を取り上げる意義について問われると、「家庭では母親が絶対的な存在として育ったけれど、戦場から帰ってきたら、母親が絶対ではないという価値観に変わっていくことに興味があるんですね。構築された世界が崩れる、帰ってきたときに、あんなに絶対的だった母親が絶対的でないように見えてくるということが本人の苦悩になっていく。人が置かれる状況が変わったとき、価値観がガラッと変わってしまうという苦悩は、戦争や帰還兵に限らず、普遍性がある問題ではなかろうかと」と答えました。
続けて、「あと、行き場がない人たち。若者も若者でなくても、帰還兵が価値観が変わってしまって苦悩するのと似た感じで、社会に適合できない問題を含んでいるのではないかと思います。我々は家庭という母体で育ちますが、社会に出たときに、家庭というのは果たして良いものなのか、正しいものなのかという選択を迫られるような気がするんです。そこらへんのことが、今回のテーマと言えばテーマになるんではないでしょうか」と明かしました。
現時点で脚本は書き上がっていませんが、岩松さんによると、それぞれの役どころは、「僕が父親役で、お母さんが伊藤蘭さん。獅童くんの妹役に前田敦子さん。妹が出入りしているグループに上田(竜也)くんがいる。獅童くんを何とか社会復帰させたいという親の願いがあって、それに対して登場してくるのが、勝村(政信)くん」とのこと。
2度目の舞台となる前田さんは、初の岩松作品に緊張するかと聞かれると「岩松さんがお父さんで蘭さんがお母さんなので、それだけですごく安心です」とニッコリ。すると、隣の獅童さんから「僕がお兄ちゃんなんだけど…」とツッコミが入り、「お兄ちゃんをすごく愛している妹の役だと思うので、目いっぱい、大好きなお兄ちゃんに会いたいと思います」とはにかんでいました。
公演は11月1日(日)~26日(木)まで、東京・シアターコクーンにて。
詳細はhttp://www.bunkamura.co.jp/をご覧ください。
中村獅童(戦場から帰還した青年・ツトム)
岩松さんとは、『羊と兵隊』以来7年ぶり。尊敬していて大好きな岩松さんとまたご一緒させていただくことが、非常に嬉しいです。しかもお母さんが伊藤蘭さんで、妹が前田さん。今からとてもわくわくしています。
最初に岩松さんの作品を拝見したときは、途中ちょっと意味がわからない所があったりして、役者さんは本当に意味がわかってやってるのかな、すごいなと思いました。だから、岩松さんが「いつか一緒にやりましょう」って言ってくださったとき、「僕できません」って言ったことがあって。だけど、どこかその世界観に引き込まれる自分もいて。「岩松さんの書いたセリフを言える」ってことが嬉しい。そういう気持ちにさせてくださる作家さんだと思います。今回も、企画内容をうかがう前から、岩松さんと聞いた時点で是非やらせていただきたいという気持ちでした。とても楽しみです。
上田竜也(チンピラグループの一員、ミチルの恋人・サム)
シアターコクーンの舞台に立てるのは2年ぶりです。とても感謝していて、嬉しく思っています。岩松さんの演出ということでとても楽しみにしています。また、前回に引き続き素晴らしいキャストの皆さんとご一緒できるので、いろんなことを吸収しつつ、勉強して、自分の役柄を追求したいと思います。
岩松さんの何気ないセリフがとても好きなんですよね。さりげなく言ったセリフが自分の心に「あ、なるほどな」と刺さったりします。今回もいろんな楽しいセリフが飛び交うんだろうなと、とても楽しみにしています。
前田敦子(ツトムの妹・ミチル)
昨年シアターコクーンで舞台デビューをさせていただきました。約1年後にまた舞台に立てると思っていなかったので、同じ場所に帰って来ることができて非常に嬉しいです。岩松さんの作品は、あまり数を観ているほうではないと思うんですが、とても世界観に引き込まれると言いますか、いつも「羨ましいな」と思って観ていた世界でした。去年『太陽 2068』に出演したときご挨拶させてもらったんですが、すごく緊張したのを覚えています。今回こうしてお仕事させていただくのがすごく嬉しいです。精一杯頑張りたいと思います。
私と同世代の方たちって、なかなか舞台を観に行く勇気が出ないと思うんです。そもそもチケットの取り方がわからなかったり。舞台って少し遠い存在に感じられるかもしれませんが、映画とかと同じように、もっと身近に感じてほしいですね。今回も、若い方たちにも足を運んでもらえるきっかけができたら良いな、と思います。
勝村政信(謎の男・タカシマさん)
あらすじを聞いたのは今日が初めてで、何を意気込んでいいのかよくわからないんですけど(笑)、岩松さんに「ホンは書けたんですか?」って聞いたら、「まだこれからだ」っておっしゃられたんで、まだ意気込めない状態です(笑)。
岩松さんのセリフは非常にややこしいです。会話が進んでいるようで進んでいないようで。でも、ふだん僕らも他人と会話するときって、ややこしいですよね。「俺のことどう思ってるんだろう?」とか、好意的な人も好意的でない人もいるしとか…色んなこと考えながら一つ一つ言葉を出していきます。まさに岩松さんの作品は、そういうことなのではないかと。市井の人間の、格好をつけないというか、飾らないというか、人間の嫌な側面でもある正直な部分が非常にうまく書かれている。読んでいて疲れるし、やっていても疲れるし、非常にやっかいです。でも観終わったときに、爽快ではないですが、素晴らしいものを観たなというのが毎回残るんです。
今回20年ぶりですが、岩松さんの演出もやっかいなんです、大変です。でも、それが素晴らしい作品につながっていくんだと思ったら、岩松さんて偉大なんだなと。本人を前にして言うのは恥ずかしいんですが。また、僕の師匠の蜷川さんをはじめ演出の方は芝居が下手な場合が多かったりするんですが(笑)、岩松さんは芝居が非常にうまいので、稽古場で岩松さんの芝居もじっくり拝見したいと思います。
伊藤蘭(ツトムの母)
岩松さんの作品に出演させていただくのは3回目なんですけれども、岩松さんがお書きになった言葉をそのまま素直に語っていれば、間違いなく面白いことになるだろうと確信しております。あまり難しいことを考えずに、シンプルな気持ちで取り組んでいきたいと思います。お稽古中は想定外のことを要求されたりもするので、それが怖いような、また楽しみの一つでもあります。キャスト・スタッフの皆さまと力を合わせて、良い舞台になるように努めますので、皆さんどうぞよろしくお願いします。