インタビュー & 特集

INTERVIEW! 『レ・ミゼラブル』 知念里奈さん

2年ぶりの再演となるミュージカル『レ・ミゼラブル』。4月に東京で開幕し、全国公演中の本作は、さらに進化した新演出版が大きな話題となっています。ファンテーヌ役で出演の知念里奈さんは、この名作に10年にわたり出演。コゼット、エポニーヌ、ファンテーヌとヒロイン3役を演じた日本で唯一の女優で、世界でも稀となる存在です。母親でもある彼女が“レ・ミゼ”への熱い思いを語ってくれました。(文/小野寺亜紀、撮影/大東佐和子)

INTERVIEW & SPECIAL 2015 6/12 UPDATE

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――2013年の新演出版でもファンテーヌ役として出演され、今回2年ぶりの再演となりますが開幕していかがですか?

 新演出版では色々な面が新しくなったのですが、さらにそこからまた新しく色んなことが変わっていて、お客様からも「より分かりやすくなった」というとても嬉しい声を頂いています。一番最近だとメルボルンでこの作品が開幕したのですが、そこで変えられた演出を外国のスタッフの方々が日本に持ってこられて、舞台稽古、プレビューまで手を加えてらっしゃいました。それこそ映像や音楽のテンポ、照明にいたるまで。常に進化しながら『レ・ミゼラブル』は世界で上演されているのだなと実感しましたし、今とてもいい状態で演じさせて頂いています。

 

――ファンテーヌのお衣裳も変わったとか?

 そうなんです! 2年前も新しいお衣裳だったのですが、今回ファンテーヌだけまた大きく変わって。以前は花柄が入ったシルクのワンピースだったのが、今回は水色の軽い綿素材のワンピースになりました。前回は「きっとファンテーヌはこれしか高価な服を持っていなくて、毎日これを着ているんだろうな」と思って演じていたのですが、また新たなリアリティーを探しています(笑)。

 

――これまでコゼット、エポニーヌ、ファンテーヌと3役を演じられて、それぞれの役を通して作品の見え方も変わりましたか?

 はい、物語は同じなのに全く違う視点で見ることができて本当に幸せです。最初に演じたコゼットは、ものすごく難しい役でした。『レ・ミゼラブル』ってみんな一生懸命に生きながら、でも報われなくて苦しくてそれでも懸命に生きて……というお話なのに、コゼットは幼少の頃は辛いけれども最終的には愛する人と結婚して幸せになるという役なので、演じどころが難しかったです。でも今、そのコゼットの母親のファンテーヌを演じてみて、コゼットはこの作品の“希望”なんだなとすごく思います。ジャン・バルジャンもファンテーヌもマリウスも、エポニーヌもマリウスを介して「コゼットのために」と、懸命になります。

 

――みんなの“希望”なんですね。

 はい、エポニーヌはその対極の役で、まるで真逆の見え方がしてとても貴重な経験になりました。きっとお客様も、失恋して辛い時はエポニーヌの気持ちで観て下さると思います。そしてお子さんを持てばファンテーヌになりと、年齢によっても共感する役が違う。それが長い間、この作品が愛されている理由なのだと思います。

 

――知念さんは実生活でも母親ですし、今はファンテーヌが一番理解できますか?

 そうですね、一番好きと言ったら語弊があるかもしれないのですが、それぐらい好きです。世の中のお母さんはみんな、きっとファンテーヌの部分を心の中に持っていると思いながら演じています。愛する子のために、その子のことだけを想って死んでゆくという、すごく悲しいけれど幸せな役で。母親として尊敬しています。

 

――ラストシーンにも登場されますが、あそこはどんな思いで演じてらっしゃるのですか?

 ジャン・バルジャンが天に召される時に迎えに来るというシーンなのですが、ジャン・バルジャンへの感謝の気持ちが溢れるのと、コゼットがきれいな娘になっているのを見てやっぱり胸がいっぱいになります。自分が持てなかったものを全て持ってきれいになっている姿を見る、あの瞬間はとても大事にしています。

 

――ファンテーヌが歌う『夢やぶれて』のシーンも大きな見せ場ですね。

 あの曲はスーザン・ボイルさんの歌唱でも有名になったりして、ミュージカルの枠を超えた名曲ですよね。「しっかり歌わなきゃ!」と、大事な役目を負っていると毎回感じます。悲しいメロディで、歌詞も“夢はかえらない”と歌うのですが、演出家の方には「強く、強く」と言われています。そこは新演出版になってから、とても強調するように言われました。

 

――前のオリジナル版では違ったのですか?

 以前はもうちょっと情緒的に歌うような感じだったんです。でも彼女はとても強い人だと。子どもを守るために“諦めていない”という気持ちを大切に、寂しくなりすぎないように歌っています。『夢やぶれて』に関しては、歌い出しのアレンジも今回新たに変わったんですよ。色々と腑に落ちて、いい形で歌えています。

 

――他に今回の再演で、特に印象に残るシーンはありますか?

 実は私、3役演じさせて頂いていますが、ジャン・バルジャンが一番好きなんです! もし男性だったら絶対演じてみたかったし、男性としても「こんな人がいたら!」と思います。そのジャン・バルジャンが歌う『独白』というナンバーが、今回特に「なんて素敵なの!」と思いました。犯罪者が持たされるイエローチケットを破り捨てて、「俺は生まれ変わるんだ!」とワーッと歌うところなんですけど、あそこは本当に鳥肌が立ちます。

 

――今回は3人のジャン・バルジャンがいらして、2年前より続投の福井晶一さん、吉原光夫さん、そして新たにヤン・ジュンモさんが出演されています。それぞれのバルジャンの魅力は?

 ヤンさんはとても人情味のある心の大きな方で、声も素晴らしいです。福井さんはとても繊細で優しいところが魅力のバルジャンですね。光夫さんは今回もジャベールとの二役で、バルジャンを演じる日とジャベールの日とではまた表情も全然違うんです。みなさんそれぞれすごい声量で、素晴らしい歌を歌われる役者さんたちなので、ぜひ3人のジャン・バルジャンさんを観てほしいです!

 

――ファンテーヌはある意味重い役でもありますが、日常で役を引きずるようなことはありますか?

 自分が子どもを産むまでは結構引きずることもあったんですけど、今はそんなことを言ってられなくて、玄関のドアを開けたら全然違う現実が待っているので(笑)。その切り替えは頑張らなくてもできるようになりました。“レ・ミゼ”の歌は9歳の息子にとっては悲しく聴こえるようで、家ではNGらしいです(笑)。でも作品は観てくれています。

 

――2年前の舞台にも、小学生の方が結構観に来ていました。

 あの時はちょうど映画『レ・ミゼラブル』のヒットもあり、ミュージカル・ファンだけでなく初めてこの作品を知った方など幅広い層のお客様が来て下さって。とても温かな拍手を頂けて嬉しかったです。

 

――知念さんも映画をご覧になられていかがでしたか?

 『Suddenly』という舞台にはないナンバーをヒュー・ジャックマンが歌うんですが、それがとっても素敵でした! あ、またすぐバルジャンの話になってしまいますね(笑)。アン・ハサウェイの歌ももちろん素晴らしかったです! アカデミー賞を受賞された時は、同じファンテーヌ役の和音(美桜)さんたちと、「賞をとったね!」と喜び合いました。

 

――和音さんは元宝塚娘役、里アンナさんは島唄で数々の賞を受賞されたという経歴の方で、バックグラウンドも違うファンテーヌの3人ですが、それぞれの違いも見えたりしますか?

 そうですね。演出家の意図に添って3人とも役の解釈は同じ方向なんですが、どう表現するかは三者三様で、同じようにしようと思ってもできない。それがトリプルキャストの良さなのかなと思います。私たち本当に仲がいいんですよ! 変更点とかをお互い共有し合いながら、あーしようこうしようと一緒に役を作っている、とてもいい関係で幸せです。

 

――改めて『レ・ミゼラブル』の魅力はどこにあると思われますか?

 この作品の大きなメッセージって、“人はやり直せるよ”ということだと思うんです。誰でも間違えるし、失敗するし愚かなんだけど、悔い改めてもう一度やり直せる、というメッセージに毎回励まされます。ジャン・バルジャンはミリエル司教に救われて、命を買われて、新たな人生を歩み出す。その志高い生き方に憧れます。今回彼が何によって変わったのか、というあたりが分かりやすくなっていますし、天国に昇る様子も分かりやすくなっていると思います。ぜひ楽しみにしていて下さい。

ちねん りな●1981年2月9日生まれ、沖縄県出身。’96年に歌手デビュー、翌年第39回日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。女優としても活動を始め、数々の舞台にも出演。’04年に『ミス・サイゴン』のキム役を演じ、’14年まで同役を演じ続けている。他にも『DRAMATICA/ROMANTICA』シリーズ、『ダンス オブ ヴァンパイア』など。『レ・ミゼラブル』には’05年にコゼット役で初出演、’07年からはエポニーヌ役、’11年からはファンテーヌ役と、作品と共に10年の軌跡を歩んできた。

 

ミュージカル『レ・ミゼラブル』
作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク
原作:ヴィクトル・ユゴー
作詞:ハーバート・クレッツマー
オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
演出:ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル

◆東京公演 2015年4月17日(金)~6月1日(月) 帝国劇場
◆名古屋公演 2015年6月10日(水)~6月30日(火) 中日劇場
◆博多公演 2015年7月8日(水)~8月1日(土) 博多座
◆大阪公演 2015年8月8日(土)~8月29日(日) 梅田芸術劇場メインホール
◆富山公演 2015年9月5日(土)~9月7日(月) オーバード・ホール
◆静岡公演 2015年9月17日(木)~9月24日(木) 静岡市清水文化会館マリナート

 

 

 


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