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SPECIAL! スタジオライフ『GREAT EXPECTACIONS-大いなる遺産-』開幕! part.1
2015年に創立30周年を迎える男優劇団スタジオライフ。記念公演の第一弾となる『GREAT EXPECTACIONS-大いなる遺産-』が開幕。ロンドンで2013年に上演されたジョー・クリフォード版を日本初上演することでも注目される。
(写真/Yukari Watanabe 文/大原 薫)
INTERVIEW & SPECIAL 2015 1/1 UPDATE
ジョー・クリフォードさんが戯曲化した『大いなる遺産』の初演は1988年。若き日のアラン・カミング(映画『チョコレートドーナツ』ミュージカル『キャバレー』など)が主役のピップを演じたという。そこからワークショップなどでブラッシュアップを重ね、2013年にロンドン・ウェストエンドで上演。「PURE THEATER」(純粋なる劇場)などの高い評価を得た。
倉田淳さん上演台本・演出、阿部のぞみさん翻訳のスタジオライフ版では、ウェストエンド版での「ゴシックホラー調」と評された演出を一新。人と人との関わり合いの中でいかに人は変わり、人生の「希望」を見出していくかを繊細に、丁寧に描き出していく。
舞台は時を止めてしまった老嬢、ミス・ハヴィシャムの朽ちた屋敷の一室(美術:乗峯雅寛さん)。全ての物語はそこで繰り広げられる。
貧しい鍛冶屋の孤児、ピップが墓地で脱獄囚を助けることから人生が大きく変わっていくストーリー。ピップはミス・ハヴィシャムの家に招かれ、養女のエステラの遊び相手となる。美しいエステラに恋心を抱くが彼女に「取るに足らない」と言われ、ショックを受ける。やがて成長したピップはある依頼人からの伝達で巨額の遺産相続を受けた。「紳士」になるためにロンドンに移り住んだピップは……。
原作小説は長編だが、登場人物を絞り込んで休憩なしの2時間20分に圧縮しスピーディに物語は展開する。「ピップに遺産を送ったのは誰か?」「ハヴィシャムはどうして時を止めてしまったのか…?」などサスペンスフルな筋立てで、ストーリー展開への興味が次々とかきたてられる。ジョー・クリフォードさんのストーリーテリング力も倉田さんの演出により鮮やかに浮かび上がった。
特徴的なのは大人となったピップが少年~青年時代のピップの成長を回顧するという形を取っていること。舞台上には常に大人のピップが存在し、かつての自分であるピップの行動を見守っている。ときには純粋に、ときには傲慢になってしまうピップの心の旅路を見つめる「大人のピップ」の視線は、「人はどう生きるべきなのか」と考え続けた原作者ディケンズ自身とも重なって感じられる。
ピップが成長し変化を重ねていくのも、多くの人たちとの関わりから。スタジオライフの男優陣が個性豊かなキャラクターを見せることで、人間心理の機微が浮き彫りになった。
S(Silkhat)チームの舞台写真(画像クリックで拡大)
(part.2へ続く)
【公演データ】
スタジオライフ公演
『GREAT EXPECTATIONS0-大いなる遺産-』
2014年12月18日~2015年1月12日 シアターサンモール
原作:チャールズ・ディケンズ
脚本:ジョー・クリフォード
上演台本・演出:倉田淳
翻訳:阿部のぞみ
ダブルキャストのS(Silkhat)チームとB(Bowlerhata)チームでの上演(※公演日程後半には、S、Bチームに加えてC I~IVのクロッシングキャストでの公演)
詳細は以下の公式サイトをご確認ください。
スタジオライフ公演『大いなる遺産』公式サイト