インタビュー & 特集
水夏希さんが新しい魅力を見せる! 『Attractive Concert 2014 蜃気楼~Mirage』開幕
7月11、12日、赤坂ACTシアターで行われる水夏希さんのコンサート。宝塚時代からご縁が深い荻田浩一さんを演出に迎え、歌にダンスに、4部構成で水さんの魅力を余すところなく披露する。コンサートについて、そして宝塚退団後4年となる今の思いを聞いた。
(写真/熊谷仁男 取材・文/大原 薫)
INTERVIEW & SPECIAL 2014 7/10 UPDATE
――タイトルにAttractive(=「人を惹きつける、魅力的な」という意味)とついていますが……?
自分でわざわざAttractiveっていっちゃう(笑)。自分の持っている魅力を最大限に出せるショーだということをアピールしようかなと思って。
――水さんの魅力を引き出せるのは宝塚時代からよく知る荻田浩一さん(演出)だから、というのもありますよね。
そう、荻田先生は宝塚時代から一緒にお仕事をさせていただいていて、自分と共通点を感じるんです。私は白黒がはっきりしたものというより、言葉で表現できないようなあいまいなものが好きなんですよね。宝塚で『ソロモンの指輪』という作品でご一緒したんですが、そのときに“どんな話なんだろう”と考えさせるのでなく、その時間を一緒に過ごしてニュアンスを感じ取っていただくことがショーでは大事だと思う」とおっしゃっていて、そのとおりだなと思ったんです。今回のタイトルの『蜃気楼~Mirage』も現実のものか幻かわからないというイメージからつけました。
――それでは、今回のコンサートはかなり幻想的なショーに……?
いえ、そんなに摩訶不思議なものではなくて(笑)どちらかというとわかりやすいイメージのものになると思いますね。
――具体的にはどんな内容になるのでしょうか。
全体は4部構成。最初のコーナーは16世紀のフランスに実在した、女装して宮廷に入り込んだ男性スパイをモチーフとして、歌とダンスでストーリーを綴ります。そこから、007シリーズのような現代のスパイ、さらにはチャイナのマタハリをイメージした場面。そして、「ザ・ミュージカル」のメドレーに続きます。
――「女装の男性スパイ」なんて人物が実際にいたんですか!
そう、荻田先生はあらゆることに詳しくてびっくりしますよね。情報が細かくて「一人インターネットか」と思うくらい(笑)。こういうちょっとデコラティブな時代がかった世界観も私は大好きなので、「さすがだな」と思いましたね。
――荻田さんは書かれる歌詞も雰囲気があって素敵ですよね。
『ソロモンの指輪』のときも「弾丸が飛び交う夜 硝煙が朝を隠す」という歌詞があって、「ええっ、(ショーの歌詞で)硝煙!?」と思って。言葉の世界が独特ですよね。まさに荻田ワールドというか。でも、荻田先生の世界は摩訶不思議なだけじゃない、オーソドックスなものも入っているんですよ。私のちょっとマニアックな選択と、「ザ・宝塚」の男役的な部分の両方を知って下さっているので、このコンサートでどんな世界を紡ぎ出すかが楽しみなんです。
――昨年のコンサートは水さんが構成・演出を担当されましたが、今回は作品を作るという面で関わっているところはありますか?
いえ、今回は荻田さんにお任せしています。以前、宝塚時代に私のディナーショーを演出していただいたときに、「ここの歌詞を変更したいんだけど」と相談したことがあったんです。そしたら「これはあなたのディナーショーだから歌詞を変えてもいいけど、でも僕はこの歌詞でいきたいと思う。このこだわりをなくしてしまったら、あとは何でもよくなってしまうから」とおっしゃったんですね。この言葉がとても心に残って、宝塚にいる間はずっと意識していたんです。小さいことでもこだわりを持って、それに「イエス」「ノー」という判断を自分がどう下すかが大事だなと思って。
――このコンサートの会場、赤坂ACTシアターといえば水さん主演の『カラマーゾフの兄弟』が上演された劇場でもありますよね。
そうそう、懐かしい! 東京のど真ん中にある劇場でソロコンサートということで、私を応援してくださっている方たちはもちろん、私をよく知らなくても演劇に興味がある方にも楽しんでいただけると思います。
――そういう方たちにアピールするとしたら?
なんていうんだろうな……「まるでディズニーランド」というと大げさですけど、ディズニーの世界観の中で一日遊ぶように、水夏希という世界観の中にビッグサンダー・マウンテンがあり、ショーを見せる小屋があり、ピーターパンがあり……といろんな楽しみがある90分にしたいなと思っています。理屈に囚われないで、それぞれのシーンを楽しんでいただけると思いますね。
――今回は東山義久さん、小松亮太さん、シルビア・グラブさんという実力派のゲストの方たちとのコラボもありますね。
皆さん確立された個性をお持ちなので、この機会に共演させていただいてとても刺激が受けられると思います。私もとても楽しみです!
――今年は宝塚歌劇100周年。今、宝塚に対する思いは?
退団後は「宝塚をやめたんだから、違う自分にならなきゃ」といろいろなところに力が入っていた気がするんです。でも、女性であることを勉強したりいろいろがむしゃらにやってきた結果、今は宝塚とよい距離が取れるようになったと思います。力を抜いた感覚で宝塚と向かい合えているかなと思いますね。
――記念公演の『セレブレーション100! 宝塚』ではスペシャルゲストとして登場。『エリザベート』のトートの「最後のダンス」を歌われましたね。客席も一気にヒートアップしたと伺いました。
宝塚退団後は『エリザベート』の曲は殆ど歌ってなかったんですよ。自分にとってもトップお披露目公演の記念すべき作品だったので、この機会に歌えて嬉しかったです。でも、『マリポーサの花』と続けて歌うのは世界観がまったく違うので、難しかったかな。『セレブレーション100』はイントロを聞いただけで「ああ、あのときの!」と盛り上がる曲がたくさんあって。テンションが上がったり、切なくなったり……心を揺さぶられる宝塚の楽曲は本当に素晴らしいなと改めて思いました。
――水さんはこのコンサートの後は『アルジェンタンゴ』、宝塚OGバージョンの『シカゴ』のヴェルマ役と続きますね。
タンゴはバレエやシアターダンスとはまったく違うダンス。今レッスンを受けていますが、難しいですね。でも、元宝塚である私たちとプロのダンサーである皆さんとコラボして見せるタンゴをお届けできたらいいなと思います。『シカゴ』は宝塚100周年のOG公演の締めくくりになると思います。これから年末に向かって険しい山に連続して上らないといけない。今年が人生の山場じゃないかと思いますね(笑)。
――『シカゴ』では強くも可愛らしい女性たちが多数出てくるミュージカルですね。
この間コムさん(朝海ひかるさん)と対談したとき「(『DANCIN’ CRAZY 2』で『シカゴ』の抜粋版を演じたとき)もっと自分をさらけ出してくれと言われた」と言っていたんですね。今、『シカゴ』の振り付けを自主的に稽古しているのですが、ナンバーが本当にしんどいんですよ。だから初めは作って演じていたとしても、ナンバーがしんどすぎて、だんだん作っていられなくなってしまうのかなと思うんです。それがヴェルマのキャラクターにうまく重なればいいと思っていますね。
――これらの「険しい山」に登頂したあと、水さんには何が待っているでしょう…?
そうですね、身体が続くかぎり踊りを続けていきたいなと思いますし、最近はショーの公演が続いたのでお芝居もまたチャレンジしたいですね。
宝塚にいたときはお客様が喜んでくださることをやることが自分の生きがいだったし、喜んでいただけるものが何であるかもわかっていた。それをお客様にお届けして、喜んでいただくことで自分も頑張れていたんです。でも、宝塚を退団して外の世界に出ると、たとえば「イケメン俳優を見に来た」「ミュージカルを見に来た」「可愛いアイドルを」など、お客様が求めていることが多彩で、お客様のニーズの全部には応えられないんです。だから、自分が何を提示したらいいかわからなくて、辛いなと思った時期もありました。でも、私が迷っていた時期にもファンの方たちが「水さんが楽しい、いいと思うことをやってくれたらいいんです」と絶対的な信頼で受け止めてくれていたんですよ。だから、「自分が心から楽しんでやることが大切」ということをファンの方たちに教えてもらった。作品を成功させるための苦労や努力をすることはもちろん、舞台に立つことを楽しんでいたい、生きがいとしていたいと、今強く思っていますね。
[プロフィール]
水夏希
みず・なつき
元宝塚歌劇団男役トップスター。2010年9月宝塚を退団。ドラマ・舞台『スミレ刑事の花咲く事件簿』『7DOORS~青ひげ公の城~』『屋根の上のヴァイオリン弾き』『SHOW-ismⅥ TATTOO 14』『Love Chase!!』など、ドラマ、舞台で活躍。2014年にはSHOW『Beyond the Door』で初めて、主演・構成・演出を務めた。8月に『Argentango アルジェンタンゴ~BAD GIRLS meets TANGO BOYS』、11月にはブロードウェイミュージカル『CHICAGO』宝塚歌劇100周年OGバージョンに出演する。
[公演情報]
NATSUKI MIZU Attractive Concert 2014『蜃気楼~mirage~』
7月11日(金)〜12日(土) 赤坂ACTシアター
演出:荻田浩一
出演:水夏希 / 小野田龍之介 / 佐藤洋介 / 桜木涼介 / 安田栄徳
スペシャルゲスト:
小松亮太(7月11日(金)18:30公演)
東山義久(7月12日(土)13:00公演)
シルビア・グラブ(7月12日(土)17:30公演)
公式サイト●http://t-onkyo.co.jp/?ticket=%E6%B0%B4-%E5%A4%8F%E5%B8%8C