インタビュー & 特集

SPECIAL! スタジオライフ『トーマの心臓』出演劇団員オーディション開催!

男優だけの劇団スタジオライフが、劇団の代表作『トーマの心臓』出演者を幅広く募集するため、第13期新人マスコミ公開オーディションを開催。 スタジオライフに新たな風を吹かせる新人が登場する……!? オーディションの模様を徹底レポート。
(取材・文/大原 薫)

INTERVIEW & SPECIAL 2014 2/17 UPDATE

萩尾望都先生の不朽の名作『トーマの心臓』。ドイツのギムナジウムに通う少年たちの透明な時を描いた作品は日本の漫画史上の傑作の一つとして長年多くの読者から愛されています。本年2014年は原作の連載開始(1974年)から40年という記念すべき年にあたります。

スタジオライフにとっても代表作であり、非常に大事な位置づけとなる作品。今回のオーディションは近々予定されているという『トーマの心臓』公演に出演する劇団員を募集するというものです。

今回が第13回目となるオーディション。ちなみに第1回は『トーマの心臓』初演への出演劇団員を募集するというものでした。そのとき入団したのが山本芳樹さん、及川健さんなど現在も劇団の中核を担うメンバーです。
『トーマの心臓』の上演を繰り返すたびに新たな出演者が投入され、劇団の新陳代謝も図られているのです。

これまでベールに包まれていたオーディションが初めてマスコミ公開に。スタジオライフの独特の世界観を作る源が初めて明かされるとあって、注目が集まりました。オーディション会場に集まったのは、多数の応募の中から書類審査で選出された13名。いずれも「18歳~25歳までの容姿端麗で健康な男子」という基準を満たしている方ばかりです。

定刻になり、藤原啓児さんから「楽しんでやってください」と声がかかって、まずはウォーミングアップからスタート。ウォーミングアップを担当するのは、前回公演『LILIES』で主演を務めた仲原裕之さん。仲原さんが
「昨日(のオーディションで)、筋肉痛になった人~?」
と声をかけると、手を上げる参加者が大半(笑)。ウォーミングアップといっても、単なるストレッチでなく、役者として動くための重要な基礎となるもの。
「伸びているところを意識して」「常に呼吸を忘れないで」
と的確な指導をしながら、ウォーミングアップを進めていきます。最後の腹筋は相当ハードな回数ですが、余裕の表情でこなす仲原さんがさすがです。

続いて、演劇の現場などでよく行われる『名前鬼ごっこ』というゲームで、参加者同士のコミュニケーションを深めていきます。前回公演『LILIES』で伯爵夫人役を演じた青木隆敏さんも参加。

ウォーミングアップ終了後、スタジオライフ代表の河内喜一朗さん、脚本・演出を担当する倉田淳さん、劇団員から藤原さん、石飛幸治さんらが一列に並んで座り、いよいよオーディションがスタート。

オーディションの様子

 

今回のオーディションで審査されるのは「演技」と「歌」。
「演技」では、出演者が3人一組となって、倉田さんのオリジナル脚本の一部分を演じます。
今回のオーディションで使われたのは『TAMAGOYAKI』。
「夢も希望もない生活を送るトキオ・カケル・アリスの三人が小学校時代にワープして、過去の自分たちに出会いレーゾンデートル(存在意義)を見つける」というストーリーで、倉田さんの作品作りの原点ともいえる作品です。
倉田さんのストーリー解説のあと、「立って状況を作っていきましょう」と指示。各グループごとに読み合わせをして、それぞれの芝居を作っていきます。

オーディションというと「1回演じて、その様子を審査」というイメージがありますが、スタジオライフの場合は違います。
1回演じた後で、倉田さんから演出が入り、もう一度演じて、さらに演出が入って……ということで、合計3回演じるのです。初めの時点での完成度を見るのでなく、どれだけ演出の言葉を受け止めて自分を変化させていくことができるのかを見るのが、スタジオライフのオーディションなのでしょう。
相手のことを聞かないで自分の台詞を言うことだけに一生懸命になっていると
「もっと人が言っていることを聞いて。ちゃんと人を見て」
と指摘が入ります。
芝居中、まったく立ち位置が変わらないでいると
「人が働きかけるから、動くの。動くのには意味があるのよ。自分が動きたくなるところを探してみて」
とのアドバイスが。
倉田さんの演出が入ることで、2回目の演技は前とは見違えるほどのものに変化します。
参加者の演技が深まるにつれて
「もっとビビッドに」
「それじゃ、ただ解説しているだけの人になってる」
「言葉とエネルギーで伝えて」
と、倉田さんの指導にも熱がこもります。

そして、なかなか要領がつかめない参加者に、河内さんが実際に立ちあがって演技を見せる場面も。
「台詞と台詞の中で生まれる空気を大事にして」
と、参加者に身を持って教えます。
また、人数調整のため、青木さん、仲原さんが参加して演じるグループもありました。

続いては「歌」の審査。
歌の審査をするのは、『レ・ミゼラブル』『ジキル&ハイド』など大作ミュージカルで活躍し、確かな演技力と歌唱力に定評がある石飛幸治さん。
参加者の希望曲を歌う形で、歌われる曲はポップスからミュージカル曲、オリジナル曲など多彩。
こちらも1回だけ歌うのでなく、1回歌った後に石飛さんの指導が入って、2回目を歌います。
たとえば、ミュージカル『モーツァルト!』の曲なら、石飛さんから
「僕をコンスタンツェだと思って歌って!」
という指示が入ります。
「音が外れてもいいから、歌詞が届くように歌って」「今ここにいる人たちにもっと訴えかけて」
と、「役者としての歌」をどこまでも求めるのです。歌のオーディションも、石飛さんの言葉を受けてどうやって変化していくのか、という様子を見ているようでした。

こうして3時間余りの白熱のオーディションが終了。
最後に代表の河内さんから
「今の能力を見るのでなく、『劇団の中でこういうキャラがほしい』ということで審査させていただく。もし今回ご縁がなくても、演劇界は狭いから(笑)、またどこかでお会いすることがあると思う。ぜひ、そのときはよろしくお願いします」
と心温まるご挨拶がありました。

今回のオーディションを通して、改めてスタジオライフで求められる演技の根底を成すものが見えてきました。それは「人と人がどうやって気持ちを受け渡すか」ということ。
人と人とのつながりにナイーブに心を動かしながら演じる芝居のあり方そのものが 「人間は孤独なもの。だからこそ、人は一人では生きていけない」
というスタジオライフの作品群、そして『トーマの心臓』に共通するテーマと重なるのです。

倉田さんの演出を受けて、徐々に心を開放させていく参加者たち。この中から『トーマの心臓』出演者、そして明日のスタジオライフを担う人材は現れるのか……!? 今後の彼らの活躍に期待したいと思います。


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