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白井晃 演出『オセロ』公演レポ
シェイクスピアの四代悲劇の一つ『オセロ』が、白井晃さん演出、仲村トオルさん主演で、世田谷パブリックシアターにて上演中です。その公演レポートをお届けします。 (撮影/細野晋司)
INTERVIEW & SPECIAL 2013 6/20 UPDATE
ムーア人(黒人)でありながら成功を収めた将軍・オセロ(仲村トオル)は、部下のイアーゴ(赤堀雅秋)の計略で、妻・デズデモーナ(山田優)と副官・キャシオ(加藤和樹)の関係を疑い、悲劇の淵へ転がり落ちていく——。白井版『オセロ』はこの有名な作品を、『オセロ』を稽古中の劇場での出来事として描いています。
客席に設けられた演出家卓。舞台から降りてきたイアーゴは、演出家としてマイクを持って語りだします。呪いのように紡がれる言葉は、イアーゴのオセロに対する嫉妬であり、同時に演出家の主演俳優に対する嫉妬をにじませます。
舞台上手には楽屋を思わせる飾り気のない洗面台が並び、下手には、簡素なスチール椅子に腰を下ろして、出番を待つ役者たち。板の上に立っているのはオセロやデズデモーナであると同時に彼らを演じる役者でもあるのです。その演出は時に客席をも巻き込みます。観客は観客でありながら、劇に登場する市民の役を演じることに。
仲村トオルさん演じるオセロの、堂々たる将軍ぶりと、嫉妬と猜疑心に絡めとられた後半の姿の落差は見事。そしてデズデモーナ役・山田優さんのけなげな美しさと、思慮深いエミリアを演じる高田聖子さんの存在感。浅薄ながらも誠実なキャシオを凛々しくかわいらしく好演した加藤和樹さんと、憎々しくもどこか色気のあるイアーゴの悪役ぶりを魅せた赤堀雅秋さん。若手とベテランの俳優の対比が、二重構造の演出でさらに際立って見えました。
舞台『オセロ』は6月23日まで、東京・世田谷パブリックシアターにて上演中。愛知、兵庫、新潟で地方公演も行われます。
(取材・文/臼井祥子)
[公演情報]
『オセロ』
6月9日(日)~6月23日(日) 世田谷パブリックシアター
6月25日(火)・26日(水) アートピアホール(名古屋市青少年文化センター)
6月29日(土) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
7月3日(水) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
作:W.シェイクスピア
翻訳:福田恆存
構成・上演台本・演出:白井晃
出演:仲村トオル/山田優/赤堀雅秋/高田聖子/加藤和樹/水橋研二/有川マコト/近藤隼/谷村実紀/白井晃
公式サイト●http://setagaya-pt.jp/theater_info/2013/06/post_313.html