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INTERVIEW! 『11人いる!』『続・11人いる!—東の地平 西の永遠—』 萩尾望都さん
1月10日より、劇団スタジオライフの公演『11人いる!』『続・11人いる!—東の地平 西の永遠—』が上演されます。原作を描いた漫画家・萩尾望都先生に、お話をうかがいました。(撮影/笹井孝祐 取材・文 /臼井祥子)
INTERVIEW & SPECIAL 2013 1/8 UPDATE
『11人いる!』は宇宙大学入学試験の最終試験で、漂流する宇宙船内で過ごす11人の受験生たちが、数々のトラブルに直面し、時に諍いながら、友情と信頼を築いていく、傑作SF漫画。2011年2月に劇団スタジオライフにより初めて舞台化されました。
この舞台が、続編の『続・11人いる!—東の地平 西の永遠—』との連鎖公演という形で再演されます。こちらは、『11人いる!』のその後の物語。王様と四世、タダ、フロルを中心に、受験生たちそれぞれの未来を描きます。
●前回の舞台をご覧になってのご感想は?
とても面白かったです。もちろん自分が描いたものですから、ストーリーはわかっているんですけど、それだけに余計、役者の皆さんが観客にどのように提示していくのか楽しみにしていたので、見応えがありました。
●同じクリエイターとしての目線で、ということでしょうか?
私は舞台をやったことはないので、単純に観客として楽しめました。倉田(淳。演出家)さんのムードが好きなんですね。センスがよくて、非常にあったかいような流れがあって…。倉田さんは原作に忠実に作ってくださるんですが、『11人いる!』ではラストに倉田さんのいいアイデアが取り入れられていて、迫力があってとても感動しました。舞台のもつ“声の力”を感じましたね。
●先生が「未来へ」と描かれたラストシーンを増幅させるような演出だったと?
そうですね。それぞれの思いを持って未来へいくんだということを、長々と語るのではなく、それぞれが一言ずつ語って、旅立っていくんですよ。
●前回はSFの世界の広がりを、どう表現されるかということも楽しみでした。
スタジオライフの舞台そのものが変化のある世界です。男優さんが女性をやったりするでしょう? だから家庭的な身近な題材もいいけれど、もっと別世界のもののほうが構築しやすいのかなと思ったりもします。それに不思議なチームワークがあって、男優さんが女性役をやっても、なんというか、いさぎいいです。
●『11人いる!』の東京公演の後に、東日本大震災がありました。スタジオライフは大阪、名古屋公演をどうにか無事に上演できて、そのころ先生は原発事故をテーマにした『なのはな』を描いていらしたんですよね。
そうでした。「もう何もできない」と言いながら、『なのはな』を描いていましたね。
●そうやってライフの役者さんたちも、先生も、皆さんそれぞれの仕事をやっていらしたのだと思うのですが。
皆さんいろいろな方法で、3.11を受けられたんだと思います。その時すぐにじゃなくてもね。あの震災で、本当に世界観が変わりましたから…。「SFの役割は何か」ということを以前から薄々と考えていたんですけど、「SFとは、未来をシミュレーションするものなんだ」と思います。たとえば未来の世界を舞台に、科学の明るい発展だけじゃなくて、核戦争とか、大きな事故とか、そういうものが描かれた作品がたくさんある。もしこういうことが起きたら、もし世界がこういう方向を向いたら、どうなるのだろうというシミュレーション。そういう役割があるのだとあらためて思いました。
単に奇想天外な面白いことだけではなくて。やっぱり私たちは、今の世界が同じままずっと続いていくと信じることはできない。どこかで少しずつ変わっていくんですよね。その変わった先の未来からのメッセージという役目を負っているんじゃないかしら。
生物学でも天文でも物理の世界のおいても、最先端の研究はなかなかすぐには私たちの普通の生活に関わらないでしょう? でも、たとえばIPS細胞がメジャーになった世界があったらどうなるか、そういうことをSFが先取りして書いていくんじゃないかと思います。
●そのシミュレーションで、何か悪い変化を防げたり、いい変化が訪れたりすることも?
あると思います。冷戦時代、原爆水爆の実験がたくさん行われていたころ、SFには核戦争で世界が壊れてしまう話が多かった。それを読むと、小説の中のこととはいえ、あまりにもリアルで、こうなっちゃいけないと思える。人間には想像力があるから、それを働かせて、危険を回避するようになるべく頭を柔軟にして生きていきたいと思います。
●11人の受験生たちもそうやって未来へ向かうわけですよね。
そうですね。『続・11人いる!』は、『11人いる!』で各キャラクターの過去や出身惑星の話を考えている時に浮かんできたもので、悲しい未来もありますが……。
●今楽しみにしていること、期待していることがあれば、教えてください。
舞台を観にいった時に、観客のひとりとして楽しむこと、驚かせてもらうことを期待しています。
劇団スタジオライフ公演『11人いる!』は、1月10日より、『続・11人いる!—東の地平 西の永遠—』は2月25日より、上演されます。
製作発表記者会見の様子は、以下からどうぞ。
http://omoshii.com/news/2012/11/5511/
[プロフィール]
はぎお・もと
『ルルとミミ』でデビュー。『11人いる!』『ポーの一族』で第21回小学館漫画賞受賞。代表作は『トーマの心臓』『百億の昼と千億の夜』『残酷な神が支配する』など多数。2011年6月に発表した福島第1原発事故後の福島を描いた『なのはな』と、原発をテーマにした『プルート夫人』『雨の夜』『サロメ20××』のSF3部作は、多方面で話題を呼んだ。
[公演情報]
『11人いる!』
2013年1月10日〜20日 紀伊國屋ホール
原作:萩尾望都 『11人いる!』(小学館文庫刊)
脚本・演出:倉田淳
出演:松本慎也 荒木健太朗 関戸博一 大沼亮吉 仲原裕之 内藤大希 曽世海司 及川健 他
『続・11人いる!—東の地平 西の永遠—』
2013年2月25日〜3月17日 紀伊國屋ホール
原作:萩尾望都 『11人いる!』(小学館文庫刊)
脚本・演出:倉田淳
出演:松本慎也 山本芳樹 内藤大希 及川健 堀川剛史 曽世海司 仲原裕之 藤森陽太/笠原浩夫 他
※名古屋、かめあり、大阪公演あり
公式サイト:http://www.studio-life.com/stage/11nin_2013/
©萩尾望都/小学館