インタビュー & 特集
INTERVIEW! 舞台『詭弁・ 走れメロス』森見登美彦さん×松村武さん対談 part2
青春音楽活劇『詭弁・ 走れメロス』の原作者森見登美彦さんと、脚本・演出の松村武さん。本公演もいよいよ始まりました! part2では演出の工夫やキャスティングについて語っていただきました。。(文/山上裕子、写真/齋藤ジン)
INTERVIEW & SPECIAL 2013 1/7 UPDATE
ーー森見ワールドの舞台化にあたって、どんな演出を心がけていますか?
松村 演劇って、〝この役はこういうふうに生きてて、それがこんな言葉に繋がってるんだ〟って心情を掘り下げてやるのが王道でしょうけど、今回は〝とにかく速く言え!〟とか(笑)、若いときにやってたような演出もしてるんです。たとえば「大学自治! 大学自治!」と叫んでますけど、
森見 特に背景はない
松村 でもそれが面白いじゃないですか。そういう感じを、武田くん、芹名役の山下翔央くん、須磨さん役の新垣里沙ちゃんの若い3人は、苦闘しながらもわかってくれてる。一方ベテランの小劇場チームにとっては、普段自分たちもやってるいい加減さだから得意であって。それから稽古場で森見先生が「この作品、太宰も背負ってますから」って仰って下さったんですけど、確かにそれもあるなと僕も思うんです。スピード感をもって言葉がバーッと舞ってるような中、文体の面白さが生身の言葉になった瞬間、キレイに聞こえる。そこで何か、バカバカしさの向こうにあるものが見えてくれば、作品の魅力がちょっと出るかなと。
ーーこの舞台を太宰が観たら?
森見 僕の場合はまずもし太宰がこの 小説を読んだら?ってのがありますからね。大きな声では言えませんが、個人的には喜んでもらえるんじゃないかな。設定なんかを置き換えて〝ああ、こう書いたか〟っていうのは、太宰自身も好きでよくやってることだし、喜んでくれるのではないかと思いたいです。
松村 相当な空論ですよね(笑)。全く想像つかないですけど、普通に楽しむんじゃないですか? ただ僕は、『走れメロス』を説教くさいものだと思っていて、森見先生が言うような筆が進んでしょうがない感じに力点を置いてを読んだのは、今回が初めてだったんです。そう思って太宰の短編なんかをいろいろ読んでみると、なるほどなと感じたし、とすると、この舞台は好きではないかな? と思ったりもします。
ーー原作者として舞台やアニメをご覧になるのは、どんな気持ち?
森見 最初は恥ずかしいです。特に舞台は、自分の書いた文章を目の前で読み上げられるので、慣れるまではかなり恥ずかしい。〝ああ、そこ、もうちょっとああいうふうに書いとけばよかった〟〝なんであそこで<生湯葉>にしたんやろ〟と、今更校正してるみたいな(笑)。
ーー自分の書いたキャラクターが二次元、三次元になることについては?
森見 僕の場合は書くときに文章のことしか考えてなくて、キャラクターを厳密にイメージして書くことはほとんどないんです。お芝居に されたり、アニメにされることにあんまり違和感は感じないですね。むしろ、僕がいい加減に書いてたものをきちっと詰めて現実化されるわけじゃないですか。そこらへんは非常に楽しみです。
ーー本番に向けて、森見先生が期待することは?
森見 このまま突き進んで、本番を最後まで見たら、アホなのに泣くぐらいなところまで持っていっていただけると素晴らしいなと思います。
ーーこれを受けて、松村さんの意気込みをお聞かせください。
松村 学年は違いますが、先生とは出身校が同じで、作品を読んでいると高校のノリを感じるんです。キャラクターが同級生に当てはまって、アニメ化された『四畳半神話大系 』の小津とか、〝あいつが言いそうなことやな〟と思う。その面白さを舞台版でも出したい。それに僕、先生の作品の魅力はさわやかさだと思うんです。ドロドロの汗をかききった後の、グッダグダのさわやかさみたいなものが出せればいいなと。先生からの「アホやなぁ」という褒め言葉を励みに、キャストのみんなと頑張って作り上げていきたいです。
アトリエ・ダンカンプロデュース 青春音楽活劇『詭弁・走れメロス』
原作:森見登美彦
脚本・演出:松村武
出演:武田航平、山下翔央、新垣里沙、市川しんぺー 他
2013年1月4日(金)~17日(木)銀座博品館劇場(プレビュー公演、大阪公演あり)
http://www.duncan.co.jp/web/stage/melos/