インタビュー & 特集

SPECIAL! 新演出版『RENT』舞台レポート

若者の今が息づくミュージカル『RENT』。現在、シアタークリエにて、オリジナル演出家であるマイケル・グライフ氏による新演出版が日本で初上演されています。この作品で賀来賢人さんがミュージカル初主演。オフ・ブロードウェイでの新演出版をいち早く観劇した筆者が、初日を控えて公開されたゲネプロをレポート!(取材・文/大原薫、写真提供/東宝演劇部)

INTERVIEW & SPECIAL 2012 11/14 UPDATE

 

NO DAY BUT TODAY

ニューヨークのイーストビレッジに住む、家賃(RENT)も払えない若者たちの姿を生き生きと描き出して共感を呼ぶミュージカルの傑作『RENT』。
舞台を彩る楽曲は、いかにもミュージカル調の曲ではなく「普段、ラジオから聞こえてくるような」カッコいい曲ばかり。同性愛やマイノリティ、エイズ(HIV)というテーマを取り上げて、従来のミュージカルとは一線を画する作品です。

脚本・作詞・音楽と『RENT』を生み出したのが、ジョナサン・ラーソン氏。1996年、プレビュー公演の前日にラーソン氏は胸部大動脈瘤破裂によって急逝しましたが、彼の遺志を継いで行われた公演は評判を呼び、ついにはブロードウェイ上演へ。トニー賞やピューリッツァー賞などを受賞し、2008年まで続いた公演は上演回数5040回に及びました。

今回、上演されているのは、2011年にニューヨークで開幕したオフ・ブロードウェイ版。オリジナル『RENT』の演出家であるマイケル・グライフ氏がオフ・ブロードウェイ用に新たに演出したものを日本でも上演するところが、今回のシアタークリエでの公演の特色です。オフ・ブロードウェイでの公演は2012年9月までだったため、オフ・ブロードウェイ版の衣裳や小道具がそのまま日本に運ばれているところにも注目。その他、舞台装置や振り付けもオフ・ブロードウェイ版と同一です。さらに、日本版リステージを担当するのはアンディ・セニョールJr.氏。ブロードウェイでの『RENT』に出演し、2009年『RENT THE BROADWAY TOUR』来日公演で日本のRENT HEADS(RENT ファン)もおなじみです。そして、振付はブロードウェイ版とオフ・ブロードウェイ新演出版『RENT』に出演したマーカス・ポール・ジェームズ氏が担当。実際に『RENT』の舞台に生きていた人たちだからこそ伝えられる息吹を出演者たちに余すことなく吹きこみました。

初日に先だって行われたゲネプロ公演は、本番さながらの熱さが伝わる舞台。
まず劇場に入ると目を惹くのが、オフ・ブロードウェイ版と同様に2階建てに組まれた装置。ブロードウェイ版の装置とはかなり印象が違いますが、『NEXT TO NORMAL』などで立体的な空間の使い方が特徴のマイケル・グライフ氏の演出らしく、装置を効果的に使用。途中ではその装置をぐるぐる回して疾走感を出すなど、スピード感のある演出が目を惹きました。
また、モーリーンのライブの場面などでは映像を使って、より現代的な表現を採用しています。

新演出版といっても楽曲や歌う順番などには変更はなし(ただし、『Christmas Bells』の曲は若干短く編曲されています)。『RENT』の本質は変えずに今の観客により受け入れやすい形にしようとしたのが、今回の新演出版の特徴です。

新演出版が作り出す世界を、新たに『RENT』に触れたキャストたちが新鮮な感覚でとらえたのが、今回のシアタークリエでのステージです。『RENT』からもらった感動を各キャストがそのままストレートに、エネルギッシュに舞台にぶつけています。
激しいテンションで見せる冒頭の曲『Rent』、ボヘミアンに生きる若者たちの自由さが存分に伝わる『La Vie Boheme』、そして2幕最初の『Seasons of Love』(現在、コーヒーのCM曲として、皆さんもよく耳にしているはず)に思いを込めて……と、表情を変えながら、『RENT』の世界を様々に描き出します。

ゲネプロのため、ダブルキャストで出演していないキャストたち(ロジャー役の中村倫也さん、ミミ役の石田ニコルさん、エンジェル役の田中ロウマさん、モーリーン役のソニンさんなど)が客席から観劇していましたが、舞台に合わせて歓声や手拍子が巻き起こって、客席からでもさながら一緒に舞台に出ているかのよう(?)。全キャストが非常に結束しているのが、ゲネプロの様子からも伺えました。

映像作家のマーク役を演じた賀来賢人さんは、今回がミュージカル初主演。マークの持ち前の明るさとパワー、一方で「自分は傍観者なのか」と悩む繊細さの両面を表現した好演でした。特に2幕、エンジェルが去った後の場面では感極まって涙を流す姿も。その後のソロ『Halloween』では、マークの複雑な心情を伝える歌唱がとても感動的でした。そして、『What You Own』の曲に大きなドラマのうねりを見せます。一つ一つの場面で誠実に役柄に向かい合っているのが伝わる、賀来さんのマークでした。

ロックミュージシャンのロジャー役を演じたジュリアンさん。引きこもっていたロジャーがミミと出会うことによって変わっていく様子を繊細に表現。特に2幕目ではさらに感情が乗り、『Without You』の曲にロジャーの心情がこもっていました。Jenniferさんは今回で3度目のミミ役。『Out Tonight』の大胆なセクシーさが見もの。ドラッグ・クイーンのエンジェル役、ヨウスケ・クロフォードさん。ブロードウェイ版と最も衣裳などが変わっているのがエンジェルで、従来よりも男性的なイメージのエンジェルに。『Today 4 U』の迫力あるパフォーマンスと、『I’ll Cover You』のまさに天使(エンジェル)の愛らしさが印象的。コリンズ役のTAKE(Scoop On Somebody)さんはこれが初舞台。深みのある歌声で舞台全体をあたたかく包み込み、『I’ll Cover You(Reprise)』の愛情あふれる歌声が今も耳に残ります。

作者ジョナサン・ラーソン氏が作った世界は、たとえ演出が変わっても決して色あせることがないことを実感します。
パワーが存分に伝わる『RENT』。そのエネルギーをぜひ劇場で共有していただきたいと思います。
そして……

Thank you, Jonathan Larson!


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