インタビュー & 特集

INTERVIEW!『緋色の研究』矢崎広さん×村井良大さん part.2

925日から、天王洲 銀河劇場で、朗読劇『緋色の研究』が上演中です。この舞台で共演する矢崎広さんと村井良大さんに、公演に先立つ9月中旬にお話をうかがいました。

(撮影/熊谷仁男 文/臼井祥子)

INTERVIEW & SPECIAL 2012 9/26 UPDATE

『緋色の研究』は、コナン・ドイルの代表作「シャーロック・ホームズ」シリーズの第一作にあたる、長編ミステリー。この有名な小説が朗読劇として舞台化されます。舞台に登場するのは、ホームズとワトソンのふたりのみ。出演者は日替わりで、総勢20人の俳優が毎回2人ずつ登場し、一つの物語を読み上げます。

この舞台に出演する矢崎広さんと村井良大さんに、対談していただきました。

●おふたりとも、今年も多くの舞台に出演していますが、お互いの舞台はご覧になっていますか。

矢崎 村井くんは『マクベス』を観にきてくれました。

村井 セットも何もないセンターステージでやるのは難しいだろうなと思っていたんですよ。シェイクスピアはもともとそういう舞台だったそうですが、今はセットがドーンと置いてあって状況を説明してくれることが多いので。でも板垣さんは、想像力で戦わせる舞台にしていたから、役者は大変だろうなと。

矢崎 大変でした。センターステージっていろんなところから観られるからしんどいし。

村井 そこに存在しているだけで大丈夫といえば大丈夫なんですけどね。

矢崎 それが難しい(笑)。

村井 うん。一番難しい。でもすごく稽古をやったんだろうなってことが伝わってきましたよ。そうじゃないと舞台は絶対面白くならない。ラストシーンの盛り上がりとかも、矢崎くんすごく頑張ってて、ああ、楽しそうだなって思いました。

矢崎 ありがとうございます。

●村井さんから見て、矢崎さんはどんな役者さんですか?

村井 独自の世界を持っていて、解釈が面白いです。あ、そっちの方向に行くんだってハッとさせられることがよくあります。意外なんだけど、安心してついていけるというか。全然大丈夫だと思える、安心感のある役者さんです。

●矢崎さんは、最近観た村井さんの舞台はなんですか?

矢崎 『すうねるところ』はまだ観ていないので、最近だと…『We Love 兄さん』ですね。村井くんはシークレットキャストだったので、ゲスト出演みたいな感じなのかなと思ったら、ガッツリ出てました。

村井 そうですね。ガッツリ出ました。

矢崎 村井くんとは『大江戸鍋祭』で共演しているし、『戦国鍋TV』で一緒に「七本槍」(番組内の音楽ユニット)をやったりしたんですが、まだどういう人間でどんなふうに役作りをしているかとかは研究中なんですよ。僕とはアプローチが違うと感じているんですが、それじゃどこから村井くんのお芝居が生まれてきているのか、まだわからない。興味深いです。

村井 そうですか?

矢崎 普段の村井くんはあんまり自分を出さないというか、思ってることを言わないというか。

村井 出さないですね。

矢崎 でも中からいろいろなものが出てくるから、とても魅力的だし、興味深くて。僕はこの謎を解きたいと思っているんです。シャーロック・ホームズみたいに。

村井 おお、つながったね(笑)。

矢崎 『大江戸鍋祭』の時、僕は「リーダー」で村井くんは「殿」だったんですよね。それがまさに僕らそのもので。

村井 うん。わかる。矢崎くんは周りをめっちゃ気にして、みんなを引っ張ろうとしてたよね。

矢崎 そうなんだよ。そういうところをね、『マクベス』の時に、板垣さんに「笛を吹かんでいいよ」って言われた。

村井 笛?

矢崎 わかります?

村井 「レディ、ゴ—!」みたいに?

矢崎 そう。僕はつい笛を吹いちゃう。でも「お前が全部背負わないでいいんだよ」って。僕の自信のなさの表れだと思うので、そういうところを直していこうと思っているんです。

● 村井さんは、笛を吹かずに殿としておおらかに構えているタイプ?

矢崎 あっけらかんとしているというか、リーダーシップがあってついていきたくなるタイプなんだけど、あまり意識していないというか。

村井 ほんと、なんにも考えてないんで。特に『大江戸鍋祭』みたいなコメディだと、「殿」って呼んでれば「殿」になるから、自分がリーダーシップを示さなきゃみたいなことは全然考えなかったですね。

矢崎 でもみんなを誘って親睦会とか開いてくれたよね。実は周りをよく見てるし、下の子たちにも「村井さん村井さん」って慕われてる。僕みたいに、ハジッコで体育座りをしているタイプじゃなくて。

村井 いやいやいや(笑)。矢崎くんはどっちかっていうと年齢が上の人のところに行くよね。

矢崎 でもいつまでもそう言ってられないから。

● 村井さんは『すうねるところ』では、キャリアのある先輩方に囲まれてお芝居されていましたが、何か違うものはありました?

村井 もう…大変でした。怖いんですよ。舞台に立つ怖さを感じたというか、セリフを発するのも、空気を作ることも。今までにないほど慎重に丁寧に芝居をしているんですが、エネルギーを発散しないで内にため込んでいくっていうのが大変で、そういえばこんな芝居やったことなかったなって。毎日が初日みたいな感じでいますから。いま、先輩たちにいろいろ教えていただいて、何もかもを塗りつぶしてまた作り直しています。全部、価値観が変わりました。

矢崎 今の話を聞いて、似たようなところにぶつかっているんだなって思った。

●そんなおふたりが、今度は朗読劇で共演されますね。

村井 朗読劇と普通のストレートプレイは、お芝居をやるってことは変わらないんですけど、なんだろう、たいてい座って読むだけじゃないですか。それで説得力を持たせるというか、お客さんにイメージを提示しないといけないから、そのためにはまず僕らがイメージをしっかり作って、呼吸の仕方や空気感を大事に素直に伝えないといけない。でも僕らのイメージをそのまま伝えよう提示しようとするんじゃなくて、僕らの声がお客さんの耳に入って、お客さんの脳や頭でイメージが再現できたら、まあ成功なのかなと思うんですよ。

矢崎 僕は朗読劇はやったことないんだけど、子どものころ、お母さんに本を読んでもらっていたんだよね。それでわかんない言葉が出てきてもお母さんが噛み砕いて説明してくれて、すっげえワクワクした。そこらへんを、お母さん側の気持ちで意識したらいいのかなと思ってる。

村井 子どもに読むとかだったら、愛ですよね。伝えようと思っていないけど伝わる。

矢崎 そうそう。それと、身体を使えないってことが、僕にとっては挑戦で、新しいことに気付けるんじゃないかなと思ってます。

村井 矢崎くん、動きたそうだもんね。

矢崎 そういう朗読劇もありかもしれない(笑)。

村井 でも、本来声だけでやるのは正しいものなんじゃないかと思うんです。今だって僕は声しか出してないけど、伝わるでしょ。ヘンに動きながらしゃべっても「ん?」ってなるじゃない。朗読劇って超、省いた、純粋な芝居なんじゃないかと思って、そこにその人の価値観とか性格とかが出てくるんじゃないかと。だから、いろんな人が同じ作品をやるって面白そうですよね。

矢崎 今回の『緋色の研究』は、ほんと、いろんな人が集まってるよね。

村井 ほかのみんなの舞台、見たいですもん。こうやってやるんだって。

part3に続く)

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[プロフィール]

矢崎 広

やざき・ひろし
19870710日生まれ、山形県出身
2004年、ミュージカル『空色勾玉』で初舞台を踏む。『愛と青春の宝塚』『ザ★ミュージックマン』『時計じかけのオレンジ』『ドラキュラ』『大江戸鍋祭~あんまりはしゃぎすぎると討たれちゃうよ~』『サンセット大通り』など数多くの舞台に出演。2012年8月には舞台『MACBETH』で初主演を飾った。映画『バッテリー』やドラマ『ごくせん』『戦国鍋TV』『勇者ヨシヒコと魔王の城』など映像の仕事でも活躍中。
http://www.tristone.co.jp/actors/yazaki/

村井良大

むらい・りょうた
1988629日生まれ、東京都出身
2007年ドラマ『風魔の小次郎』でテレビデビュー。同ドラマの舞台版やミュージカル『テニスの王子様』『新春戦国鍋祭〜あんまり近づきすぎると斬られちゃうよ』『遠ざかるネバーランド』など数々の舞台で活躍。2012年も、主演舞台『弱虫ペダル』のほか、『ラ・パティスリー』『We Love 兄さん』『僕らの図書室』『醒めながら見る夢』『カワイクなくちゃいけないリユウ』『すうねるところ』など多数の舞台に出演。またドラマ『仮面ライダーディケイド』や『戦国鍋TV』、映画『華鬼』『アブラクサスの祭』など映像作品でも活躍している。
http://ameblo.jp/murai-ryouta/

 

[公演情報]

朗読劇『緋色の研究』

天王洲 銀河劇場
【9月公演】925日〜30
10月公演】1011日〜14
原作:アーサー・コナン・ドイル
脚本・演出:毛利亘宏(少年社中)
出演:中屋敷法仁/矢崎広/大河元気/鈴木拡樹/岡田浩暉/松下洸平/青柳塁斗/上山竜司/津田健次郎/廣瀬大介/大河元気/青柳翔/遠藤雄弥/斉藤慎二(ジャングルポケット)/久保田悠来/武田航平/早乙女太一/窪田正孝/山崎樹範/村井良大/山田裕貴/池田純矢
問い合わせ:キョードー東京 0570−064−708
公演詳細はこちら→公式HPhttp://www.tristone.co.jp/sherlock/


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