インタビュー & 特集

INTERVIEW! 舞台「ユーリンタウン-URINETOWN The Musical-」に出演の別所哲也さん Part.2

現在、座・高円寺で上演されている、流山児★事務所のブロードウェイ・ミュージカル『ユーリンタウン』。前回に引き続き、警官ロックストック役を熱演中の別所哲也さんに、作品についてさらに深くお話をうかがいました。
(舞台写真/横田敦史 インタビュー写真/森口信之 取材・文/中村恵美)

Part.1から続く)

INTERVIEW & SPECIAL 2011 10/19 UPDATE

――2004年に出演されたときは革命家のボビー役、対して今回は警官ロックストックという役で、まったく違う役を演じているわけですが、役によって作品に対する視点は、やはり変わってきますか?

前回僕はボビーという革命家の役で、今回やる役は警官ロックストックという、狂言回しで作品の語り部。しかも、体勢側でルールを守らせる側にいるので、作品の見え方は全然違いますね。
ボビーのときは、革命を起こして、物語を動かしていく側だったので、作品を作っていくことに精一杯だったんだけど、ロックストックとして支配側にたってみると、「結局、俺たちは何やってんだろうね」っていう気分になる。
どっちもどっちなんですよ、実は。革命を訴えて、そのために粛清で人を殺す側と、全員は助けられないかもしれないけれど、法の名のもとに癒着や悪徳警官なども抱え込みながら、でもギリギリ水資源を守って人類の文明を保持しようとする側。どっちが正しいのかな、と。最後は、正直わからない。

――もやもやしますね。

そうなんです。普通のミュージカル作品だと、ハッピーエンドで明るく終わったり、革命が成功して大団円で終わったり、革命で殉死してしまう人がヒーローになったりするんですけど、この作品は違うんです。ヒーローイズムに対してのアンチテーゼであり、ミュージカルそのものに対しても揶揄している。ブロードウェイは、夢を売っているかにみえて、本質的な夢を伝えないままボードビル的な楽しさだけを伝えている、それで良いのか、と。
作品の中でも、ミュージカルの断片をパロディー風に見せてるんですよ。ミュージカル通がみれば、「あ、ここ『レミゼ』、ここ『ウエストサイド』!」とわかる。
それでいて、ピューリッツアー賞を取っていいほどの社会的問題を扱っている作品でもある。面白いし怖い。人間や社会が本質的に持ってる矛盾、ほろ苦さみたいなものがちゃんとあるんです。流山児版はそこあたりをドギツク表現している気がします。

――だから、メッセージがより伝わりやすいのでしょうか。

そうですね。ちなみに、英語の語感で「ユーリンタウン」って言うのは「ションベン横町」みたいな意味なんですが、ブロードウェイだと英語なんで、ちゃんと韻を踏んでいるんです。「ユーリンタウン、ユーリンタウン…」って歌っているうちに、「You’re in town(ユア・イン・タウン)」にだんだん変わっていくんですよ。「You’re in town――お前もその街にいるんだぞ」って、最後にリンクする。そうすることで観客の腑に落ちるんです。よく出来てますよね。

――翻訳上演するときに、韻を踏んだりすることやダブルミーニングなどは、日本ではなかなか難しいですよね。

そうですよね。だからダブルミーニングや多重構造をどう組み立てるかというのは、一つの大きな挑戦だと思いますね。

――その辺りは今回の流山児版ではどのように組み込まれているんですか?

もちろん議論はしていますが、やっていくうちに際立つというか、回答が出てくる。あんまり理論武装しすぎないようにしてます。
流山児さんの演出は、まずは型にはめるというよりかは、お前らがやって見せろよっていうところがあるんです。役者同士も自分たちの意見を持ち込んでやっているし、この作品に関して言えば、自己矛盾を内包してても、成立するんですよね。
だから本来持っている多重構造を皆で話し合って統一見解を作るというよりは、勝手な凸凹感が、結局見ている人たちからすると、多元的に見えたり、時空がばらぱらな感じでありながら、ある瞬間に一緒になって見えたりするんじゃないかと考えています。
でも、実はどんな風に見えているかは分からないというのが正直なところ。狂言回しとして存在しているので、役柄的には客観的に見ているほうだから「なるほどね」と思うんですけど、その狂言回し的な、舞台と客席をつなぐ演技がむしろ、前頭葉皮質でやるというより脊髄でやる感じで。もう、脊髄反射芝居(笑)。

――すごい! 反射芝居ですか(笑)。ちなみに、今回の出演で楽しみにしていることはありますか?

いろいろありますけど、同じ作品に出会い直したことかな。俳優の仕事していてもなかなが出来ないことで、しかも違う役で出るというのはあるようでないんですよ。それも、違う演出、違う劇場のサイズでやるっていう奇跡。こういう体験は一生に何回あるかわからないので、これはまずちゃんと味わいたい。
想像はしていたんです。昔の恋人に会うような感じかなと思ったんですけど、違いますね(笑)。全く違う、似て非なるもの。

――何回も再演している『レミゼ』のように、同じ役で入るのとは、また違うものですか。

全然違いますね。『レミゼ』は基本的には、同じ解釈、同じフォーマットにのっとってこちらが時間を経過して出ていくもので、共演者が変わることでジャズのセッションのように変わるものなんです。でも、今回の場合はフレームは一緒だけど、完全に流山児流に再構築したものなので、たとえるなら、究極のチューンナップカー。エンジンもとりかえてあるし、タイヤも違う。
本当に自由でワークショップみたいなかんじで、ゼロから作るってこういう事だよなって。とかく翻訳劇は、どうしても作家の意図とか音楽の意味とか問いかけて、トレースしてしまう。解釈論に入ることが多いですよね。

――はい、よくある方法ですね。

でも、結局本質さえ間違えなければ、トレースせずに、自分たちなりに生まれ変わらせる勇気があってもいい。本質が強い作品は、むしろ浮き上がってきます。特に、一緒にやってる仲間は、皆すごく自由なんですよ。音楽的に綺麗に歌おうとか、ここの音符はここまで伸ばしてとか最低限の規則約束事はあるんだけど、そこに収まりきらない。個性と毒が渦巻いております(笑)。

――最後にメッセージをお願いします。

こういうミュージカルが存在するんだっていう衝撃を、ぜひ受けていただきたいです。
僕も前回、初演を見た時に「ああ、ミュージカルってこういうのが原点で作られているんだ」って思った。いろんなものが渦巻いてる感じかすごく面白かったんです。いや、もう、面白いという言葉だけでは表現できない。特に大劇場のミュージカルに見慣れているミュージカルファンの方には、ぜひ見てほしいですね。

●別所哲也プロフィール

べっしょ・てつや
1965年8月31日生まれ、静岡県出身。数々の映像・舞台で活躍するほか、ラジオのパーソナリティー、ショートフィルムのフェスティバル主宰など多方面で才能を発揮している。舞台は87年『ファンタスティックス』にはじまり、『レ・ミゼラブル』ジャン・バルジャン役、『ミス・サイゴン』エンジニア役など、大作の主演を果たし、いまやミュージカル界になくてはならない存在の一人。2004年日生劇場で上演された、宮本亜門演出の日本初演『ユーリンタウン』に出演、ボビー・ストロング役を演じた。
ツイッター:@besshotetsuya

 ●公演情報

「ユーリンタウン-URINETOWN The Musical-」
2011年10月14日(金)~30日(日) 座・高円寺TEL 03-3223-7500

脚本・詞:グレッグ・コティス
音楽・詞:マーク・ホルマン
翻訳:吉原豊司
台本:坂手洋二
演出:流山児祥
出演:別所哲也 伊藤弘子 関谷春子 今村洋一 坂井香奈美 清水宏 大久保鷹 福麻むつ美 三ツ矢雄二 塩野谷正幸 ほか
 http://www.ryuzanji.com/


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