インタビュー & 特集

INTERVIEW! 舞台「ユーリンタウン-URINETOWN The Musical-」に出演の別所哲也さん Part.1

現在、座・高円寺で上演されている、流山児★事務所のブロードウェイ・ミュージカル『ユーリンタウン』。2009年の流山児★事務所初演上演時には、口コミでウワサが広まり、圧倒的な迫力のステージで話題になりました。今回は、別所哲也さんを新たなキャストに迎えて、満を持しての再演。警官ロックストック役を熱演中の別所哲也さんに、たっぷりとお話をうかがいました。
(写真/森口信之 取材・文/中村恵美)

INTERVIEW & SPECIAL 2011 10/19 UPDATE

――別所さんは、2004年の宮本亜門さん演出版と今回の流山児★事務所版、両方にご出演されているわけですが、「ユーリンタウン」という作品とのそもそもの出会いを教えていただけますか。

2003年に、僕は『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役をいただいたんですが、その年、ブロードウェイで評判が高かった作品が『ユーリンタウン』なんです。
オフ・オフ・ブロードウェイからずっとあがってきた作品で、ブロードウェイで上演されて、しかもトニー賞をとった。だんだん出世魚のように大きくなったという成り立ち自体にも興味があって、実際にブロードウェイで観ることになったのが、この作品との出会いです。

――ご覧になっていかがでしたか。

まぁ、型破りでぶっ飛んだ感じがすごかったですね。テーマも好きでしたし、作り方もとても面白かった。そしてちょうどその時期に、日本初演で、宮本亜門さんが演出するということでお話しいただいて。運命的な感じがして、やらせていたただきました。

――今回は、流山児★事務所版にご出演することになったわけですが、宮本亜門さんの時と演出などの違いは、かなりありますか?

そうですね、宮本亜門さんの場合は、日生劇場で、実際のオリジナルと同じ規模のカンパニーで、ブロードウェイの「ユーリンタウン」が持つクルトワイル風で廃退的な世界観を、亜門さん独自の華やかさでみせる演出でした。
一小節一小節、言葉一つ一つを緻密に訳して、かつ華やかに作るのが亜門さん流。ミュージカルを知り尽くし、こよなく愛している亜門さんならではの方法だと思いましたね。
一方、流山児さんの場合は、根っこにあるエネルギーとか、作品のコアなメッセージに軸足があって、泥臭くて、アバンギャルドな部分をものすごく強く熱烈に感じる演出になっています。日本の政治を絡めたり、完全に自分たちの生活感に引き寄せる感じというか。

――今のタイミングでの再演ということについてはいかがですか?

初演の時と政治状況も違うし、特に3.11の日本は、震災を受けて、また改めて環境問題などをみんなが考えてはじめていますよね。
この作品の持っているテーマというのは、まさにそこ。人間が作った文明が、地球上の水不足を引き起こして、トイレまでも有料になってしまい、そこで対立や革命が起こる。でも、決して絵空事じゃなくて、ヨーロッパでは有料の公衆トイレもいっぱいあるし、水の大切さは、僕たちの生活に直結しているんですよ。この間の震災でもトイレに困ったとか、水について困ったことはたくさんありましたよね。その現実を、ブラックに、シュールに、ワイルドに描いている。
本来、あまりブロードウェイでも扱わない、非常に人間臭いテーマだし、言葉づかいも、「ションベン」とか「垂れ流し」とか、ものすごく強い言葉をいっぱい使っています。特に、流山児版はあえて、強い語感を際立たせるような作り方をしていると思いますね。

――流山児★事務所さんの作品に出演するのは、今回が初めてでしょうか?

はい。初めてです。こうやってお声かけいただいて、出演できるというのは光栄です。
偶然初演を見た時に、流山児さんとお話しできて「いやー、すごいですね!」って言ったのを覚えてますが、再演があるというのを僕は知らなかったし、タイミングもありますから。作品のめぐりあわせって不思議なものですからね。

――カンパニーの様子はいかがでしょう?

熱いですよ~。流山児さんってほんとに芝居が好きだし、役者が好きなんだなと思う。役者さんも皆さん濃いですよ。三ツ矢雄二さんや塩野谷正幸さんは名役者だし、皆それぞれに持ってる個性が強いなぁって。濃厚です。僕が一番薄いと思います(笑)。
流山児★事務所の方々もみんな、この作品を通じて、生き物を演じよう、命を演じようという意気込みがすごい。ミュージカルというのは、どうしても音楽や踊りなどの「型」、段取りがものすごく多い。その型の中でうまく命を吹き込むということと、本質的な「演じる」エネルギーで型を破っていくこと、その二つがせめぎ合っている感じが現場にはものすごくあると思います。

Part.2へ続く)

●別所哲也プロフィール

べっしょ・てつや
1965年8月31日生まれ、静岡県出身。数々の映像・舞台で活躍するほか、ラジオのパーソナリティー、ショートフィルムのフェスティバル主宰など多方面で才能を発揮している。舞台は87年『ファンタスティックス』にはじまり、『レ・ミゼラブル』ジャン・バルジャン役、『ミス・サイゴン』エンジニア役など、大作の主演を果たし、いまやミュージカル界になくてはならない存在の一人。2004年日生劇場で上演された、宮本亜門演出の日本初演『ユーリンタウン』に出演、ボビー・ストロング役を演じた。
ツイッター:@besshotetsuya

 ●公演情報

「ユーリンタウン-URINETOWN The Musical-」
2011年10月14日(金)~30日(日) 座・高円寺TEL 03-3223-7500

脚本・詞:グレッグ・コティス
音楽・詞:マーク・ホルマン
翻訳:吉原豊司
台本:坂手洋二
演出:流山児祥
出演:別所哲也 伊藤弘子 関谷春子 今村洋一 坂井香奈美 清水宏 大久保鷹 福麻むつ美 三ツ矢雄二 塩野谷正幸 ほか
http://www.ryuzanji.com/


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