インタビュー & 特集
「Omoshii」プレオープン企画 加藤健一事務所座談会
Omoshiiプレオープン企画 第2弾は、加藤健一事務所『滝沢家の内乱』の座談会をお届けします。なんと、加藤健一事務所、通算100本目のプロデュースという、記念すべき作品です。
INTERVIEW & SPECIAL 2011 9/26 UPDATE
今回の舞台は登場人物が4人。そのうちの二人は声だけの登場というお芝居。
舞台上の二人、加藤健一さん、加藤忍さんと、声だけの登場、風間杜夫さん、高畑淳子さんの4人に、今回の公演についてお話を伺いました。
──加藤健一プロデュース100本目の作品『滝沢家の内乱』の声の出演に、風間さんと高畑さんを選ばれたのは?
加藤健一(以下、加藤) これは滝沢馬琴と嫁のお路の二人芝居ですが、息子の宗伯と妻のお百が声だけの登場でも相当な比重がある。お客様にも期待を寄せていただける方にしようと思ってお願いしたら快く引き受けて下さって。持つべきものは演劇の友だなと思いましたね(笑)。
風間 100回の記念公演によくぞ声をかけて下さったと思いますね。それに、宗伯は変な役なんです(笑)。「変な役は変な人を呼ぶな」と、目の付けどころに感心しました。
高畑 私は加藤さんが「来い」と言ったらどこへでもついていくので(笑)。ただ、初めて稽古をしたときは、「癇癪持ちのお母さん」をやるのが難しくて。
加藤 いや、癇癪持ちで、一緒にいたくない人の感じが十分出てましたよ(笑)。
高畑 風間さんが息子で私が母っていうのには、まだ納得がいってないんですが(笑)。
加藤忍(以下、忍) 師匠からはお二人のことを前から聞いていたので。
高畑 加藤さんは忍さんの師匠なんですか?
忍 はい(笑)。師匠と二人芝居というだけでも緊張してたのに、風間さんと高畑さんとご一緒できるなんて責任重大だなと思ってます。
加藤 何か「ヨイショ」してない?(笑)
忍 いいえ!
──加藤さんと風間さんが共演するのはつかこうへい事務所以来ですね。
風間 『蒲田行進曲』のロングラン公演は前半が加藤さんで後半が僕だったんです。あれが1982年だから。
加藤 およそ30年ぶりですか。
高畑 それ以来、共演はなかったんですか?
加藤 ないんですよ。
風間 ねぇ。
加藤 今考えたんだけど、孫の太郎の役の声を平田(満)さんにやってもらえばよかったかな(笑)。
風間 孫は若すぎだよ!(笑)
──『滝沢家の内乱』では、馬琴が28年かけて『八犬伝』を大団円まで書き続けます。
高畑 こんなにやっかいな奥さんや息子を抱えながら、よく馬琴は本を書いたなあ、と思いましたね。でも、28年かけて『八犬伝』を書いた馬琴と、ずっとお芝居をやってきた加藤さんが、なんだかダブりますよね。
加藤 ええー、そうですか? 考えてなかったなぁ。
高畑 一つのことに向かっていくというのでね。
──嫁のお路は馬琴を支え、やがては目が見えなくなった馬琴の口述筆記をするようになりますね。
忍 お路は癇癪持ちのお姑さんと病気のオンパレードの夫に囲まれて、本当に大変で…。
高畑 昔のお嫁さんは、大変だよね。
忍 その大変さは稽古でお二人の声を聞いたときから実感できたんですけど(笑)。でも、馬琴とお路の二人で頑張って家を支えないといけない、と思う瞬間があったんだと思うんです。
加藤 お路にも潜在的に文学に対する欲があったんじゃないかな。だからこそ、馬琴についてあれだけのスピードで漢字を覚えて、馬琴の死後に小説家になったんだと思う。「一回役者をやったらやめられない」のと同じようなものかな(笑)。
──全体としては、どういう舞台になりそうでしょうか?
加藤 人情落語みたいな芝居にしたいなと思ってるんです。クスクス笑いながら、人情のあるところでホロリとしていただけるような作品になればいいなと思ってますね。
──三人から見て加藤健一さんはどんな方ですか?
忍 師匠と共演させていただくと、いつも安心して舞台に立てるんですね。
高畑 加藤さんは私から見て、いつも正解を知ってる人なんですよ。
加藤 何を言ってるんですか(笑)。
高畑 忍さんが加藤さんのことを師匠と呼んでいるけど、本当にそういうところがありますね。私がどんなに暴走しても、加藤さんは「はい、ここに座りなさい」と教えてくれるんです。
風間 僕たちは養成所から一緒で、加藤さんが一期上。体操の授業で先生が来ないときは、加藤さんがマット運動を教えてくれた。だから、僕にとっても師匠ですよ(笑)。
全員 (笑)
風間 加藤健一事務所の芝居を見ると、役者が皆、安心してのびのびとやってるんです。それは、加藤さんの懐が広くて、相手役をきちんと引きうけてくれるからだと思いますね。
高畑 そうなんです。『セイムタイム・ネクストイヤー』のとき、加藤さんが「大丈夫です、僕と共演した女優さんは皆、よく見えますから」と言って。
加藤 なんてことを言うんだ(笑)。
高畑 でも、そのとおりでしたよ。
──100本もの作品を作り上げるのは並大抵なことではないと思うのですが、加藤さんにとってはどんな時間でしたか?
加藤 次から次へと芝居をやってきて、芝居の世界にずっと生きてきたから時間の感覚があまりないんです。竜宮城で遊んでいた浦島太郎のように、「玉手箱を開けたら100本?」「もう60歳になっちゃったの!?」みたいな(笑)。
高畑 100本やると思ってましたか?
加藤 いや、思ってませんよ。それにしてもよく続いてきたねぇ。一番驚いたのは、100本の公演で1ステージも休演がないこと。共演者にも恵まれたし、自分も元気な体に恵まれたんだなと思いますね。
──この100本目の公演が未来へと新たな第一歩になりそうですね。
加藤 そうですね。100本まで31年かかりましたから、200本目のときは92歳ですか(笑)。
取材・文=大原薫 写真=杉田重男
●公演情報
加藤健一プロデュース100本記念
『滝沢家の内乱』
2011年7月13日(水)~24日(日)
下北沢・本多劇場
作:吉永仁郎 演出:高瀬久男
出演:加藤健一 加藤忍
声の出演:風間杜夫(友情出演) 高畑淳子(友情出演)
お問合せ:加藤健一事務所 03-3557-0789