インタビュー & 特集

色あせない日本物の名作『心中・恋の大和路』。宝塚雪組・和希そらが挑む再演をレポート

宝塚歌劇団雪組公演『心中・恋の大和路』が、7月20日~28日に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで、8月3日~9日に日本青年館ホールで上演。実力ある男役スター・和希そらさんが、近松門左衛門の『冥途の飛脚』をミュージカル化した宝塚の名作に挑んでいます。ロックテイストの音楽が、男女の哀しい道行をドラマティックに彩る舞台をレポート。(取材・文・写真/小野寺亜紀)※26日夕方追加情報:7月26日~28日公演中止

INTERVIEW & SPECIAL 2022 7/26 UPDATE

40年以上前の1979年に、星組の瀬戸内美八さん主演で初演。その後、剣幸さん、汐風幸さん、壮一帆さんが主演を担ってきた日本物の名作『心中・恋の大和路』が、8年ぶりに宝塚歌劇の舞台で再演されました。近松門左衛門による世話物の人形浄瑠璃『冥途の飛脚』をベースに、飛脚問屋の主人・忠兵衛と、遊女・梅川の許されぬ恋が、美しく切なく描かれ、主題歌「この世にただひとつ」は、今もイベントなどで度々歌われる名曲となっています。

上方言葉に柔らかい物腰、理性を失って恋に溺れる亀屋忠兵衛役は、格好いい理想の男とはかけ離れた役柄で、男役が演じるにはかなりハードルが高いものです。入団13年目の和希そらさんは、昨年末に宙組から「日本物の雪組」と言われる雪組に組替え。早速、その実力を問われるような主演作が回ってきました。けれど、歌・芝居・ダンスと三拍子揃っているうえ、最近は大人の魅力や包容力を感じさせる和希さんがしっかりと期待に応え、8月には初の東上主演も飾ります。

舞台は江戸時代の大坂。飛脚問屋・亀屋の養子となった忠兵衛(和希そら)は、遊郭・槌屋の梅川(夢白あや)への想いを募らせますが、結ばれるための身請け金を払えるような立場ではありません。けれど、他の客が梅川の身請けの手付金を納めたと知り、親友である米問屋の主人・丹波屋八右衛門(凪七瑠海)に渡すべき五十両を、自らの手付けとして槌屋に支払ってしまいます。商人としての一線を越えてしまった忠兵衛をとがめる八右衛門。その後八右衛門は忠兵衛をかばい、友情から彼を正しい道へ引き戻そうと大芝居をうちますが、忠兵衛は亀屋の預かり為替の三百両を手にし、梅川を身請けするため封印を切ってしまいます。死罪が免れない禁忌を犯した忠兵衛は、梅川とともにひっそりと大和を目指し……。

手と手を合わせ、想いを交わす忠兵衛と梅川。少し節目がちの表情など、一つ一つの仕草にも型を追求したような芝居は、多くの日本物を上演している宝塚でも珍しいかもしれません。初演当時はこの世話物に、ロックを組み合わせる演出が斬新で観客に衝撃を与えたと言います。また、今回の再演にも初演スタッフの吉﨑憲治さん(音楽)・大橋泰弘さん(装置)・任田幾英さん(衣装)・沢田祐二さん(照明)が携わり、演技指導として初演に出演した立ともみさんが参加。2014年の再演時に振付を担当した初代・八右衛門役の故・峰さを理さんに代わり山村侃さんが振付、OG公演で梅川を演じた南風舞さんが歌唱指導に入り、菅沼潤さんが生み出した世界を、演出家・谷正純さんがしっかり継承する形となりました。

和希さんは梅川への愛おしさがどんどん増していく様や、八右衛門に甘えるところの柔らかさを前半で見せながら、次第に封印切りへと突き進んでいく狂気を放ち、その鬼気迫る表情は怖いぐらいです。根底に梅川への深い愛があり、梅川と接するときはやはり温かい包容力で彼女を包み込みます。

梅川を演じた夢白あやさんは、忠兵衛に常に忠実、無垢な少女のような可憐さを感じる遊女で、どこまでも幸せを信じる儚げな姿が、より一層物語の悲劇性を高めます。

専科の凪七瑠海さんは、忠兵衛の盾にもなろうとする男気と、やはり最後の名台詞、そして「この世にただひとつ」の熱唱が心に残ります。しんしんと雪が降る雪山に消えていく二人にかぶさるギターチューンと八右衛門の熱唱が、観客のこみ上げる想いを代弁するかのようで、大きなカタルシスが訪れました。

また同じく専科の悠真倫さんが演じる飛脚宿衆・藤屋の存在感、汝鳥伶さんが演じる忠兵衛の実父・孫右衛門の長い人生を生きてきたうえでの温かさとやるせなさ。いずれも物語を膨らませていました。頼もしい中堅男役の諏訪さきさんが演じる亀屋の手代・与平は、歌のソロもある目立つ役で、彼も必死に忠兵衛の行いを止めようとします。誠実な人柄が伝わる与平が、心から憧れる槌屋の花魁・かもん太夫は、妃華ゆきのさんが美しい所作で演じ切り、梅川とは対照的な幸せな人生へと進んでゆく後ろ姿が印象的でした。

物語はシリアスな場面だけではなく、丁稚の庄介(紀城ゆりやさん)、三太(霧乃あさとさん)、おまん(愛羽あやねさん)の掛け合いが楽しいコミカルな芝居なども挟まれ、上方の人々の日常をさりげなく描きながら、緊迫感ある終盤へと引き込みます。名作の素晴らしさは色あせないことを、改めて証明する再演となりました。

※吉﨑憲治さんの「吉」は、上部が「土」が正しい表記です

【公演データ】
宝塚歌劇雪組公演 ミュージカル『心中・恋の大和路』
~近松門左衛門「冥途の飛脚」より~

2022年7月20日(水)~7月28日(木) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2022年8月3日(水)~8月9日(火) 日本青年館ホール

原作:近松門左衛門
脚本:菅沼 潤
演出:谷 正純
出演:和希そら、他
公式HP:https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/koinoyamatoji/index.html

 


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