インタビュー & 特集

ワイン詐欺師の痛快な物語! 宝塚宙組・桜木みなと主演『カルト・ワイン』レポート

さまざまな演劇的スパイスを効かせ、観客を小粋に酔わせる宝塚歌劇団宙組公演『カルト・ワイン』。6月17日~26日の東京公演を経て、大阪の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで7月2日に開幕しましたが、新型コロナウイルスの影響で5日~7日(大千秋楽)の公演が中止に。偶然にも最終公演となった4日16時公演を観劇した筆者。主演の桜木みなとさんをはじめとする出演者たちの熱演や、爽快感溢れる舞台の模様をレポートします。(取材・文・写真/小野寺亜紀)

INTERVIEW & SPECIAL 2022 7/7 UPDATE

実在の偽造ワイン事件犯をモチーフに、貧しい一人の青年が悪事に手を染めながら「ワインの貴公子」へと成り上がっていくさまを、宝塚歌劇団の若手演出家・栗田優香さんが描いた『カルト・ワイン』。冒頭、21世紀初頭ニューヨークの華やかなオークション会場に、カリスマ的なワイン・コレクターのカミロ・ブランコ(桜木みなとさん)が登場、ヴィンテージワインに“狂乱”する人々の群舞が繰り広げられる場面からスマートなことこのうえなく、椅子を使ったダンスも洒落ていてワクワクさせられます。
栗田さんは昨年の演出家デビュー作『夢千鳥』(和希そらさん・主演)で、大正ロマンを代表する画家・竹久夢二のさまざまな愛の形を濃厚に描き、一躍注目を浴びましたが、前作とは全く趣の異なる軽妙なスウィンドル・ミュージカルを生み出しました。

桜木みなと

主演は、今年の宙組大劇場公演『NEVER SAY GOODBYE』で冷酷なアギラール役を好演した男役スター・桜木みなとさん。2020年の主演作『壮麗帝』が新型コロナウイルスの影響でリスケジュールとなり、東上が叶わなかったため、今回が東上初主演作となりました。入団14年目、色気のある悪役もこなす一方で、天真爛漫な笑顔が魅力の桜木さん。友人のフリオ・マラディエガ(瑠風輝さん)たちに見せる屈託のない笑顔から、取り巻きの女たちに見せるニヒルな笑み、上り詰めた業界で生き抜くためにのぞかせる屈辱さを滲ませた笑みまで、多彩な表情で魅せます。人を騙す詐欺師という点でも、この笑顔の破壊力が役にハマっていました。

桜木さんが演じるのは、本名シエロ・アスール、貧しい中米の国・ホンジュラス出身の青年です。金のためマラス(ギャング)として生きるしかないと思っているシエロと、マラスには決してならず料理人になる夢を地道に叶えようとするフリオ。幼馴染でも価値観が違う二人がときに反発しながら、くされ縁的な感じでほのぼのと絡む場は、楽しいナンバーを含めて作品のいいスパイスになり、物語の締めにもガツンと効いてきます。ラストで「あぁ、面白かった!」と膝を打ちたくなるのも、宙組生粋の男役として切磋琢磨してきた、桜木さんと瑠風さんの確かな信頼関係があるからでしょう。

桜木みなと・瑠風輝

二人がホンジュラスから命懸けでアメリカに辿り着き、うまく働き口を見つけた一つ星レストランで、オーナーの娘・アマンダ(春乃さくらさん)と微妙な三角関係になるのも物語のポイント。ソムリエでもあるアマンダにワインについて指南してもらうなかで、天から授かった味覚の才能に気づくシエロ。ワインセラーでの二人のデュエットで、「知れば知るほど首ったけ~」という歌詞が、ワインにもお互いへの想いにも重なって聞こえて心憎い。そんな二人の仲睦まじい姿をそっと隠れて見つめているフリオは、その後、アマンダへの想いを募らせていきます。

新人公演主演経験も豊富な瑠風さんは、純朴で誠実だけれど意思の強さがあるフリオを、心地よく響く歌声も含めて自然に表現していました。まさにナチュラルに男役として成長している証し。また、春乃さんも透明感のある歌声が素晴らしく、2幕でシエロと再会してからの戸惑いや葛藤を、ほどよいさじ加減で演じていて芝居のセンスを感じました。

歌という点では桜木みなとさんも、特に1幕ラストが圧巻。自分に価値を見出せなかったところから、自分の力を試そう!と大きな扉を開けるようにパワフルに歌い上げる熱唱に、熱い拍手が沸き起こりました。シエロがアメリカへ渡る途中、フリオの父・ディエゴ(松風輝さん)から託された言葉、若いお前たちは無限の可能性を持っている――という人間の底力が、その声に、表情にみなぎっているように感じました。アメリカでシエロは元マラスの実業家、チャポ・エルナンデス(留依蒔世さん)と出会い、ある理由もあって彼の指示通りワイン詐欺に手を染めていきます。巻き髪にギラついた眼、歩き方も含めて飄々としていたシエロ・アスールから、高価なオーダーメイドスーツを身にまとったカミロ・ブランコへと変貌し、自らの舌を駆使して偽造した高級ワインのコレクションをお金持ちに売りさばいていきます。テンポ良く展開していくこのカミロの“錬金術”に、ある意味スカっとするのは、お金や欲望渦巻く格差社会への皮肉もスパイスとして入っているからでしょうか。

シエロたちがジャズアレンジの音楽に乗せて、ソムリエスタイルのコロスたちと踊りながら偽造ワインを醸造していく遊び心に満ちたナンバーなど、数々のダンスの振付が斬新かつオシャレ(振付:百花沙里さん・三井聡さん)。高揚感を誘う音楽、高く組まれたワインセラーや樽のセットの使い方、その中の数えきれないボトルが七色に光るといった照明の多彩な趣向など、バランス感覚に優れた演出が冴えていました。

また、落ち着いた実業家に見えてリスキーな裏の顔がチラつくチャポを、留依さんが抑えた演技で好演。大手オークション会社の重役・ミラ役の五峰亜季さん(専科)、アマンダの父・カルロス役の寿つかささん、狂言回し的な役割も担っているオークショニアの風色日向さんなど、上級生から下級生までときに複数の役を演じ分けながら、ホンジュラスからニューヨークまでガラリと異なる世界の住人となり、コーラスの面でも頼もしく支えていました。

さまざまなスパイスを交ぜ合わせ、最終的に人を騙しながら野心を燃やすシエロ。実は溺れかけた人を助けるなど心根の優しい男性でもあり、そのキャラクターの多面性でも魅せられる作品となっていました。筆者が最初に参加した7月1日の通し舞台稽古のときよりも、さらにそれぞれの演技が熟成され、作品全体のヴォルテージが上がっていた4日の舞台。カーテンコールで挨拶を振られた留依さんが、「最高で最強のカンパニーです!」と弾ける笑顔を見せ、桜木さんも「千秋楽まで元気に完走したいと思います!」とコメント。メンバー全員がノリ良く盛り上がるなか幕が下りただけに、その後の公演中止のニュースは大変残念でしたが、観た人の心に確実に刻まれる舞台でした。今後出演者や観客の笑顔が曇ることなく、未来を見つめ、シエロのように「さあ、踏み出そう!」と進んでいけることを願って――。

春乃さくら・桜木みなと

【公演データ】
宝塚歌劇宙組公演 ミュージカル・プレイ『カルト・ワイン』

2022年6月17日(金)~6月26日(日) 東京建物 Brillia HALL
2022年7月2日(土)~7月7日(木) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
 ※7月5日~7日の公演は中止(7日に予定されていたライブ配信も中止)

作・演出:栗田優香
出演:桜木みなと、他
公式HP:https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/cultwine/index.html


  • Google広告 記事下 468×60

  • online shop

    online shop
  • オモシィ会員登録

    オモシィ会員登録
  • Google広告 サブバー 200×200

  • お詫びと修正

    お詫びと修正
  • 公演情報登録

    公演情報登録
  • 川本成のオレ哲学

    川本成のオレ哲学
  • 書店バナー

    書店バナー
  • anfan

    anfan
  • 15バナーA

    15バナーA
  • バナーomo11_s

    バナーomo11_s
  • オモシィマグ6

    オモシィマグ6
  • mag4banner

    mag4banner
  • omo10_banner_small

    omo10_banner_small
  • banner14s

    banner14s
  • omoshii 13 申し込み

    omoshii 13 申し込み
  • omo7_small

    omo7_small
  • omoshii12

    omoshii12
  • omo9_small

    omo9_small
  • omo8_small

    omo8_small
  • MAG_BANNER

    MAG_BANNER
  • MAG2_RENSAI_BANNER

    MAG2_RENSAI_BANNER
  • Sparkle

    Sparkle
  • 劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

    劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録
  • 大原薫 There’s only here

    大原薫 There's only here