インタビュー & 特集
ミュージカル『ボディガード』フランク役の大谷亮平さんが再演に向けての想いを語る
2020年にミュージカル『ボディガード』日本キャスト版のフランク・ファーマー役で、舞台初出演を果たした大谷亮平さんが、2022年の再演でも同役に挑む(1月21日~31日 梅田芸術劇場メインホール、2月8日~19日 東京国際フォーラム ホールC)。スマートな身のこなしや存在感ある演技でフランク役を好演した大谷さんが、再演に向けての想いを取材会で語ってくれた。(取材・文/小野寺亜紀)
INTERVIEW & SPECIAL 2021 11/24 UPDATE
ホイットニー・ヒューストンとケビン・コスナー主演で大ヒットした同名映画を舞台化。英国ローレンス・オリヴィエ賞の4部門にノミネートされ、その後世界中で上演を重ねているミュージカル『ボディガード』。2019年秋には来日公演も行われた。
2020年春、演出・振付にブロードウェイで活躍するジョシュア・ベルガッセ氏を迎えて開幕した日本キャスト版は、コロナ禍の影響で33公演のうち、大阪5公演のみの上演となったが、待望の再演が決まり、大谷さんをはじめ初演メンバーが多く集結した。ボディガードのフランクが愛し守り抜く、人気ポップシンガーのレイチェル・マロン役は、初演より続投の柚希礼音さん、新妻聖子さんのほか、新たにMay J.さんが加わりトリプルキャストとなる。
――初めての舞台出演となった初演はいかがでしたか。
「舞台に立ってみないとわからないことが多く、稽古中は不安もあり、期待もありという状態だったのですが、本番を迎えると、結構お客さんの反応が(舞台上から)見えるんだなとか、自分の表現が届いているかなとか、色々考えながら立っていました。思っていた以上に冷静にスタートがきれたと思います」
――フランク役を演じるにあたり、心掛けていたことは?
「映画公開時に『世界中の女性が恋をした』というフレーズがあったのを覚えていて、そのイメージを持って劇場へ来られる方がたくさんいらっしゃるだろうな、と思っていました。一人の女性を愛し、命懸けで守るフランクは、女性にとって“キュンとする”とも聞いたので(笑)、そこに恥じないようにという気持ちはありました。少しでも自分の役に恋してもらえるように演じたいなと考えていました」
――再びフランク役に臨む意気込みをお聞かせください。
「初演は5回しか公演ができなかったのですが、いま振り返るとあの状況のなかで来てくださったお客様は、みなさんたぶん覚悟を持ってというか、『私は観たいんだ』という強い思いで来られた方がほとんどだと思います。まだコロナは終わっていないですが、前回観られなかった方の思いや期待が僕たちにも届くからこそ、より自分の役を通して楽しんでもらい、心に残る素敵な作品だと思っていただけるように、演じ切りたいです」
――今回新たにMay J.さんが加わり、3人のレイチェルを迎えることについては?
「初演では柚希さん、新妻さんが演じるレイチェルが、想像とは大きく違い、そのギャップを発見していくにつれて、より魅力的に感じました。May J.さんはお二人とも何か違う魅力を感じるし、自分自身いろんな発見があるはず。まだMay J.さんとはお会いできてないのですが、どんなレイチェルなんだろう、どんなパフォーマンスを見せて下さるのだろうと、新たな世界に出会える楽しさがあります。3人のレイチェルだから大変というより、むしろ1回1回新鮮にできるので非常に嬉しいです」
――初演の柚希礼音さん、新妻聖子さんが演じたレイチェルの魅力、ギャップとは?
「柚希さんは元宝塚歌劇団男役トップで、背が高く堂々とされていて、大きな圧にも引けを取らないようなパワーがある、という表現が合うと思うのですが、すごくキュートで可愛らしい面があり、それがレイチェル役に反映されているんですよ。
一方新妻さんは、小柄で可愛らしいイメージがあったのですが、リーダーシップがあり、ガッツもあり、サバサバしていて。レイチェルとフランクは最初お互い認め合わないのですが、新妻さんのレイチェルはこちらに向かってくる演技が、ヒヤッと怖いぐらい。そういうお二人のギャップに戸惑うというより、むしろ僕にはそこが魅力的にうつったので、レイチェルを愛する役を演じるうえで、とてもプラスになりました」
――レイチェルをお姫様抱っこするシーンもありましたが、あの場面については?
「初演の見せ方が正解だったのか……、あそこはさらに工夫したいなと思っているところです。なかなかのプレッシャーで、実は下の台が動くのですが、ふらつかないようにしないといけない。格好いいキメの場面でもあるので、スタッフさんとのコンビネーションなど、何度も稽古で調整しました。今回は30公演……、格好よく見せられるよう、少しスクワットなどもしているところです(笑)」
――レイチェル役が異なると、大谷さんの演技も変化していくのでしょうか。
「身長のバランスなど、二人が近づくシーンでの技術的な調整はありますが、レイチェルを愛するという気持ちの面では、そのときのレイチェルに自然に向かっていきたいです。舞台で生まれる感情に乗せて演じていきたいので、3人のレイチェルのパフォーマンスを間近で見て、何かを感じ、そのまま(演技で)返していきたいです」
――映像での芝居と、ミュージカルでの芝居の違いについてお聞かせください。
「映像と舞台では発声や台詞の言い方が違うと思います。僕は映像の方が慣れているので舞台に合わせようと思う一方で、初演の稽古や本番で自分の演技を動画で見たとき、どうしてもぎこちなく感じたので、今までやってきたものをあまり壊さず、無理せず演じていきたいなと思いました」
――初演で感じられたミュージカルの楽しさは?
「これはすごく不思議な感覚で驚いたのですが、歌やダンスが入ることで自分も感化されていくんです。自身が歌っているわけではなくても、同じ空間で作品の中で生きているので、自分のお芝居がさらに盛り上がる。これはミュージカルならではだなと。やはり歌やダンスのパワーはすごいですよね! あれを近くで見たらちょっと勝てないなと思うけど(笑)、そこが心強いし、いい意味でそれに乗せられて自分も盛り上がっていきたいです。僕は芝居場面が主ですが、物語にはサスペンスの要素もあり、その歌やダンスのパートに負けないよう、芝居でバトンを渡せるように、と思っています。
また舞台は、『始まったら進み続けなければいけないんだ』というプレッシャーがありますが、そのプレッシャーの2倍3倍の喜びとして返ってくる。ワンテイクごと切らず、役を最後まで通して生きられることに、映像とはまた違った楽しさを感じました」
――最後にメッセージをお願いします。
「初演では長い期間稽古を重ねたので、キャスト、スタッフともかなり辛い思いで中止を受け止めました。そのメンバーがまた集まれる喜びは大きいですし、約2年間積み上げたものを再演で生かそうという思いがあります。初演をご覧になった方、観られなかった方々に、より良い作品をお送りしたいという思いがメンバー一同強いので、ぜひそれを感じとってほしいです」
ミュージカル『ボディガード』日本キャスト版
2022年1月21日(金)~1月31日(月) 梅田芸術劇場メインホール
2022年2月8日(火)~2月19日(土) 東京国際フォーラム ホールC
原作:ローレンス・カスダン
ワーナー・ブラザース映画「ボディガード」
演出・振付:ジョシュア・ベルガッセ
脚本:アレクサンダー・ディネラリス
訳詞:森雪之丞
翻訳:阿部のぞみ
編曲:クリス・イーガン
出演:柚希礼音・新妻聖子・May J.(トリプルキャスト)、大谷亮平/
AKANE LIV、入野自由、猪塚健太、大山真志/
内場勝則 ほか