インタビュー & 特集
元星組トップスター香寿たつきや桂文枝も出演! 佐渡裕プロデュース『メリー・ウィドウ』
佐渡裕氏がプロデュースする喜歌劇『メリー・ウィドウ』が、7月16日から25日まで、兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホールで上演されている。甘いワルツや陽気なカンカンで彩られるオペレッタに、宝塚歌劇テイストの演出も取り入れられ、ここでしか観られないエンターテインメントが誕生。元星組トップスターの香寿たつきさんや桂文枝さんも出演し、連日観客の喝采を浴びている舞台の模様をお届けする。
(取材・文/小野寺亜紀、撮影/飯島隆、舞台写真提供/兵庫県立芸術文化センター)
INTERVIEW & SPECIAL 2021 7/20 UPDATE
「サプライズが詰まった底抜けに楽しい、兵庫発の超一流オペレッタ」と噂は聞いていたものの、実際劇場で体感すると、銀橋など同じ兵庫発祥の宝塚歌劇をリスペクトするような演出が盛り込まれ、豪華絢爛な舞台に圧倒される。しかもタクトを振るのは、日本が誇るマエストロ、佐渡裕氏。彼が芸術監督を務める兵庫県立芸術文化センターが主催し、2008年に大成功をおさめた『メリー・ウィドウ』が、13年ぶりにパワーアップして帰ってきたのだ。
ベル・エポックが花開いた1900年頃のパリ。莫大な遺産を相続した未亡人ハンナ・グラヴァリが、昔の恋人ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵と再会。惹かれ合っているのに意地を張り合う二人の駆け引きや、ハンナの財産を巡る国をあげての計画、人妻とパリジャンとの恋など、さまざまな騒動が賑やかに繰り広げられる。
大編成のオーケストラで奏でられるフランツ・レハールの美しいメロディにうっとりしていると、なんと上方落語の重鎮・桂文枝さんが書記官ニエグシュ役として登場。「今日は暑いですなぁ」と関西弁で観客に語りかけながら物語を導き、オペレッタとの距離感をぐっと縮めてくれる。佐渡氏との愉快なやり取りも必見だ。
グランドピアノをモチーフにした装置や、スタイリッシュな衣裳の数々は、海外の一流デザイナーが手掛けたもので、センスある色彩美に心奪われる。オーケストラボックスと客席との間には、存在感あるエプロンステージ=銀橋が。幕間にはここに元宝塚歌劇団星組トップスターの香寿たつきさんが現れ、まるで男役そのもののようなスタイルでタカラヅカの名曲を披露。美しく響く低音ヴォイスに大きな拍手が送られ、指揮する佐渡氏も笑顔で振り返る。
佐渡氏は宝塚歌劇団の100周年記念式典にて、宝塚大劇場で指揮を担った経験があり、関西でしか創れないエンターテインメントとしてタカラヅカのテイストを取り入れたとのこと。観客の反応からもこの演出が大成功なのが伝わってくる。
また、桂さん、香寿さんたちは全日程出演だが、主要キャラクターはダブルキャストとなっていて、筆者が観た日は、ハンナの奔放さと華が伝わってくる次代のスター・高野百合絵さん、ダニロのどこか憎めない愛嬌と一途さを自然に表現していた注目のバリトン・黒田祐貴さんという組み合わせだった。(他日程では、日本を代表するソプラノの並河寿美さん演じるハンナ×劇団四季にも客演するなど幅広く活躍する大山大輔さん演じるダニロ)
哀調を帯びた「ヴィリアの歌」、甘美な調べの「メリー・ウィドウ・ワルツ」など名曲ぞろいのオペレッタのなかでも、特に忘れられないのが大勢のキャストたちが歌い上げる「女・女・女のマーチ」。魅惑的なマキシム風夜会のセットで、次々と繰り出されるフレンチカンカンの踊りなどとともに、弾むような心浮き立つメロディがクレッシェンドしていく展開に、観ているこちらまで一緒に口ずさみたくなるような衝動にかられる。
拍手喝采のなか幕が下りたと思ったら、次は驚きのグランドフィナーレ。本格的なバレエなどさまざまなダンスや歌が続き、観客の手拍子が止まらない。かなりのボリュームで最後はとっておきのサプライズ! コロナ禍を吹き飛ばす陽気なエンターテインメントが、観客の心を明るく照らしているようだった。
【写真注釈】
撮影は公開リハーサル時のため、出演者が肩掛けファンとマウスシールドをつけていますが本番では外しています。
【公演データ】
佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ 2021
喜歌劇『メリー・ウィドウ』
2021年7月16日(金)~7月25日(日) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
音楽:フランツ・レハール
台本:ヴィクトル・レオン/レオ・シュタイン
指揮:佐渡 裕
演出・日本語台本:広渡 勲
装置:サイモン・リマ・ホルズワース
衣裳:スティーヴ・アルメリーギ