インタビュー & 特集
「その都度頂けるお仕事を楽しんでいる自分を楽しみたい」紅ゆずるインタビュー
東京喜劇『熱海五郎一座』に、宝塚歌劇団元星組トップスターで最強コメディエンヌの紅ゆずるが初参加! コロナ禍での公演中止を経て、この5月に上演が決まった本作に向けて、熱い思いを語った。(取材・文/臼井祥子)
INTERVIEW & SPECIAL 2021 4/12 UPDATE
●退団後初舞台となる予定だった舞台ですが、無事、上演が決まった今のお気持ちは?
人を笑わせることってとても楽しいこと。「本当に楽しかった」と言っていただくことが充足感につながっていたので、コメディに興味がありました。そのなかでも、瞬発的な笑いではなく、アドリブ禁止の芸術として一つの作品に仕上げていく超プロフェッショナルの舞台に立てるということは、ものすごい財産だと思いますし、心してかかりたいです。
退団直後は、男役をなんとか払拭しなければならないという気持ちでいたんですよ。でも今は男役をやっていたからこその女優だと、男役をやりきったということを、自分の強みにしていかないともったいないなと思うようになりました。だから今回、海軍中佐役で、もう一度軍服を着られることがとてもうれしいです。
●三宅裕司(出演・構成・演出)さんのコメントに「一座のメンバー、ゲストの方を想定して、当て書き」されたとあったのですが、役についてはどう考えていらっしゃいますか?
ファンの方は「今回紅さんはどんなふうに演じるのかしら?」と思ってくださると思いますので、これから稽古でガンガン自分の個性を出して、一座の皆さまとセッションを繰り返していって「紅さんだったらこうやってやるんじゃないの?」というのが稽古場で生まれてくるのを楽しみにしていただきたいです。
●『熱海五郎一座』は東京喜劇ですが、東京の笑いと関西の笑いではどんな違いがありますか?
関西は「どうや、面白いやろー」ってすごい確信をもって一つの手段を押し通す感じなんですよ。面白くなかったら別の手段をとるんじゃなくて、これだけで勝負、なんとかして笑わせる。力技っぽく見えるけど、それにももちろんすごく技術が必要です。東京は、あの手この手でいろんな方向から攻めていく感じがします。その土地の人ならではの性質ってあると思うので、関西の血が流れている私が、東京喜劇に出ることでどういうものが出来上がるのかなとワクワクしています。
お客様の反応も、関西と東京で全然違うんですよね。関西の人って「笑わな損」って思ってるんですよ。「観劇料払ってるんだからこれ以上に楽しまな」って。それで自分たちが「わはははは」って笑うことで、「あー楽しかった」って満足してくださる。飾りっ気がないんです。東京の方も笑ってくださるんですが、なんというか品がいい。「ふふふ」って感じです。だから宝塚時代はそれも計算して芝居を作っていました。笑いの間を東京では短めに取っていましたね。
でも宝塚時代は笑いにそれほどプレッシャーを感じたことはなかったんです。「今回コメディだけどみんなは大丈夫かな…」と、少し心配な気持ちもありました。周りからも「さゆみさん(紅の愛称)だからコメディー来るんだよね」って思われるような立ち位置でした。だけど今回はそういうわけにはいかない。面白くて当然のプロフェッショナル集団の中にゲストとして入るわけですから、絶対に外せない。足を引っ張る訳にはいかないと思っています。
●笑いも華やかさも必要ですね。
宝塚で360度どこから見ても絶対きれいじゃないといけないと学んできたので、それを生かしつつ、360度どこから見ても面白くしたいです。
●もう一人のゲスト横山由依さんについてはどんなイメージをお持ちですか?
すごくかわいいですよね。それにAKB48の元総監督でもある。総監督ってすごいですよね。あれだけの人数をまとめ上げるわけですから。私も約80人いる中にいたので、立場としては通じるものがあるかな。同じ関西人ですし、話が合うんじゃないかと楽しみにしています。
●宝塚歌劇団以外の舞台に期待していることは?
私は小学5年生で宝塚に出会ってから、芸能人になりたいとか、女優になりたいとか、そんな気持ちは全然なくて、タカラジェンヌになりたかったんです。それを目指してずっとコツコツやってきて、努力を重ねていたらトップスターになることができて、自分の中でやりきることができました。なので、トップの後は女優だとか、そういう考えはまったく浮かばなかったんです。退団することになって、じゃあ次は何をしようかって時に「私は何をすればいいんでしょうね?」という感じだったんですよ(笑)。
演じることが好きで、歌ったり踊ったりも好きで、男役という特別なものではありましたけど舞台経験があります。そして私は宝塚歌劇が大好きで「宝塚らしいタカラジェンヌ」に憧れて入団したのですが、そこからちょっとはみ出ている自分を追求していました。「こんな面白いことをするタカラジェンヌがいてもよくないですか?」っていろんな角度からお客様や劇団に提示してきました。
だから退団後の今も、その時その時、自分の心に正直に、自分に合ったものを見出しながらいろんなものを提示していけたらいいなと思っています。そしてプロフェッショナルな周囲の方々からいろんなものを吸収したいです。
●小学5年生の時の夢を叶えてやりきったとおっしゃった紅さんの、今現在の夢はなんですか?
はっきりとした夢と呼べるものはありません。目標は、近くに控えた舞台をきっちりとこなすことですが、今、絶対にこういうふうになりたいですっていうよりは、自分自身の感性と、その時に来たお仕事を楽しんでいる自分を楽しみたい。世界を広く見て、吸収できるものを吸収して、その時々の自分、いろんなものになれる自分になって、柔軟に対応したいです。
●最後に読者さんにメッセージをお願いします。
『熱海五郎一座』に出演させていただけることはとても光栄なことです。「もう一回出てください」と言われるくらい面白いものを作りたいと思います。
そして、エンターテインメントがあることが当たり前ではないのだと身に染みて分かっているコロナ禍という状況で、笑いを求めて見に来てくださるお客様に「来てよかったな」と言っていただけるようなものに仕上げたいです。自分自身終わった後に「『熱海五郎一座』めっちゃ充実していた」って、すごくいい思い出になるはずなので、皆さんにも「あれ面白かったでしょ」って言えるくらいの爆笑コメディに仕上げたいです!
※紅ゆずるさんのサイン入りインスタント写真を抽選で1名様にプレゼント!サイト内プレゼントページよりご応募ください。(応募締め切り 2021年4月30 日)
<取材協力>
ヘアメイク:hanjee(SINGO)
スタイリング:森本美砂子
衣装:ZADIG&VOLTAIRE
紅ゆずる(くれない・ゆずる)
8月17日生まれ、大阪府出身。
2002年、宝塚歌劇団に第88期生として入団・初舞台を踏む。2016年に星組トップスターに就任。2019年『GOD OF STARS-食聖-/Éclair Brillant(エクレール ブリアン)』をもって退団。8月からはブロードウェイ・ミュージカル『エニシングゴ・ゴーズ』に出演する。
[公演情報]
東京喜劇『熱海五郎一座』
Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー
~日米爆笑保障条約~
2021年5月30日(日)~6月27日(日)
新橋演舞場
出演・構成・演出:三宅裕司
出演:渡辺正行 ラサール石井 小倉久寛 春風亭昇太 東 貴博(交互出演) 深沢邦之(交互出演)
ゲスト出演:紅ゆずる 横山由依(AKB48)
公式サイト:https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/2021_atamigoro/