インタビュー & 特集

フィクションの中にこそある本当を描きたくて–脚本家・鈴木聡さん

「いくらやっても儲からないと評判(!)の演劇界において、チケットがソールドアウトも珍しくない新興ジャンル“2.5次元舞台”の存在は、もはやうらやましい以外の何ものでもないっ!! でも俺たちは人間を、ありのままの人間を描きたくて、演劇やってんだ! アニメやゲームのキャラってどうなんだ?! でもお客さん喜んでるし、何度でも見たいって足運んでるし、んん~ガリガリガリ(頭かきむしる)!」そんな演劇人の葛藤を、思いっきり掘り下げた、ラッパ屋の新作『2.8次元』が開幕。初日終了後、激お疲れモードの脚本家・鈴木聡さんを直撃しました。
撮影/増田慶 文/湊屋一子

INTERVIEW & SPECIAL 2019 6/11 UPDATE

――初日、おめでとうございます。観客の反応はいかがでしたか?
鈴木聡(以下鈴木) よかったような気がします。今日のお客さんは主に2.5次元のお客さんじゃなくて、いつものラッパ屋のお客さんでしたが。おお、受けてる、と思って安心しました。書いてるときは「受けよう」なんて考えてる余裕なかったんです(笑)。
――けっこう、演劇人には自らの傷をえぐるような内容ですもんね……。
鈴木 そう、自分の傷をグイグイせざるを得ない。うちに、『テニミュ』(ミュージカル『テニスの王子様』)に初期から関わっているスタッフがいて、「1回観ておいたほうがいいですよ」とか言われてたんだけど、あっという間に大人気になっちゃって。でも演劇界では「これは違うもの」扱いだったと思うんです。ところが今の、自分たちも含めて中規模の演劇の発信力が弱まってるなと感じる中で、これは違うと思っていた“2.5次元”が、発信力が高くて観客を集めている。これは何か考えてかなきゃなとは思っていました。そういう2.5次元を、新劇やってた人がやると「濃くて2.5次元になりきれなくて、2.8次元になるんじゃないの?」なんて、最初は飲み屋での雑談で始まったんですけど。


――でも現実ではまだ着地点が見えない話ですよね。どういうラストにするか、ある程度見えて書きはじめたんですか?
鈴木 僕が書くコメディは、どうにかしてハッピーエンドにしたい。理解とか調和とか、許しを感じさせるもの。お客さんが「楽しかったね、よかったね」と言いながら帰れるものに、意地でももっていってやると思って書いてます。そう、現実では着地点、見えないですよね。対立する思想とかそれぞれの神が衝突する。今の世界は融合を諦めて、自分のところのことだけ考えてりゃいい、となりかけてる。アメリカとかイギリスとか。でも「……そうかなあ?」と思うんです。
 日本は、調和に向かうマインドがすごく強いんじゃないかと思う。例えば昔の日本の会社。今で言えば残業も多くてブラックな部分も多いんだけど、よかったのは『どんな人にでも居場所を作った』ってことなんですよ。合理性とか効率という一つの軸だけじゃなくて、いろんな価値観、多様な軸を持ってた。なぜかというとそこに終身雇用があったから。ずっと一緒に行く、共同体だからそれが必要だった。日本人って、チームだから頑張れる、すごいポテンシャルを発揮するところがあると思うんです。それが90年代以降、アメリカ的な能力主義、成果主義を積極的に推し進めて、日本人のメンタリティのいいところを捨てた。捨てなきゃ、変わらなきゃ時代において行かれると思った。でもその結果、すごくギスギスした、今の世の中になっちゃって。合わないことしていると思う……とか言うと、古いって言われるのもわかる。変化の過程だからそこを我慢して抜けないと、とか。合理的に考えればそうですよね。でもそれ、正しいのか?
――滅び行く種族かもしれませんね……。
鈴木 でも自分たちをそうやって「滅び行く」とか言っちゃってていいの? 伝えなきゃ!って気持ち、ない? あるでしょ。
――あります!
鈴木 演劇なんて芸術と興行、どっちも大事で、フィクション作ってるのに、どこまでも現実みたいなのとつきあわなきゃいけない。その背反性が面白さでもある。
――今回、かなり演劇について語ってますね。
鈴木 こんなに演劇のこと、書くつもりなかったのに、気がついたらけっこう書いてる! 書きながら自分で「なんで演劇なんかやってるんだ?!」と思いました。


――演出家・鈴木聡にとっての演劇とは?
鈴木 セリフにも書いたけど、「幻が好き」だから。幻って言葉が全部じゃないけど、現実よりもフィクションのほうが本当に見えるんです。子どもの時から、現実って「なんか、嘘だな」と思ってる。今、“そういうことになってる”だけで、本当じゃないって。でも“そういうことになってる”もんで、どこにいてもなんか居心地が悪い。だから僕はフィクションを作り続けている。
――世の中にいやなことやひどいことがたくさんあるけれど、人の中にはとても素敵な部分がある。その表に表れてないけれど、本当にある素敵な部分を取り出してみせる、それがフィクション……みたいなことですか?
鈴木 そんな感じかな。それを人と共有することが、一番僕にとっては自然なこと、落ち着くことなのかな。ラッパ屋はお客さんと一緒に年をとっていって、それがいいと思っているけど、もちろん若い人にも観てほしい。若い人の中にもアナログ好きがいるから、つながる手立てはある気がします。今や、ラッパ屋が描いているようなコミュニティーは、レトロって言われてて(笑)、古き良きと言われるので、逆にそれを求めて若い人が来る可能性もある気がします。どうかな?(笑)

ラッパ屋 第45回公演『2.8次元』は、6月16日まで、紀伊國屋ホールにて上演中です。詳細は下記の公式サイトにてご確認ください。
http://rappaya.jp

【プロフィール】

すずき・さとし
1959年東京都生まれ。
劇団「ラッパ屋」主宰。博報堂でコピーライターとして活躍し、1984年サラリーマン新劇喇叭屋(現ラッパ屋)を旗揚げ。劇団の作・演出を手がけるほか、脚本家として幅広く活躍している。近作に、『恋と音楽』シリーズ・『FREE TIME,SHOW TIME君の輝く夜に』(稲垣吾郎主演)、『ミュージカル ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』(ももいろクローバーZ主演)、わらび座『ミュージカルKINJIRO!』、テレビ東京『三匹のおっさんリターンズ!』などがある。ラッパ屋『あしたのニュース』、グループる・ばる『八百屋のお告げ』で第41回紀伊國屋演劇賞個人賞、劇団青年座『をんな善哉』で第15回鶴屋南北戯曲賞を受賞。


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