インタビュー & 特集

オリジナルキャストで再演『キネマと恋人』橋本 淳さんインタビュー

ケラリーノ・サンドロヴィッチ台本・演出による『キネマと恋人』が、演出家、出演者、スタッフ含めオリジナルキャストが再結集して約3年ぶりに再演される。いよいよ6月8日(土)から東京・世田谷パブリックシアターで開幕する本作について、さまざまな演出家から声がかかる若手実力派・橋本 淳に話を聞いた。(舞台写真撮影/御堂義乘、取材・文/千葉玲子)

INTERVIEW & SPECIAL 2019 6/7 UPDATE

――KERAさんが初演時から再演を希望されていた『キネマと恋人』。オリジナルキャストがそろっての再演が、いよいよ動き出しました(取材は稽古開始前に行われた)。

橋本 初演の稽古の終わり頃、幕が開いていないうちから「これは再演したいんだよね」とおっしゃっていたんです。僕自身も待ち望んでいました。

――橋本さんにとって、念願のKERA作品初参加だったのですよね。

橋本 『キネマと恋人』に声をかけていただいたとき、嬉しくて跳びはねたんですよ。やったー!って(笑)。ナイロン100℃の公演も以前から拝見していましたし、いつかKERAさんとご一緒したい、世田谷パブリックシアターやシアタートラムの舞台に立ちたいと、ずっと思っていました。そうしたら、両方同時に叶ってしまったんです。

――その上、妻夫木 聡さん演じる高木高助(俳優)/間坂寅蔵(高助が演じる映画の登場人物)と対になる存在という、重要な役どころです。

橋本 僕が演じる嵐山 進(映画の中では月之輪半次郎)は、昭和の若手映画スターということで、初演の稽古前は、当時のモノクロ映画をたくさん観たり、勝 新太郎さんや市川雷蔵さんのインタビュー集を読んでみたり、大正から昭和の生活や服装がわかる資料を買ってみたり…そういうことをしていましたね。それが芝居に生かされたかはわかりませんが、モチーフになっているウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』、劇中に出てくるマルクス兄弟やフレッド・アステアの出演映画なども繰り返し観ていました。KERAさんに、「他にどの映画を観たらいいですか?」と聞いたりもして。

――リサーチや事前準備をしっかりするタイプなのでしょうか?

橋本 リサーチという意識はあまりないかもしれません。時代背景などの知識がなかったですし、役作りというよりは、不安を補うための材料といいますか。大先輩ばかりのなかで、少しでも皆さんに追いつこうと。稽古場では、「準備してきたものを見せる」ということはしたくないので、目の前の相手とどう向き合うかに集中していました。

舞台は昭和11 年(1936年)。架空の港町「梟島」には、東京から1年も2年も遅れて新作がかかる小さな映画館があった。夫との貧しい生活のなかで、唯一の楽しみは映画館で映画に浸ることだというハルコ(緒川たまき)。ある日いつものように映画を観ていると、なんとスクリーンから登場人物・寅蔵(妻夫木)が話しかけてくる。銀幕を飛び出して、ハルコを連れて逃げてしまう寅蔵。寅蔵を演じる俳優の高木(妻夫木)らは、彼を映画の中へ戻そうと奔走する。

橋本は二人を取り巻く人物をいくつも演じ分けているが、主な役どころは俳優の嵐山 進。寅蔵が飛び出してくる映画『月之輪半次郎捕物帖』に主演する若手スターで、高木とは対照的な存在だ。

――第一幕で、高木のセリフに「じゃあなに、笑わせる映画は安っぽくて深刻な映画は高級だっての?」とあります。嵐山は、喜劇を志す高木と対になる部分もありますね。

橋本 そうですね。初演のときは、聡さん演じる高木の芝居を感じて真逆をとるとか、高木が嫌がるようにとか、相手にどう影響を与えようかと考えた部分もあったかもしれないです。

でも、両方とも正義だと思うんですよね。嵐山は嵐山で必死なんですよ。彼なりの、嵐山が信じる“良い映画”を真剣に作りたいし、「この映画がコケたら自分に未来はない」って。本心は嫌なヤツではないというか。そこは台本にしっかりと書かれていて、台本の通り純粋に演じれば自ずとお客さまにも感じていただけると思うので、余計なことをせず、シンプルに取り組んでいます。

登場人物みんなが、必死に生きているんですよね。どうしたら現状を打破できるだろうかとか、この生活を続けられるだろうかとか、生活に対して必死だから、傍目から見ると滑稽に映ったりジーンときたりする。その熱量は大事かなと思います。

――そういう意味で、ハルコとミチル(ともさかりえ)の姉妹もとてもキュートですよね。高木/寅蔵とハルコの恋もファンタジックですが、嵐山とミチルのやりとりも絶妙です。

橋本 ハルコもミチルも可愛いですよね、二人とも大好きです。もしお付き合いするとなったら、二人ともちょっと面倒な部分はあるかもしれませんけど(笑)、どこか欠陥を抱えた人間の可愛らしさとか必死さというのかな、二人が体現していると思います。

――初演時に、KERAさんのお稽古を通して、橋本さんにとって特にヒントになったことは?

橋本 ツッコミのスキルですかね。例えば、「音が違う」とか。

――音が違う?

橋本 テクニック的なことで言うと、最後の音を上げて、息を抜く、とか。KERAさんから、「ここは下げると笑いにならないから、高い音で出してくれる?」と言われて、その通りにやると笑いが起きるし、意図したシーンになるんです。

例えば第二幕で、ミチルが嵐山に執着してすがってくるシーン。嵐山は本気で嫌がってるのに、ミチルが「本心じゃないがっさ」って言うから、嵐山が「本心だよ!」と返すんですが、それをどういう音で言うのか。「橋本の言い方次第で笑いがくるかこないかだから、そこはきっちり、感情も大事だけど、感情の流れよりもテクニカルな部分を大事にしたほうが笑いはくるよ」と教わったことを覚えています。

以前『ベッド&メイキングス』に出演したとき、福原(充則)さんにも言われたことがあったんです(2012年の第2回公演『未遂の犯罪王』)。今回はコントだから、感情はいらないと。「セリフの立て方の前フリがあって、ボケがあって、ツッコミがあって笑いがくる。橋本の前フリがそういう感情論でこられるとウケないから、しっかり構築してほしい」と。正直、そのときは掴みきれなかったんですけど、20代後半になって、だんだんとわかってきて。感情よりテクニックを身につけなきゃいけないんだなと。わかりかけていた頃にKERAさんとご一緒させていただけたので、「あ、これか!」って、とても勉強になりました。

――そうだったのですね。ほかに印象的だったことは?

橋本 初演が全公演終わったあとに、KERAさんに楽屋でご挨拶したら、「うん、橋本の芝居は好きだし、オマエのやってる表現オレ好きだけど、ひとつアドバイスするとしたら、自分で球を持っていいんだよ」と言葉をかけてくれて。「自分のターンが来たら、間を怖がることなく、好きなタイミングでセリフや動きに入っていいし、きっと橋本は気ぃ遣いだから球を回すほうにポジショニングを取りがちだけど、球を持ったりドリブルすることを怖がらなくてもいいから。そこを意識するともっと変わるよ」とアドバイスをいただいたんです。よく見てくださっていたんだなぁと、すごく嬉しかったですね。

そして、「また(一緒に)やろうな」と言ってくださって。その後も、劇場などで会うたびに「オマエ、もっとうまくなれよ」と発破をかけてくださるので、もっともっと頑張りたいです。

――最後に、橋本さんご自身が、ハルコのように何度も見てしまう映画はありますか?

橋本 ヴィム・ヴェンダース監督の『パリ、テキサス』です。何度も観ちゃいますね。アキ・カウリスマキ監督の作品集も、ヒマがあると観ちゃいます。

――どんなところが好きですか?

橋本 『パリ、テキサス』は、二十歳の頃に誰かにすすめられて観たんです。2時間半ほどのロードムービーで、家族の話なんですが、さほど大きな事件は起きなくて、初めて観たときは面白さがわからなかったんですね。でもその1年後ぐらいにもう一度観返したら、印象がぜんぜん違ったんです。すっごくおもしろいなと思って。それから毎年のように観るようになりました。観るたびに違う印象を受けたり、前は笑えなかったシーンで笑えたり。今の状態がプラスなのかマイナスなのか、自分の現在地がわかる映画というか、自分自身をフラットに戻してくれる映画になっている気がします。

橋本 淳(はしもと・あつし)
ドラマ『WATER BOYS2』でデビュー。『連続テレビ小説 ちりとてちん』でヒロインの弟・正平を好演。以降、TV、映画、舞台と幅広く活躍中。舞台では、宮田慶子、宮本亜門、白井 晃、永井 愛、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、森 新太郎、小川絵梨子、山内ケンジなど、さまざまな演出家の作品への出演が続いている。近年の舞台出演作は『フォトグラフ51』、『No.9 -不滅の旋律-』、主演舞台『在庫に限りはありますが』など。

世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#009
『キネマと恋人』
2019年6月8日(土)~23日(日) 世田谷パブリックシアター
台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:妻夫木 聡、緒川たまき/ともさかりえ/三上市朗、佐藤 誓、橋本 淳/尾方宣久、廣川三憲、村岡希美/崎山莉奈、王下貴司、仁科 幸、北川 結、片山敦郎
※福岡、兵庫、愛知、岩手、新潟にてツアー公演あり。

※宣伝ビジュアル撮影:西村裕介


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