インタビュー & 特集

若さゆえの向こう見ずな王を創り出したい――  杉原邦生が中村橋之助を迎えて臨む、新しいギリシャ悲劇『オイディプスREXXX』

古今東西で何世紀にもわたり上演され続けているギリシャ悲劇『オイディプス王』。知らなかったこととはいえ、父を殺し、国を乗っ取り、母と結ばれるという難役である王は、ベテラン俳優が演じることがほとんどだ。しかし、演出家・杉原邦生は若さゆえの向こう見ずな王を創り出したいと、あえて若手俳優を、しかも歌舞伎界から中村橋之助を王に選んだ。2018年12月、まったく新しいギリシャ悲劇『オイディプスREXXX(オイディプスレックス)』の幕が開く。(取材・文/湊屋一子、撮影/藤田亜弓)

INTERVIEW & SPECIAL 2018 12/8 UPDATE

王としての気品と若さを兼ね備えた
リアルなオイディプス王を創りたい

主宰する劇団「KUNIO」だけでなく、古典歌舞伎を独自の解釈で再構築する木ノ下歌舞伎の演出でも知られる杉原邦生にとって、中村橋之助を今回主役に迎えるのは、ごく自然の流れであった。

「先王が誰かに殺されて混乱する国を救った英雄で、先王の妻と結婚したオイディプスですが、もちろんベテランの俳優さんの創るオイディプスも面白いけれど、僕は王妃と本当の親子ぐらいの年齢の若い俳優が演じたら、また違ったものが出てくると思っていました。若さゆえの浅はかさ、衝動の結果、落ちていく青年としての王を描いてみたかった。しかしやはりそこは王ですから、誰でもいいというわけではない。高貴な生まれの王としての気品を兼ね備えている…と考えていたとき、歌舞伎俳優なら!と思い付いたんです。襲名披露以降、舞台の上の橋之助くんから、自分の家と名前を継いでいくことへの覚悟と強い意志が見える気がしていたんです。だから、いまの彼にぜひお願いしたいなと。それに、橋之助くんは僕が演出を手がけた木ノ下歌舞伎『勧進帳』を観に来てくれていて、『面白かった』と言ってくれていたらしいというのを、人づてに聞いていたので、興味を持ってくれるんじゃないかなと思い、オファーしました。こうして一緒に仕事ができることになってとても嬉しいです。」

一方、オファーをされた側の中村橋之助にとって、この『オイディプスREXXX』は、初めて出演する歌舞伎以外の演劇作品となる。

「もともと歌舞伎以外の、映画やテレビ、舞台も大好きでよく観ていました。中でもやっぱり舞台は一番好きなので、今回、杉原さんに声をかけていただいて、しかもこんなに大きな役をいただいて、とても光栄です。最初はどうしていいかわからなかったのですが、南 果歩さんに『稽古場は恥をかくところ』と言っていただいて、その通りだと気が楽になりました。今まで歌舞伎でやってきたこととは逆というか、ダメと言われていたことをやるのが難しいです。例えば歌舞伎なら自分以外の人が言うセリフに対して、心が動いてもそれを表に出さずに控えていて、セリフを言っている人を立てる。でもこちらでは、相手の言葉をリアルに受け止めていい。“表現”というより、自然に出るものを見せる。みんなでディスカッションしながら芝居を創っていくというのも初めてなので、毎日が驚きの連続です」

慣れないことばかりで、とにかくわからないことは聞くようにしているという橋之助。その吸収の早さに、杉原は想像以上の手応えを感じている。

「稽古を観ていると、橋之助くんの『挑戦したい!変わりたい!』という気持ちがひしひし伝わってきます。歌舞伎との違いに戸惑うだろうなということは、最初から想定していたのですが、橋之助くんは僕が思った以上にその変化への対応が早い! 新しい自分を見つけたいと全力でぶつかっているのがよくわかりますし、その変化が毎日楽しみです。でも僕は今まで培ってきたものを全て捨てて生まれ変わってほしいわけじゃないんです。新しいやり方と、すでに自分の中にあるものとをまぜて合わせて、いい反応を創り出してほしい。本番で、橋之助くんがどんなオイディプス王を見せてくれるのか、僕自身もすごく楽しみですね」

この『オイディプスREXXX』を皮切りに、縁があればどんどん歌舞伎以外の作品にも挑戦していきたいという橋之助。

「最終的な僕の目標は、父のような俳優になることです。そこに至るためにも、一番身近で輝いている勘九郎の兄みたいになりたい。勘九郎の兄は、『目標を決めるとそこまでしか行けないから、目標は定めない』と言っていましたが、僕は少しずつ目標を決めて、そこを目指していって、また次に進んでいくタイプだと思います。勘九郎の兄は他のジャンルの芝居にたくさん出て、また歌舞伎にいろんな引き出しを持って帰ってくる。もちろん他の作品に出ることは、全部が歌舞伎のためじゃなくて、歌舞伎のことが他のジャンルで、他のジャンルでのことが歌舞伎で、より良いものを創るのにどちらにも役立つ経験です。今は何より『初めまして』って集まった人たちがお稽古場でいろいろ試行錯誤して、みんなで汗をかいてチームになっていく感じがとても楽しい。全方位から観られる劇場も初めての経験ですし、ワクワクすることだらけです」

そんな橋之助に「次は現代口語の会話劇とか、すごい悪役とかをやってもらいたい」と、早くも次のアイディアが浮かんでいるらしい杉原。時代を超えて上演され続ける名作を通して、彼杉原が観客に見せたいものとは何か。想像以上の急成長を見せる橋之助に、今こそ上演すべき“伝説の王”の魂が宿る。

中村橋之助(なかむら・はしのすけ)
1995年生まれ、東京都出身。屋号成駒屋。八代目中村芝翫の長男。祖父は七代目中村芝翫。00年九月歌舞伎座『京鹿子娘道成寺』所化、『菊晴勢若駒』春駒の童で初代中村国生を名乗り初舞台。近年は、15年三月国立劇場『梅雨小袖昔八丈』下剃勝奴、四・五月平成中村座『極付幡随長兵衛』極楽十三、『勧進帳』亀井六郎、八月歌舞伎座『逆櫓』日吉丸又六などを演じる。16年『十月大歌舞伎』『吉例顔見世大歌舞伎』にて四代目中村橋之助を襲名。本作が歌舞伎以外の演劇作品には初出演となる。

杉原邦生(すぎはら・くにお)
1982年生まれ。演出家・舞台美術家。KUNIO主宰。国内外の骨太な戯曲の本質を浮き彫りにしてみせると同時に、観客の予測を裏切るような挑発的な仕掛けや、ポップでダイナミックでありながらも繊細な演出が特長。KUNIOでの主な作品には『エンジェルス・イン・アメリカ』第一部・第二部の連続上演や、“Q1”バージョンを新訳で上演した『ハムレット』などがある。近年の演出作品は、木ノ下歌舞伎『三番叟』、『東海道四谷怪談-通し上演-』、『勧進帳』、『黒塚』、東京芸術劇場+ホリプロ『池袋ウエストゲートパークSONG&DANCE』、八月納涼歌舞伎『東海道中膝栗毛』(構成)など。KAAT神奈川芸術劇場プロデュース公演は、2016年上演の『ルーツ』(脚本:松井周)に続き二作品目となる。

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『オイディプスREXXX(オイディプスレックス)』
2018年12月12日(水)~24日(月・休) KAAT神奈川芸術劇場<大スタジオ>
作:ソポクレス
翻訳:河合祥一郎(「オイディプス王」光文社古典新訳文庫)
演出:杉原邦生(KUNIO)
出演:中村橋之助、南 果歩、宮崎吐夢、
大久保祥太郎、山口航太、箱田暁史、新名基浩、山森大輔、立和名真大

~演出家メッセージ~
これまで数々のベテラン俳優によって演じられてきたオイディプス王を、僕は“ひとりの青年”として描き出したいと考えています。地位と権力を得た若き王は、その未熟さゆえに周囲が見えなくなり、意見の食い違う者を責め立て、身近な人の助言も聞き入れず、一瞬にして自ら破滅への路を辿っていきます。おのれの才覚、地位を振りかざすその姿は、コンプレックスをひた隠そうと必死に足掻く、哀れで悲しいひとりの人間です。そんな揺れ動く青年・オイディプスこそが、この物語で描かれている王の姿なのだと僕は確信しています。
また、今回の演出では、コロス(古代ギリシャ劇の合唱隊)以外の8役をオイディプス王、イオカステ(オイディプス王の妻)、クレオン(イオカステの弟)を演じる3名の俳優が演じ分けます。これは、この作品が初演された当時(紀元前427年頃)の上演形式に則ったスタイルです。演劇的な仕掛けの中で観客とともにPLAY=遊びながら、“悲劇”の原点を生々しく、かつスタイリッシュにいまへ現出させたいと考えています。


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