インタビュー & 特集
『PHOTOGRAPH 51』宮崎秋人さん「自分にハードルを課して、1段も2段もステップアップしたい」
DNAの二重螺旋構造を写真に収めることに成功した女性研究者ロザリンド・フランクリンの姿を描く、『PHOTOGRAPH 51』。2015年イギリス・ウェストエンドの上演に続き、2018年4月、日本でも上演されます。6人というミニマムなキャストで密度の濃い芝居が展開される作品で、男性陣の中で一番若いジェームス・ワトソンを演じるのは、宮崎秋人さん。『男水!』『弱虫ペダル』など舞台でも映像でも活躍中の宮崎さんにとって、この舞台は新たな挑戦だそう。その意気込みを聞きました。(文/金井まゆみ、撮影/笹井タカマサ)
INTERVIEW & SPECIAL 2018 1/13 UPDATE
——『PHOTOGRAPH 51』に出演が決まって、どんな気持ちでした?
うれしい気持ちはもちろんありましたけど、「大丈夫かな」という不安はありましたし、今もあります。カンパニーの中で自分が一番年下、っていう状況も初めてなんですよ。すごい方々ばかりですし、先輩方の「胸を借りよう」というより、「足を引っ張らないようにしなきゃ」という気持ちが強いですね。
——ミュージカル『薄桜鬼』で共演していた矢崎広さんが一緒なのは心強いのでは?
むしろ、すごくドキドキしてます。久しぶりの共演なので、その間に自分がどれだけ成長できたのか……。広くんは『薄桜鬼』で一緒だった仲間と「(矢崎さんを)追い抜いてやりたいよな」なんて話すけど、どんどん前を歩き続けていくから、追い抜くどころか追いつくにもまだまだですね。隙がないというか、今のところ弱点が見当たらないし、観ている人を惹きつける力がすごい。いつも「素敵だな」って思う先輩なんです。
——他のキャストのみなさんは今回初共演ですね。どんな印象を持っていますか?
板谷由夏さんは映像で拝見していて、芯の強い女性像が似合う印象があります。でもお茶目な部分やかわいらしい部分も持ってらっしゃるので、どういうバランスでロザリンドを演じるのか楽しみです。
神尾佑さんは以前お世話になった(演出家の)岡村俊一さんの忘年会でお会いして、ご挨拶させていただいたんです。「かっこいいなぁ……!」っていうのが第一印象で(照笑)。タッパ(身長)もあるし、いるだけで場面が成立する存在感がある。今回のカンパニーでも抜群に存在感を発揮されるだろうし、あの男らしさは「ぜひ今回勉強させていただきたいな」って思いました。
橋本淳さんは舞台で何度か拝見していて、すごくナチュラルなのに馬力はしっかりある役者さん、っていう印象です。あと個人的には、母親が『魔法戦隊マジレンジャー』(2005〜2006年放送)の頃から橋本さんが好きだったらしくて。だから今回の共演は、親孝行ですね。きっと母親も楽しみに観に来ると思いますし、仲よくなったら自慢もできる(笑)。
中村亀鶴さんは、まったく違うフィールド(歌舞伎)で活躍されている方ですし、どういう色をこの作品に加えてくださるのか今から楽しみにしています。
——ご自分が演じるジェームス・ワトソンのイメージは?
出演が決まる前、演出のサラナ(・ラパイン)さんと面談があったんです。その時に直訳の戯曲を読ませていただいて、「どの役をやりたいと思った?」と聞かれました。今までの自分だったら、親しみやすいレイ・ゴスリング(今回、矢崎広さんが演じる)を挙げたのではないかと思います。これまで培ってきたもので勝負しやすそうな印象なので。でも今回は自分にハードルを課して、1段も2段もステップアップしたいと思った。だから「ワトソンがやりたいです」って答えました。直訳と最終的な上演用の台本では違いも出てくるでしょうけど、ワトソンはみんなをひっかき回していくトラブルメーカー、という印象。自分がどれだけのパワーを発揮できるかで、物語のうねり方も違ってくる。とても重要な役割をはたす存在だし、だからこそ自分にとって大きな挑戦になると思います。
——初めて海外の方に演出を受けることになりますね。サラナさんにお会いしてみて、どんなことを感じましたか?
すごくパワーがあって、明るい方でした。通訳さんはついてくださるけど、日本語と英語の壁があるなかでお芝居を演出するって、どういうふうにするのか僕も気になったので聞いてみたんです。そうしたら「どうにかなる!」って、全然気にしていない答えで(笑)。サラナさんの懐の深さを信じることにしました。広くんは何度も海外の演出家さんと舞台をやっているから、今回は頼らせてもらおうかなと思っています。僕は意地っ張りなので素直には甘えられないだろうけど(笑)。本稽古が始まるのが楽しみですね。
——最近の宮崎さんは、『弱虫ペダル』(BSスカパー!)など映像での活躍も増えましたね。
『弱虫ペダル』の撮影では、『薄桜鬼』で僕がやっていた役(永倉新八)を今やっている福山翔大と一緒だったんです。彼が、一緒にモニターチェックをしていた時に「秋人くん、舞台もいいけど映像も向いてるよね」って言ったんですよ。自分としては特にそんなつもりはなかったので「なんで?」って聞き返したら、「カメラの前にいるだけでも成立するからいいよね」って。僕は翔大の方が映像向きなタイプだと思っていたので、その翔大にそう言ってもらえてドキッとしました。自分は思ってもいなかったけど、そういうふうに見てくれる人もいる。ひとりの役者として本当にうれしい言葉をもらったし、もっと映像での演技を追求してみたいな、とも思いました。
——舞台と映像、両方で活躍できたら素敵ですよね。
両方がんばりたいですね。これまで映像にも興味はあったけど、1〜2日で現場が終わってしまう作品が多かったので、まだ楽しさを感じられずにいたんです。でも『男水!』(日本テレビ)や『弱虫ペダル』ではじっくり関わることができて、「作品創りをしている」と実感できました。でも映像をやればやるほど、心の中で「舞台をやりたい!」と思っている自分もいて。舞台は2時間くらいで、最初から最後まで1本筋が通っている。お客さんの前で、生で芝居をしているから、誰に対してお芝居をしているのかが明確だし、反応もダイレクトに伝わってくる。本当に素敵な環境だな、って改めて思いました。映像だと汗かくシーンでなければ汗をかいたら拭かれてしまうけど、舞台上では綺麗にいなくていい。汗をかいてもそれがその場でのリアル。舞台の上では、誰も自分に手出しできない。そこにやりがいを感じます。「自分は舞台が本当に好きなんだな」と実感しています。
——その舞台への想いを、今後出演される舞台、そして『PHOTOGRAPH 51』に注ぎ込んでくださるのを楽しみにしています。
ジェームス・ワトソンは僕にとって、これまでに演じたことのないタイプの役。20代後半になった宮崎秋人が大人になっていく、第一歩の役として新しい道を切り拓きたいと思っています。ぜひ、楽しみにしていただけたらうれしいです。
【作品情報】
『PHOTOGRAPH 51』
作:アナ・ジーグラ
演出:サラナ・ラパイン
出演:板谷由夏、神尾佑、矢崎広、橋本淳、宮崎秋人、中村亀鶴
東京公演:2018年4月6日〜22日 東京芸術劇場 シアターウエスト
大阪公演:2018年4月25日〜26日 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ