インタビュー & 特集

少年たちの心の旅を追った作品『はみだしっ子』公演レポート

三原順原作の少女漫画『はみだしっ子』が劇団スタジオライフによって舞台化。11月5日、大盛況のうちに千秋楽を迎えました。その公演レポートが届きましたので、ご紹介します!

INTERVIEW & SPECIAL 2017 11/5 UPDATE

男優劇団スタジオライフが三原順原作の『はみだしっ子』を初舞台化。10月20日に東京芸術劇場シアター ウエストにて開幕した(公演は11月5日まで)。 『はみだしっ子』は1975年に少女漫画雑誌「花とゆめ」に連載され、熱狂的なブームを巻き起こした作品。 親に見捨てられて、この世の「はみだしっ子」となった4人の少年たち、グレアム、アンジー、サーニン、 マックスがいつの間にか身を寄せ合い、旅をする中で愛を探し求める姿を描く。 ステージ上には、街灯がただ一つ。今作の公演ビジュアルに使われている、三原自身が描いた街灯を忠実 に再現している。階段状になっているシンプルでモノトーンな舞台(舞台美術:乘峯雅寛)に照明が当た ると、4人の少年たちの姿が浮かび上がる。少年たちは「恋人」を待っているという。子猫たちが可愛がっ て連れていってくれる「恋人」を待っているのと同じように……。孤独な少年たちの内面が浮かび上が !る、印象的な幕開きだ。

スタジオライフが三原作品を取り上げるのは2001年の『Sons』に次いで2作品目。脚本・演出を担当する倉田淳が『はみだしっ子』 の舞台化を『Sons』上演時から熱望し、今回の上演となった。本作では、原作漫画の最初の部分にあたる「動物園のオリの中」「だ から旗ふるの」「階段のむこうには…」をストーリーの中心に据える。少年たちがときにぶつかり、ときにはつながり合いなが ら、思いを重ねていく様子をきめ細かく描く。 現在、漫画原作の舞台は「2.5次元舞台」と呼ばれ、数多く上演されている。スタジオライフは1996年に萩尾望都の『トーマの心臓』 を舞台化して以来、『訪問者』『11人いる!』(萩尾望都)、『OZ』(樹なつみ)『月の子』(清水玲子)『アドルフに告ぐ』(手 塚治虫)などを上演する、いわば漫画原作舞台における日本のパイオニアだ。倉田が原作で心を鷲掴みにされた部分をお客様と共 有したいということが、スタジオライフでの上演の出発点にある。だからこそビジュアルを再現するだけでなく、登場人物たちの 心情に焦点を当てて、繊細にドラマを紡ぎ出すことに力を注ぐ。キャラクターに寄り添い、それぞれの関係性によって生み出される 様!々な光と影を表現することで、新たな感動を生み出すことができるのだ。

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舞台版『はみだしっ子』ではなぜ少年たちが身を寄せ合っているのか、彼らの過去を丁寧に取り上げた。グレアムは父親から高圧的 に扱われ、アンジーは母親に育児放棄される。サーニンは母を亡くし父親により監禁され、マックスは父親に殺されかけた。少年 たちの過去を丹念に描くことによって、彼らの心の孤独が浮き彫りになり、だからこそ互いに身を寄せ合う4人の関係性がはっきり と見えてくる。

原作漫画で印象的なのは、少年たちが語る深遠で思索的な言葉だ。彼ら は決して自分たちを「可哀想でしょう」と憐れもうとしない。クールに 自分たちを突き放して語る言葉が、読者の胸を打つ。通りいっぺんの演 技では表し得ない深さのある言葉を血の通ったものとするために、キャ ストたちが深く役柄と向かい合い、真摯に取り組んだ様子が演技からう かがえた。また、原作漫画では少年たちの視点が貫かれるが、舞台では 大人たちがリアルな息吹で演じられることによって、大人たちの視点か らも物語を見つめ直すことができたのも新たな発見だ。4人の少年たちを 一時的に受け入れるレディ・ローズを演じる曽世海司の演技にはリアリティ があり、グレアムのいとこのエイダを演じる松本慎也がグレアムに対す る複雑な思いをにじませて、ドラマを盛り上げる好演。 愛を求め続ける少年たちの心の旅を追った作品。終幕には、舞台に輝く 街!灯が象徴するように、希望の光が差してくるのが感じられた。

今回は原作の最初の部分の舞台化だが、この続きも舞台化して、連作として上演していけば、スタジオライフの新たな財産となるだ ろう。4人の少年たちの心の旅をこれからも追っていきたい。 なお、劇場ロビーには『はみだしっ子』扉セレクション展を開催。単行本未収録・原画行方不明の絵を中心にセレクトした雑誌掲 載!時の扉絵や雑誌掲載のイラストコラムをパネル展示。当時の雑誌やグッズも展示されている。 (文/大原 薫)

TRKチーム(グレアム:岩﨑 大 アンジー:山本芳樹 サーニン:緒方和也 マックス:田中俊裕)

TBCチーム(グレアム:仲原裕之 アンジー:松本 慎也 サーニン:緒方和也 マックス:伊藤清之(Fresh))

BUSチーム(グレアム:久保優二 アンジー:宇佐見 輝 サーニン:澤井俊輝 マックス:若林健吾)

 


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