インタビュー & 特集

INTERVIEW! 『子午線の祀り』成河さん

『平家物語』を基に、源平の合戦に臨む人々の姿を劇的に哲学的に描いた日本演劇史の金字塔、『子午線の祀り』(しごせんのまつり)。能狂言や歌舞伎から現代劇まで多彩な演者が集結して上演を重ねてきた本作が今年、新たな姿で復活する。1999年、2004年に続いて野村萬斎が演じる平 知盛と相対する源 義経役として、成河が初登場を果たす!(文/高橋彩子、撮影/本多晃、ヘアメイク/山下由花、スタイリング/市川みどり)

INTERVIEW & SPECIAL 2017 5/30 UPDATE

104出会うべくして出会った、とんでもない作品
自分の演劇人生の謎が解けていくのではないか

――名作『子午線の祀り』に初出演。今、どのようなことをお感じですか?
 この作品を僕は知らなかったのですが、自分なりに戯曲を読んだり調べたりするうち、とんでもない作品だ、無知って罪だな、と思って。合戦の話の途中に“読み手”による月の話が挟まれ、視点がわーっと俯瞰になるところは鳥肌が立ちますし、伝統芸能と現代演劇の人達が火花を散らし、こんなに演劇的な世界に辿り着いていたという事実にも興奮しました。僕達の世代は、ミュージカルならミュージカル、台詞劇なら台詞劇……と、それぞれの畑が蛸壺化していて、外に出て戦うことをあまりしないんですよね。自分の最近の問題意識とも重なるので、これをやらずして何も語れないと感じました。
――近年、ストレートプレイだけでなくダンス色の強い『100万回生きたねこ』やミュージカル『グランドホテル』『エリザベート』など、越境的に出演されてきた成河さんですものね。
 僕は2000年に大学で演劇を始め、唐十郎さんの紅テントに憧れたり、野田秀樹さんのコピーのような芝居を作ったりしていました。その一方で、平田オリザさんが現代演劇に大きな変化をもたらした時代でもあり、さらにチェルフィッチュなど、また少し違う演劇が生まれる中、僕自身はつかこうへいさんが好きで劇団に参加し……。様々な演劇を経験したけれど、要はそれらが自分の中で別物にならなかったんです。どれも“演劇”だし、重なる部分は絶対にあるはず。僕はそれを見つけて、色を濃く深くしたいんですよ。
149――今回演じる義経役は、過去に狂言師の野村万作さん、歌舞伎俳優の市川右近(現・右團次)さんや嵐広也さんが演じた役。“和物”なので動きも自ずと変わるのではないでしょうか?
 そうですね。ただ僕は、身体を規定するのは言葉だと思うんです。「思うのでー」と言う身体と、「思うんだよね!」と言う身体は違いますよね。だから言葉から入るのが近道。今は、右近さんの台詞の録音を毎日聴いています。それをそのままやるわけではありませんが、一刻も早く滑らかに喋れるようにした上で、強い表現にしたくて。『平家物語』を原文で、辞書を引きながら読み始めてもいます。難しくて読めないですけど、何もせずにはいられない性分なので、自分がどれだけ知らず読めないかを知り、作品との距離を少しでも縮めたいんです。
――「群読」という独自のスタイルもこの作品の特長です。コロス的な役割も担うものなので、いわば演劇の原点と言えそうですよね。
 それがどういうものか僕にはまだよくわかっていませんが、僕は宮城聰さんのク・ナウカを観て本格的に演劇をやっていこうと思い、そこから鈴木忠志さんを知るという遡り方をしました。そうした演劇や、俳優がずらりと並んで台詞を言う第三舞台などにとっての“源流”を、今回知ることができる気がしていて。亜流が悪くて源流が良いということではなく、それを学ぶことで自分の演劇人生の謎が解けていくのではないかと期待しています。

※このインタビューの続きは、雑誌『omoshii mag vol.10』 でお読みいただけます。
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042成河(そんは)
1981年生まれ、東京都出身。大学時代から演劇を始め、これまでさまざまな舞台、テレビ、映画に出演。近年の舞台出演作に『100万回生きたねこ』『スポケーンの左手』『グランドホテル』『エリザベート』『わたしは真悟』など多数。6月12日まで劇団☆新感線『髑髏城の七人』 Season花に出演中。4月21日公開のディズニー実写映画『美女と野獣』ではルミエール役で初の吹替えをしている。7月『子午線の祀り』に続いて、9月より『人間風車』主演も決まっている。第63回文化庁芸術祭演劇部門新人賞、第18回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。

『子午線の祀り』
2017年7月1日(土)~23日(日)世田谷パブリックシアター
作:木下順二
演出:野村萬斎
音楽:武満徹
出演:野村萬斎、成河、河原崎國太郎、今井朋彦、村田雄浩、若村麻由美 ほか
※詳細はhttps://setagaya-pt.jp/をご覧ください。

劇作家・木下順二が1978年に発表、79年に初演。『平家物語』を題材に、寿永3年(1184年)から元暦2年(1185年)までの源平の合戦の模様を、宇宙的な視点も交えながら描く。一の谷の合戦で源義経(成河)らの奇襲を受けて逃亡した平家の大将軍、新中納言知盛(野村萬斎)は、愛する女性で巫女の影身(若村麻由美)を使者に、和平を計ろうとするのだが……。伝統芸能から現代劇まで様々なジャンルの俳優達が加わって日本語の美しさを追究する独自のスタイル“群読”は必聴だ。また、今回は野村萬斎が初めて演出も手掛け、古今東西のスタイルを織り交ぜることも構想しているという。演劇史に輝く名作の新たな姿に注目したい。

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