インタビュー & 特集

INTERVIEW! ミュージカル『ミス・サイゴン』ダイアモンド✡ユカイさん

ブロードウェイでも来年の上演が決定し、最新の映像技術で収録された「25周年記念公演 in ロンドン」が映画館で公開されることでも話題の、ミュージカル『ミス・サイゴン』。1992年日本初演、2012年の新演出版からはさらにリアルかつ緻密な描写で新たな感動を呼び、今年2年ぶりの上演が注目を集めています。今回オーディションで念願の役を勝ち取ったのが、本格的なミュージカルには初挑戦となるダイアモンド✡ユカイさん。生きることに貪欲なキャバレーの経営者エンジニア役を、“ロック魂”で演じ切ります。(取材・文/小野寺亜紀)

INTERVIEW & SPECIAL 2016 9/28 UPDATE

IMG_3995_2ミュージシャンとして活躍しながら、国内外の監督が手掛ける映画、ドラマ、舞台にも出演。幅広いキャリアを持つダイアモンド✡ユカイさんは、密かにミュージカルの世界に憧れていたと言います。

「『ミス・サイゴン』は本田美奈子.さんが出演されていた初演時から興味はあったけど、当時の俺は『全米ナンバーワンを目指したい!』なんて思っていたロックンローラーだったから(笑)、ミュージカルに憧れてはいたけど別世界でした。『ミス・サイゴン』は2年前にようやく観る機会があり、雷に打たれたような衝撃がありました。振り返ると自分の憧れた“ロックが一番熱かった時代”が、ちょうどこのベトナム戦争の時代なんですよ。それに俺のおふくろが、太平洋戦争などを経験した世代で悲惨な話を聞いてたから、『ミス・サイゴン』を観ながらおふくろの色んな言葉が頭の中で渦巻いた。戦争の中で打ちひしがれていくストーリーと、どこを切り取ってもすごい音楽にどんどん惹きこまれました」

特にエンジニアがキャデラックに乗って派手に歌う「アメリカン・ドリーム」のナンバーに驚愕。

「『なんだこれは!』『俺がここにいる!』と思っちゃいましたね(笑)。エンジニアは一見どうしようもない男だけど、彼の人生がきちんと描かれていて、観ているうちに『この役はダイアモンド✡ユカイそのものじゃないか』と思った。作品の中で言っていることはロックだなと。今まで30年間ロックをやってきた中で表現したいものが、このミュージカルの中に詰まっていました。第一にこの曲を歌いたいなーと強く思ったんですよ。オーディションがあると聞き、やりたいけどできるかなという葛藤もありましたけど、50歳過ぎても挑戦することに意味があると思ってね。オーディションでは一番ダンスに苦労しました。ミュージカルをやっている人にしたら大した踊りじゃないだろうけど、俺には未知の世界(笑)。無事に受かったからここ(ポスターを指さして)にいますが!」

エンジニア役は、初演より務め上げ今回がファイナルとなる市村正親さん、2年前にこの役をつかみ今年第41回菊田一夫演劇賞を受賞した駒田一さんとのトリプルキャストとなります。

「市村さんは“ザ・エンジニア”“トップ・オブ・ザ・ミュージカル”みたいな方じゃないですか。駒田さんも経験豊富でいぶし銀の輝きがあり、その中で俺ですからね(笑)。だけどしっかり食らいついていきたいし、ダイアモンド✡ユカイにしかできない何かを絶対見つけて、『アメリカン・ドリーム』を歌い倒したいです。市村さんが一番最初に、『ユカイちゃんはさ、雰囲気がいいから』と言って下さって。それしか言いようがなかったんだと思うけど(笑)、その言葉が今一番役作りのヒントになってる。そうだよな、20年以上もこの役を演じている人と同じことはできないけど、エンジニア自体は自分にものすごく近い存在だから、そういった雰囲気をベースに作り上げていこうかなと思ってます。駒田さんは年齢も近いし一番仲がよくて、『ミュージカルはカウントで全部区切られてるんですよ』とか、一から色々教えてくれてます」

稽古に入った今、日本でも1992年初演より愛される『ミス・サイゴン』の奥深さに、ミュージシャンの立場からも感銘を受けています。

「『ミス・サイゴン』がすごいのは、まず稽古でみんな集まってベトナム戦争の勉強をするんですよ。“ミス・サイゴン・スクール”っていうんですけど、ベトナム戦争はどんな戦争だったか、色々ディスカッションもします。そこからさらにナンバーをピアノ一つで歌っていくんですけど、まだ演技をしていない段階で聴いてるだけで泣けてくる。音楽が素晴らしい、美しいんだよね。これで芝居がついたら、感動なんてもんじゃないよ。(『レ・ミゼラブル』を生んだ)クロード=ミッシェル・シェーンベルクの音楽は本当によくできている。メロディは個々のキャラクターによく合っていて、また一曲の中に同じ詞が何度も歌われて印象に残りますね。『ブイ・ドイ』も涙が出ますね、ゴスペルを基調にしているし。実はエルビス・プレスリーがゴスペルにすごい影響を受けてて、ゴスペルソングのレコードも出してるんですよ。そのプレスリーのフレーズに近いメロディも出てくる。それに俺、昔憧れていたオペラがあって世が世ならオペラを歌いたいという思いが強いんですけど、『ミス・サイゴン』はオペラに匹敵するぐらいよくできた音楽だと思います」

運命的な出会いを果たし作品の世界に心酔しているユカイさんからは、熱い言葉が溢れ出てきます。まさにキャリアの大きな転機となりそうです。

「自分の人生の中でも一大転機ですね。世の中には『ダイアモンド✡ユカイは何ものなんだ?』と思っている人がいっぱいいると思うんですよ。デビューしたときはロックミュージシャン、それがいきなりバラエティーの世界にも出てきて。その頃は色々叩かれましたよ(笑)。でもその仕事も俺にとっては本気だった、転機の一つだったと言えます。この『ミス・サイゴン』も自分の人生にとって大きな意味があるのは間違いないです。歌で表現できる喜びを感じているし、この作品に賭けてます!自分が作り上げたもの、過去のものはゼロなんだという気持ちで、『ミス・サイゴン』だからこそ自分のできるものがあると信じ、突き進んでいきたいですね。ロックなエンジニアを表現したいと思います!」

【データ】
ミュージカル『ミス・サイゴン』

オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
作:アラン・ブーブリル/クロード=ミッシェル・シェーンベルク
出演:市村正親/駒田一/ダイアモンド✡ユカイ(交互出演、以下同)、笹本玲奈/昆夏美/キム・スハ、上野哲也/小野田龍之介、上原理生/パク・ソンファン、知念里奈/三森千愛、藤岡正明/神田恭兵、池谷祐子/中野加奈子、他

◆プレビュー公演
10月15日(土)~18日(火) 帝国劇場
◆東京公演
10月19日(水)~11月23日(水・祝) 帝国劇場
◆岩手公演
12月10日(土)~12月11日(日) 岩手県民会館 大ホール
◆鹿児島公演
12月17日(土)~12月18日(日) 鹿児島市民文化ホール(第1)
◆福岡公演
12月23日(金・祝)~12月25日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
◆大阪公演
12月30日(金)~2017年1月15日(日) 梅田芸術劇場メインホール
◆名古屋公演
2017年1月19日(木)~1月22日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール

公式HP http://www.tohostage.com/miss_saigon/

 

 

 


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