インタビュー & 特集

SPECIAL! スタジオライフ 上演20周年『トーマの心臓』公演レポート

劇団スタジオライフが、1996年に萩尾望都の名作『トーマの心臓』を初めて舞台化してから、2016年で20年。上演20周年を記念した萩尾望都作品連鎖公演『トーマの心臓』『訪問者』『湖畔にて』が現在上演中です。2月24日に9度目の初日を迎えた『トーマの心臓』の初日の様子をお届けします。
(撮影/桜井隆幸 文/Yukari Watanabe)

INTERVIEW & SPECIAL 2016 3/7 UPDATE

 劇団スタジオライフは『トーマの心臓』を1996年に初演。2000~2001年の公演では、『トーマの心臓』と、主人公の1人・オスカーの生い立ちを描く『訪問者』の2作品を交互に上演する連鎖公演を実現するなど、繰り返し上演してきました。今ではスタジオライフの代表作にして、アイデンティティと言われる程に成長を遂げてきました。

20年の間に、主演を務めたキャスト数名がこの舞台を卒業し、若い世代に役を繋いでいますが、20周年にあたる今回の公演では、アニバーサリーキャストに新しいキャストを加えた形で、懐かしくて新しい、けれども変わることのない『トーマの心臓』の世界を作り上げています。さらに一部の回で『トーマの心臓』上演後に『湖畔にて‐エーリク 十四と半分の年の夏』のリーディング企画も開催。より深く登場人物にアプローチし、原作者 萩尾望都さんの描く「愛」と「赦し」を感じることができる舞台となりました。

<STORY>

舞台は、ドイツのシュロッターベッツにあるギムナジウム(高等中学校)。冬の終わりの土曜日の朝、1人の少年が自殺した。彼の名はトーマ・ヴェルナー。そして、月曜日の朝、1通の手紙がユリスモールの元に届く。「これがぼくの愛 これがぼくの心臓の音」。それはトーマからの遺書だった。動揺するユリスモールと見守るオスカーの前に、転入生・エーリクが現れる。彼はトーマに生き写しだった−−。

*・**・**・*・**・**

97年の再演以来、7度目となるユリスモールを演じる山本芳樹さん。この役を抜きにして、彼の役者人生を語ることはできないと思える程、ユリスモールとして呼吸し、苦悩しながら光を見出していく様を繊細に演じます。そのユリスモールの理解者で、彼を見守るオスカーを13年ぶりに演じるのは笠原浩夫さん。おおらかな友愛に満ちた愛情は、死んだも同然に生きる力を失ったユリスモールに生命力を与え、観客にも安堵感を与える効果をもたらします。5年ぶりのエーリクに松本慎也さん、まっすぐに自分の気持ちをぶつけていく天真爛漫さには、天使の翼が見えるような救いを感じました。

石飛幸治さんが演じるレドヴィは、トーマの詩を見つけ真実を悟りますが、彼もまたユリスモールに光を与える役目を担う重要なメッセンジャーであることを、強く感じさせてくれます。バッカス役の曽世海司さんは、お茶会を開催しながら生徒の動向を察知する懐の深い上級生を生き生きと演じています。シュバルツ役の楢原秀佳さんの、愛する者を失った悲しみを乗り越え、エーリクに歩み寄り話しかける言葉は、静かな風のような優しさを運んできます。そしてトーマの父ヴェルナー役の倉本徹さん(意外にも本作に初参加)と、ヴェルナー夫人役の久保優二さん。トーマに一身に愛情を注いできた両親の無償の愛が伝わり、感動を呼びました。また久保さんは、連鎖公演の『訪問者』ではオスカーの少年時代を演じています。通常、若手劇団員が演じる寄宿舎の5人組に、過去に主演経験もある青木隆敏さん、関戸博一さんが参加。それぞれイグー、ヘルベルトを演じることにより、緊張感漂う舞台の空気を和らげ、『トーマ』の世界に厚みを与えました。また、前公演でオスカーを演じた仲原裕之さんが、本公演では残酷な匂いを漂よわせつつ、悪魔的な魅力を放つサイフリートに挑んでいます。

脚本・演出の倉田淳さんは、上演によせて、「時は過ぎてゆき、命は尽きてゆくという現実があるのだなと感慨深く思います。そしなお一層『トーマの心臓』『訪問者』『湖畔にて』の物語の中の人々の言葉が心に沁みます」(パンフレット挨拶文より引用)と書き記しています。そこに、この珠玉の作品の普遍のテーマがあることを実感しました。

劇団スタジオライフ『トーマの心臓』『訪問者』『湖畔にて』萩尾望都作品連鎖公演は、シアターサンモールにて、3月13日まで上演中。

公演情報

2月24日(水)~3月13日(日)新宿シアターサンモール
問い合わせ:劇団スタジオライフ 03-5929-7039
公式HP  http://www.studio-life.com

 


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