インタビュー & 特集

「劇的な言葉・心情に出会って、僕はここにいる」松岡広大インタビュー

今年、俳優活動10周年を迎えた松岡広大。舞台では、10代で、主演舞台ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』で海外公演を経験し、二十歳で劇団☆新感線『髑髏城の七人』season月 下弦の月に出演。『恐るべき子供たち』『スリル・ミー』など、数々の作品に出演。ドラマや映画でも活躍し、今、主演ドラマ『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』が放送中だ。そんな松岡に、舞台を中心に、この10年間を振り返ってもらった。(撮影/増田慶 文/臼井祥子)

INTERVIEW & SPECIAL 2022 11/21 UPDATE

●デビュー10周年と『松岡広大 10周年アニバーサリーブック-再会-』発売、おめでとうございます。デビューは『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012〜2013年)ということですが。

ありがとうございます。事務所に入ったのが2009年。それから2、3年は芝居の仕事をしてなくて、ずっとレッスンにだけ行っていました。だから何にもつながっていない感じがして、苦しい時期が続いていて…やっとオーディションで合格したのが『ゴーバスターズ』。それまで悔しい期間があったから、純粋な喜びより、緊張と不安が大きかったです。周りが仕事をしていることへの焦燥感が強かったから、「決まったよ」って人に言う気持ちにはなれなかったです。この本に載っている仕事は抜粋されたものだけど、この10年間でオーディション、100個以上は落ちていると思います。

●そんなに! 『ゴーバスターズ』に続いて、頑張って掴んだ初舞台が『FROGS』(2013年)ですね。

僕はダンスには自信があったというか、ダンスしかやってなかったので、踊りを見せつけようと思っていました。だからすごく牙を剥いていたと思います。五朗さん(岸谷五朗/演出)に細かく指導をいただいて、演劇というものを考える初めての経験になりました。生の舞台って難しいなあと、壁にぶち当たった気がします。

それと、基礎を教えてもらった場でした。本人に学ぶ気があれば何も教えなくても学ぶんですけど、その気持ちがないと何も学べないので。そういう意味で五朗さんにいろんなことを教えていただきました。

●その次の舞台がミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)(2013〜2014年)。主人公のライバル・遠山金太郎役で出演しました。

テニミュは、『FROGS』でしっかりベースを作ってから挑んだ最初の舞台で、自分なりの芝居のやり方、台本の読み方を構築しはじめていたので、それを試す場でした。遠山金太郎が「スーパールーキー」と呼ばれる役だったので、自分もあやかって、前人未到な破天荒なことをやろうと思っていました。そのせいで、当時は事務所の人にもたくさん怒られました、傍若無人すぎて(笑)。僕はそれが正しいと思ってやってみたら、違った。だから頭で考えて、行動に起こして、その結果返ってきたものを自分の中で精査する、という経験ができました。

●そして初の主演舞台、ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』(2015〜2019年)に出演されました。

海外公演があったことに何よりも惹かれました。マカオ、マレーシア、シンガポールに初演で行って、仮設の劇場に立って。プロジェクションマッピングを使ったり、すごく洗練されたこともやっていましたし、18歳で海外に行けるのは、なかなかできることではないだろうなあと思って。昔でいうと『身毒丸』で藤原竜也さんがロンドンで初日を迎えたみたいな感じ。10代で海外公演で異国の地に立って異国の風に吹かれて芝居ができたのはすごく財産になりました。

●主演の重みは感じていました?

重みはありました。臓器が思いきり重力に引っ張られる感覚があって、ちぎれそうになるんですよ。なんというか、怖くて。内臓が自分の肉体と乖離する。下に下に引っ張られる。足取りも 軽やかじゃなくなる。そういう、「主演」という言葉があまりにも重くのしかかっていた時期がありました。

『NARUTO』には長く出演していたのですが、その間に、白井(晃)さんの舞台や劇団☆新感線に出たり、成河さんに出会ってほかの演劇にも目覚めたので、2.5次元という枠組みの舞台とはから一気に自分の世界が広がった時期でした。

●いちばん大きなきっかけになったのは?

劇的な変化は、成河さんの『アドルフに告ぐ』をKAATで観たときです。「ああ、これだな、僕がやりたいのは」と思いました。それまでは、仕事を頂けることがうれしくて、自分の興味がどこにあるかに目を向けていなかったんです。三島由紀夫の文体なのか、シェイクスピアの翻訳劇なのか、みたいな感じで、どこに自分の気持ちがあるのかということに目を向けていなかった。そのことに、あの舞台を観て気づかせてもらったんです。

それで事務所に「こういう演劇をやりたい」と話して、二十歳の時に『髑髏城の七人』season月 下弦の月(2017〜2018年)に出演しました。いろんな舞台を観に行っていて、劇団☆新感線も10代のうちに観ていたんです。そんなすごい舞台に立って、その翌年に白井さん(白井晃/演出)の『恐るべき子供たち』(2019年)。初めてのストレートプレイ作品で、すごく濃かったです。ご一緒したい演出家さんと仕事ができて、二十歳ですごく変わった気がします。

劇団☆新感線は歌舞伎や能、チャンバラの要素も入っていて、日本のエンタメの極地を感じます。これは後から気づいたのですが、映像で見てもいいように立ち位置とかも計算されてるなって。稽古ではいのうえさん(いのうえひでのり/演出)が口立てで「そこ違う、こう、こう」ってやってくださるのですが、その後は俳優が考える。それって愛のあることだし、あらためて、いのうえさんはすごいことを考えているな、劇団☆新感線はすごいことをやっているなと思います。

白井さんはテキストを大事にされる方。リアリズムというか、イギリスの演劇みたいな感じがします。ちゃんと表現するには、俳優の肉体をどうしたらいいのかを考えて、トレーニングを一緒にやってくれる。僕の役どころは、語り部という第三者的な立ち位置と、物語の中に入って芝居をする部分とがあって、行ったり来たりが多かったんです。その語り部的な役どころも大変勉強になりました。

白井さんと一対一で稽古をした時間が何よりも愛おしくて。最近よく世田パブに行って白井さんにお会いするんです。「僕は演劇が本当に大好きで、僕らの世代が頑張ることが使命だと思っているんです」って言ったら、肩をトントンってされて「そうだね。僕もそう思う」って言ってくれて。だからすごく託されている気持ちもありますし、その気持ちに応えたいと言う思いで演劇をやっています。

『迷子の時間-語る室2020-』(2020年)でご一緒したイキウメの前川さん(前川知大/演出)にもこの間、本多劇場でお会いしました。この本を出すにあたって、いろんな方へ挨拶に行ったんです。それであらためて、いろんな演出家さんがいて、それぞれ手法も違うし、どの方向から演劇や社会にアプローチするか、考え方が違うから、面白いんだなあって思いました。僕ももっと勉強が必要だなとも思いました。

『ねじまき鳥クロニクル』(2020年)は海外の演出家さんで、贅沢でした。純粋な創作って本当にフラットじゃないと作れないと思った舞台でもありました。海外のクリエーションは忖度なく、はっきりイエス・ノーを言う潔さがあって、何か二つ選択肢があった時に、どちらかを選ぶとその際に「どちらかを切り捨てた」っていう未練の粟立ちみたいなものがあるんです。それも加味した上で選択する。そういう人って大人だなと思うし、フラットな場だと、それをより強く感じるんです。

一人ひとりが意見を言える環境だったんです。この本に、成河さんが寄せてくださったメッセージにもあるんですけど、僕はこの現場で「できません」と言わなかったんです。それを成河さんは不安に思ってくださっていて、「できないことはあなたの武器になるから」と言ってくださった。できないことも全部ひっくるめて素のままで立てたのが、ねじまきだったと思います。

できないことをやろうとすることは大事なんだけど、できないことをできないって認めることが恥ずかしかったり、自分に手腕がないだけなんじゃないかって卑屈に考えてしまう。でも「できなくても大丈夫よ」っていう、ひらけた考え方になれた気がします。本当にそれが純粋な創作なんだなと。

『迷子の時間-語る室2020-』はみんな仲が良くて、本当に楽しかったです。前川さんが「自由に動いてみて」って委ねてくださった。だから、先にねじまきをやっていて良かったと思いました。「失敗してもいいや」って思えるようになったから。稽古って宝物探しなんですよね。すごくいい時間でした。

●演出家さんによって、すごく丁寧に稽古をつけられる方と、役者さんに委ねる部分が多い方といらっしゃいますよね。

そうですね。どちらにも良いところがあります。どちらも想像力が必要で、どっちも好きです。現場によって違うから、それに対応できる力をつけておきたい。

●そして去年は『スリル・ミー』(2021年)と『ニュージーズ』(2021年)に出演されました。

『スリル・ミー』は実は成河さんに台本を借りて、オーディションを受けました。二人芝居って大好きなんです。演出の栗山民也さんは本当にすごい。僕は栗山さんがニーチェの「ツァラトストラ」だと思っているんです。山崎大輝くんとよく言ってました。「悟りがすごいよね」って。稽古は短くて、集中してグッとやる。最高でした。

『ニュージーズ』は、るろ剣(浪漫活劇「るろうに剣心」2018年)でご一緒した小池さん(小池修一郎)が演出で、小池さんといっぱい話しました。「これ、どうですか」っていっぱい聞きました。翻訳モノをやる時って言葉の意味をすっごく考えないといけないと思うので、とにかくそこに腐心しました。

●ドラマにもたくさん出演されてきました。今、ドラマ『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』に出演されています。

「BLドラマ」ということで認知されていますけど、「壁こじ」自体にはその要素はほぼなくて、プラトニックですし、「BL」という言葉が先行しないようになと気をつけていました。それと同時に、性的マイノリティの方を演じるって覚悟がいることで、その人たちのことをちゃんと考えるということを丁寧にやりました。コメディ要素もあるけど、内面的な事情をえぐり出しているような部分があります。

中尾暢樹さんが演じるアイドルのイッセイ(風間一星)が、僕の演じる猫屋敷守の幼なじみでもあり、推しでもあるんですが、彼に対して「見ていたいけど一定の距離は取りたい」みたいな相反する気持ちを持っているんです。そういう心情を赤裸々に描いています。猫屋敷守は同人誌を描いている子で、創作する人間の葛藤もよく描いている作品だと思います。

●舞台とドラマ、両方出ていらっしゃいますが、今後の展望は?

それを毎日ぐるぐる考えていますが、おそらく片一方に行くことはなくて、両輪でやれたらそれがいちばんかな。舞台には立ち続けたい。栗山さんがよくおっしゃっていたんですが、使っていない感情は枯れていくんだそうです。劇的な言葉・心情に、さまざまな戯曲を通して出会って、僕はここにいるし、言葉の重みをいろんな演出家さんから聞いていました。

でも演劇は演劇で課題はあるし、ドラマにはドラマの面白さがあります。自分のアイデアをいかに瞬発的に出せるかを試される気がしますし、あの軽妙さも好き。だから両方やっていきたいですね。

●2023年の松岡さんはどうなりますか?

僕は抱負を持たないようにしているんです。それだけになって視野が狭くなるのは怖いですし、先が細くなる気がするので、一個一個仕事を吟味して、その都度、自分が今、何に興味を抱いているか考えたいです。だから今後について断言はしません。僕がどういう俳優になるかは、見届けてください!


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