連載
第13回 山田マサルさん
第13回ゲスト「山田マサルのオレ哲学」第3週
連載対談「川本成のオレ哲学」(略してオレ哲)。13回目のゲストは、北海道が誇る新進気鋭の演劇ユニットPaingSoe(パインソー)の主宰で、役者でもあり演出家でもあり、そして現役デザイナーでもある、山田マサルさんです! プロたちは、パインソーの姿に、かつてのシモキタをみた!?
COLUMN 2016 5/20 UPDATE
川本:山田さんは、というかパインソーは、常日頃から、後悔しないような方法にしてるってことですか?
山田:そうですね。これきついよって思うことしかやりたくないっていうか。 「これ、無理でしょ」っていうことをやり続ける というか。やらないと気がすまなくなってきちゃってるんですよ。自分もみんなも。
川本:去年から、東京に進出して、去年は裏・表っていう二つの話を持ってきたわけですけど、その話もまぁ、ぶっとんでて! なんなんだこれは!!と。
山田:はい、とんでもない話でしたね。地球が大洪水になって、二人しか生き残らなくて、その二人がSEXして終わるという(笑)。
川本:ははは。なんちゅう話や!
山田:女子高生と高校生が、水の上で、SEXして終わると。
川本:その女子高生役が43歳ぐらい(笑)。
山田:女子高生といえば、43歳ぐらいの人がやると一番見てて、面白い と(笑)。女子高生が女子高生の役をやったって、つまんないですから。
川本:確かにね(笑)。
山田:そうじゃないと違和感が生まれない。その違和感が見ているうちに飲み込めてきて、だんだんと女子高生に思えてくるのがいいというか。
川本:しかも、女子高生っぽい演技をするわけでもなくて、43歳の女性そのままなんだよね。女子高生の格好をしているだけで。割と低い声で(笑)。「あんたさー」って。
山田:下から響く声で(笑)。
川本:違和感って、面白いですね。
山田:ほんとに面白い。日常にあえて違和感を作るのがいいんですよね。
川本:今、小劇場という、これくらいの規模の箱でやってる団体で、東京に打って出ようっていうのは、珍しくないですか? リスキーでしょ?
山田:そうですね、リスクはありますね。負担のほうが大きいですけど、そこを快楽に変えるのは、むちゃくちゃなことをするしかないんですね。
川本:みんな、持ち出しでしょ?
山田:持ち出し持ち出し。もう持ち出したい!ってくらいになっちゃってる(笑)。
川本:ははは。
山田:やっぱり、僕らは下北沢・東京の演劇を札幌の演劇と対比すると、前はやっぱりそっちに向いてた。東京でこんな面白いお芝居があった、こんな面白い人達がいた、と。東京に打って出るのは、そのずっと見てきた人達と同じ場所に立って芝居ができる時代性というのもあるし、新しいお客さんに、より多くのお客さんに出会いたいっていうのもあった。演劇の震源地である、東京で、急所をつかんでやりたいと思ったんですね。
川本:実際に2回、東京に来てみて、手ごたえはどうですか?
山田:手ごたえは、かなりあって。身に染み渡ることがいっぱいありました。具体的には、自分の中でこれとこれとこれとこれ・・・って特に自分の中でも言えるわけではないんですけど、手ごたえが積み重なってる感じがします。それが次の作品にも生かせるし、もっと東京に来たいと思っています。
川本:今回の舞台に来てくださった関係者とかプロの方が、「昔のシモキタみたい」って言うんですよ。要はシモキタといえど、こういうタイプの舞台が減ってきちゃった。攻撃性があって、むちゃくちゃだと。「大人計画とかも、最初は、こうだったもんね!」ってみんな言うじゃないですか。
山田:そうですね。だから今までは、既存の構築された演劇を壊してきたわけじゃないですか。でも僕らは、もう壊すものがない世界なので、だったら向かうのは「社会」かな、と。社会の違和感を、作品の全面に押し出していくしかないというか。
川本:割とプロが食いつくというか。プロが見に来て、こうした方がいいよって、一概に言えないんですよ、パインソーには。でも荒削りの良さとか忘れかけてた何かとか、失った攻撃性とかがあって、完全に異物が北海道からやってきた感じですよ。
山田:(笑)
川本:体に入れちゃいけないものを、久しぶりに食べた様な気がして。
山田:ああ、なるほど。
川本:知らず知らずのうちに、自分たちは、優しいものばかり食べてたんだなってことを思い出すんですよ、たぶん、みんな。「もともとそういう志だったじゃん!」って感じがある。初々しさだけじゃないんですよ、決して。というか、初々しいという表現じゃなくてもっと違う表現だな。なんて言うんでしょうね・・・。ジャックナイフをもった、『ビーバップハイスクール』をやってた頃の高校生みたいな感じ?
山田:はいはいはい!
川本:いつでもお前とヤッっていいんだからな!っていう。
山田:タイマン張るような。
川本:そんな感じ。グーで石持ってるような。
山田:ははは。
川本:少なからず殺す気でいるっていう危なさがある(笑)。あと、パインソーって、劇団じゃないじゃないですか。団体なのに、徒党は組んでない。
山田:そうですね、みんな、人のことに興味がない ですから。超個人主義。
川本:そうなんですよ。でも、みんないい人だけど、おおらかさとは別の、人のことを信用しないぞというか、そういう気持ちが共存してるんですよ。
山田:そうですね(笑)。
川本:それが怖い! 怖いんですよ、パインソー(笑)。
山田:むちゃくちゃやってるんですが、守りに入ってないから。守ったら終わりですから。役者生命も終わるし、すべての生命が終わる。
川本:確かにね。芝居してって誰からも頼まれてないですしね。勝手にやってるんですもんね。
山田:勝手に芝居始めて、勝手に東京来て、勝手に好き放題やってる わけですから。
川本:そう考えたら守るのはオカシイはずなんですが、いつしか人は守りに入るんですよ、
…普通はね。
ゲスト・プロフィール 山田 マサル(やまだ・まさる)
1998年に札幌の劇団「AND」に参加。以降俳優として解散まで多数の作品に出演。
2009年、当時自らのユニットを「PaingSoe(パインソー)」と命名し活動開始、現在に至るまで、全ての作品を演出し、札幌出身の作家・川尻恵太が脚本を担当することが多いが、まれに脚本も担当する。無謀と言われつつも機動性の高い企画や作品をハイペースで創作し続けており、近年では東京公演を2回にわたり行うなど、活動範囲を大きく広げている。また、俳優として客演も多数行っている。
その活動の傍ら、1994年からグラフィックデザイナーとして、広告デザインからWEBに至るまで、また短編映画や映像を製作するなど、現在はディレクションに軸を置くが、前述の演劇活動を含め、まさに節操のない「神出鬼没のディレクター」(本人談)である。
人間の欲望と業をあぶりだし、「一見形にならなそうなことを、形にしようとする」作品を自身のフィールドとしている。
ホスト・プロフィール 川本 成(かわもと・なる)
欽ちゃん劇団1期生として在籍。1994年“あさりど”結成。主な出演番組としてTV『笑っていいとも!』9代目いいとも青年隊、『王様のブランチ』他、TV・ラジオ・舞台に多数出演。現在はTV『スタイルプラス』、ラジオ『ナルウザクスダの!』、『おしゃべり会戦車部』へのレギュラー出演や、アニメ『テニスの王子様』、『遊戯王デュエルモンスターズGX』、『GON』、『義風堂々!!』他で声優として活躍の場を広げ、舞台では『小堺クンのおすましでSHOW』、『男子はだまってなさいよ!聖バカコント』、『ブルドッキングヘッドロック おい、キミ失格!』、『月刊「根本宗子」忍者、女子高生(仮)』他、自ら『時速246億』を主宰し、定期的かつ精力的に舞台をプロデュースしている。趣味の分野では映画好きで、大の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ファン。この作品を語らせたら右に出る者はいない、と本人が自負している。(あくまでも本人が)
★山田マサルさん出演情報です★
<舞台>
パインソー パルチザン03「DUST BOX RUNNER」
5月27日(金)~29日(日)@札幌/演劇専用小劇場BLOCH
脚本・演出/白鳥雄介
★プロデュースと出演を担当します。
INDEPENDENT 3rd Season Selection JAPAN TOUR札幌公演予選会
「ものずきのこ」(ひとり芝居)
6月10日(金)19:00開演 @札幌/ターミナルプラザことにパトス
出演/山崎亜莉紗(パインソー)
★脚本・演出を担当します。
HP https://yamadamasaru.wordpress.com
パインソーHP http://paingsoe.com
Twitter https://mobile.twitter.com/yamasaruox
★川本成さん出演情報です★
<舞台>
時速246億 川本成ソロ公演「独歩」
7月6日(水)~10日(日)@中野・テアトルBONBON
演出:小林顕作/作:川本成、小林顕作/出演:川本成
http://www.jisoku246.com/info/doppo
WBB vol.10.5『リバースヒストリカ2016』
7月27日(水)~31日(日)@品川プリンスホテル クラブeX
http://www.w-b-bros.jp/
<テレビ>
スタイルプラス
東海テレビ 毎週日曜12:00~13:45
http://tokai-tv.com/styleplus/
<ラジオ>
ナルウザクスダの!
インターネットラジオステーション音泉 毎週月曜配信
http://www.onsen.ag/
おしゃべり会 戦車部
インターネット放送局 ケーズステーション 不定期配信
http://www.kzstation.com/
blog「Naru’s blog’n boy」http://ameblo.jp/kawamotonaru/
Twitter https://twitter.com/runarurunaru