連載
第8回ゲスト「井関佳子のオレ哲学」第2週
連載対談「川本成のオレ哲学」(略してオレ哲)。第8回目のゲストは、演出家、声優、歌手、女優の井関佳子さん! 今週のテーマは、井関さんが出会ってきた若手俳優たちについて、そして20年以上この仕事を続けてきた秘訣!?(写真/熊谷仁男、文/中村恵美)
COLUMN 2014 3/7 UPDATE
川本:『テニミュ』でかかわってきた俳優さんたちって延べ何人くらい?
井関:200人ぐらいかなぁ。
川本:可愛らしい男の子たち200人と渡り合ってきたら、いろんな子がいるでしょ。
井関:うん。だからある時期、彼らを役者って呼ぶには難しくなったタイミングもあった。「役者ならそれくらいわかれよ!」って言えなくなったんだよね。
川本:というと?
井関:もしかしたら役者をやりたいわけではないのかなと感じる子、というか、役者をやりたいのかそうでないのかさえわからないのかなって子が多くなった。役者に限らず何か表現がしたいと思っている子もいれば、ただ、かっこいいから、何かわからないけど売れたいから、ということで参加している子もいたから。だからこちらも、「この先何か表現をしていく仕事をやりたいなら、何か役に立つこともあるんじゃない? 少なくとも現場にいるときは、それを意識しようよ」っていう言い方をしてた時期もあったよ。
川本:ヨッティーもオレも自分でやってる立場だけど、彼らは自分たちと同じようには思っていないってことでしょ。
井関:そう。事務所からの指示でやってるけど、本当は歌がやりたいのかもしれないし、テレビに出たいのかもしれない。映画をやりたい、ダンスがやりたい、それもまだはっきりわかっていないのかもしれない。そんな子たちの中で、お芝居がやりたいって子は、20歳前後のタイミングでは多分少ないんじゃないかと思うんだよね。
川本:自分たちと同じモチベーションとは言えないと。
井関:そう。だから「役者なら、立ち位置間違えるな!」って言いにくい。そういう風にひるんだ時期もあったよね。
川本:うんうん。
井関:でも、しょうがない。こっちのセオリーを言ってかなきゃ、教えてかなきゃいけないんだなって開き直った。
川本:教師じゃん(笑)。しかも、昔の教師と今の教師の歴史と同じじゃん。そんなに踏み込めなくなってきてるでしょ。今の教師は。
井関:そうかもしれない。でも、数学を教えるには感情は必要ないかもしれないけど、演劇をやるからには、パーソナリティに関わらないと、「何でこのセリフが言えないんだろう、この動きができないんだろう」という理由がわからない。「苦手なのかな? それとも怠けてるのかな?」って考えなくちゃならないから。
川本:そうだよなー。
井関:「嘘つく子かな、やったふりする子かな? 影で頑張ってる子かな?」っていうのはすごく見てる。
川本:大変だ(笑)。ヨッティーは演者だから、自分がなんとなくやれていること、芝居だとか間だとかを、人に説明するのって難しい?
井関:難しい。思うんだけど、若い人たちだけでやってる作品って、今結構あるでしょ。横の同世代とのライバル心で得るものもあると思うけど、でも、やっぱり、特に若いうちは、大人と仕事しなきゃいけないと思ってる。
川本:ほう。
井関:大人と仕事をすると、単純にその人の稽古を見てるだけで「うわー」って圧倒されたり、逆に「何でこんなところでつまづいているんだ?」と思ったり、良いところも悪いところも全部見えるじゃない?
川本:うん。
井関:同世代だけだと自分たちの知っている範囲での成長しかないと思う。それが大人と稽古するとその範囲を超える説得力がある。だから大人の役者さんと仕事をしてほしいなと。
川本:強い相手とやらないと強くならないからね。
井関:うん。大人の役者さんたちも、若手が集まるところにドンドン出てくれるようになったし、それを活かさない手はない。それこそ成くんとかもそうだけど。その大人たちが「何なんだ、あの人!」という力を若手に見せ付けてくれて、それを彼ら若手が原動力にしてくれればって思う。そこに行き着きたい。
川本:俺たちも危機感があるっていうか、上の人もガンガン若手の舞台に出なくちゃ、もう、飽和状態にあるっていうか、出どころもなくなってきちゃうでしょ。動いてないとすぐ置いてかれちゃう気もするし。
井関:そうかもねぇ。私は役者をやらなくなって、7、8年たつんだけど、去年久しぶりに役者として舞台に立ったら、すごく怖くて(笑)。もう、あんなに台本を手放さなかったことはないってくらい、いろんなものの衰えを感じた!
川本:そんなことはない(笑)。
井関:いや、ほんと。瞬発力というか役者力、みたいなものがね。引き出しは持っているけど、開きにくくなってた(笑)。
川本:試合勘がにぶったってことね。スポーツ選手と一緒だからね。
井関:自分も演出に関わるようになって、「“今、だまそうとしてるな”って、演出家に全部ばれちゃってるんだろうな」っていうのがわかるから、恥ずかしいやら怖いやら。
川本:(笑)。人のことがわかるだけにね。自分のことが一番コントロールきかないということだね。
井関:「すみません、すみません」ってずっと言ってたもんね。
川本:演出やるようになって、演者と演出、どっちもやりたいって気持ちが大きくなってきてる? どっちかだけに偏ってきた? それとも、流れにまかせてる?
井関:うーん、流れ、かな(笑)。個人として表現したいことっていうのはずっとあって、でも作る側ではそんなになくて。だから、「役者は、やめた…とは言わない」っていう感じかな。次が10年先になるかもしれないけど、やりたいし、やんなきゃいけないとも思ってる。
川本:タイミングで、役者の仕事が来るのかもしれないね。運命的な何かで。
井関:そうね。基本、全部人任せなんだよね。来ればいいな、来てくださいっていう(笑)。
川本:オレも人任せ。
井関:いやいやいや! 成さんはガンガン取りに行くじゃないですか!!
川本:えっ!? そんなことないよ。
井関:それは、旗を振ったあとの、人任せでしょ。まず、声を上げるのは成さん。すごいなって思っていつも見てるよ。
川本:飲み会みたいなものですよ。「集まれー!」って声はかけるけど「お会計とかは誰かやってください」っていう。
井関:それは才能ですよ。
川本:演劇のやり方がわかんなかったからね。演じたいけど演じるにはどうしたらいいんだろうって。どうやったらみんなとやれるんだろうって。そうすると「自分で催すしかない」と。
井関:その「催すしかない」っていう「やりたい感」が人を動かすんだと思う。
川本:ガツガツしてんだよね。やらしいんじゃない?
井関:(笑)貪欲だと思いますよ。
川本:ヨッティーと十数年、人生の三分の一ぐらいは一緒にいるってことでしょ。
井関:ねー。私、学生時代までの年数と仕事している年数が、同じになったんだよね。
川本:ここまで続けられてきた理由って、自分ではどう考えてる?
井関:作品に恵まれたんだと思う。その時代にピックアップされる作品に携われたっていうのは結構大きい。そうすると道ができてた。
川本:なるほど。
井関:私、「仕事にとって大事だと思うことは何?」って聞かれたら、いつも「勘」って答えてたのね。最近は鈍ってきているかもしれないけど。
川本:勘?
井関:そう。勘が働くか働かないか。ここは食いつくか食いつかないかを決める勘。
川本:ああ。
井関:右か左かというときに、右の方がいい匂いがする(笑)とかね。そうやって掴んだお仕事が、長く続く作品だったりする気がする。
川本:生きることは常にチョイスだもんね。
井関:チョイスしなきゃいけないからね。そこで、はずれくじ引かないように、はずれくじ引いてもそういう風に見せないようにするけど(笑)、当たりくじを引くように勘を働かせる。
川本:それって野生的だよね。
井関:(笑)、そういう勘が働いたおかげで続いてるかな。
川本:お助けマン的なところもあるよね。
井関:「何とかしてくれるでしょ」っていう安心感を相手に感じてもらえるところも、私の売りかもしれないね。
川本:自分でチョイスしたから、迷わないしね。
井関:それに、「こっち行ったらヤバイ」って時にかかるエンジンがすごい気がする。絶対そっちに行かせない! しょうがないか……ってあきらめるのは最後の最後。 ほんと、ギリギリまであがいてるねー。
川本:それって、絶対取りにいくぞ!ってことじゃないですか。
井関:そうなんだね。諦めちゃったものをできるだけ作りたくないんだよね。
(3週に続く)
ゲスト・プロフィール 井関佳子(いせき・よしこ)
歌手、女優、声優、演出家。神奈川県出身。早稲田大学第二文学部演劇専修卒業後、新劇養成所を経て、現在はフリーで活動。1998年、白神直子、南方美智子とともに音楽ユニット「ねこマジ」を結成、ボーカルを務めている。舞台『合唱ブラボー』の演出、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』『ミュージカル HUNTER×HUNTER』、ミュージカル『テニスの王子様』『ROCK MUSICAL BLEACH』『マクロスザ・ミュージカルチャー』
などに演出補・演出助手として参加するなど、マンガ・アニメのミュージカル化作品のスタッフとしても活躍している。
ホスト・プロフィール 川本成(かわもと・なる)
欽ちゃん劇団1期生として在籍。1994年“あさりど”結成。主な出演番組としてTV『笑っていいとも!』9代目いいとも青年隊、『王様のブランチ』他、TV・ラジオ・舞台に多数出演。現在はTV『スタイルプラス』、ラジオ『ナルウザクスダの!』へのレギュラー出演や、アニメ『テニスの王子様』、『遊戯王デュエルモンスターズGX』、『GON』、『義風堂々!!』(2013年7月~)他で声優として活躍の場を広げ、舞台では『小堺クンのおすましでSHOW』、『冒険者たち』、『男子はだまってなさいよ!聖バカコント』他、自ら『時速246億』を主宰し、定期的かつ精力的に舞台をプロデュースしている。
★お知らせその1★
井関佳子さん出演ライブのお知らせです!
「ゴーラック・ナイト Vol.3~大人のエンタテイメントそろえました~」
笑いと音楽の絶妙な快感ラインを走る孤高のインディ、“ゴーラック・レコード”がお届けするおかしな夜はいかがですか?
日時:3月31日(月)開場18:30/開演19:30
出演:柳家喬太郎、寒空はだか、ねこマジ
会場:吉祥寺・スターパインズカフェ http://www.mandala.gr.jp/spc.html
料金:前売・当日3,600円 (全席自由・ドリンク代別途)
※限定150枚、売り切れ次第、販売を終了いたします。
※前売り取り扱い
吉祥寺スターパインズカフェのみでの発売となり、限定150枚が売り切れ次第、販売を終了させていただきます。当日券の有無については、吉祥寺スターパインズカフェへお問い合わせください。またお電話によるご予約は受け付けておりませんのでご了承下さいますようお願い致します。
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★お知らせその2★
川本成さん出演舞台のお知らせです!
明治座3月欽ちゃん奮闘公演THE LAST「ほめんな ほれんな とめんな」
日程:3月7日(金)~30日(日) 劇場:明治座
作:秋房子・君塚良一 演出:萩本欽一
出演:萩本欽一・田中美佐子・的場浩司・小倉久寛・風見しんご・山口良一・松居直美・はしのえみ・野添義弘・佐々木健介 他
※川本成は10・11・18・23・24・25・30日は出演致しません 料金:A席(1・2階)11,550円/B席(3階)5,250円 チケット:各プレイガイドにて発売中 詳細は公演オフィシャルサイトをご覧下さいhttp://kinchan-last.com/
★お知らせその3★
川本成さん出演舞台のお知らせです!
bpm本公演「不如帰」
日程:4月17日(木)~20日(日) 劇場:全労災ホール スペース・ゼロ 作・演出:浅沼晋太郎
出演:川本成・進藤学・菊地創・猪狩敦子・伊藤マサミ・NAO-G・浅沼晋太郎・
豊崎愛生 他
料金:前売 6,500円/当日 7,000円(全席指定・税込) チケット:2月15日(土)~一般発売開始
詳細は公演オフィシャルサイトをご覧下さいhttp://www.hototogisu-bpm.com/
★お知らせその4★
川本成さん出演舞台のお知らせです!
ブルドッキングヘッドロック+三鷹市芸術文化センターpresents
太宰治作品をモチーフにした演劇公演第11回「おい、キミ失格!」
日程:6月6日(金)~15日(日)
劇場:三鷹市芸術文化センター・星のホール
作・演出:喜安浩平
出演:西山宏幸、篠原トオル、永井幸子、岡山誠、喜安浩平
川本成 (時速246億)、竹井亮介(親族代表)、森谷ふみ(ニッポンの河川)筒井俊作(演劇集団キャラメルボックス)、傳田うに(劇団鹿殺し)、小園茉奈(ナイロン100℃)、竹内健史、小笠原健吉、浦嶋建太、葛堂里奈、鳴海由莉、二見香帆
詳細はオフィシャルサイトをご覧下さいhttp://www.bull-japan.com/home/