連載
第6回ゲスト『清水宏のオレ哲学』第1週
タレントで、舞台・役者・声優・ミュージシャン・プロデューサーとしてマルチに活躍の川本成(あさりど)さんがホストとなって、エンタメ業界のみなさまに聞く、「オレの哲学とは?」。
連載対談「川本成のオレ哲学」(略してオレ哲)。第5回目のゲストは、役者・コメディアン・演出家の清水宏さんです。さまざまな顔をもつ清水さんが、2年連続で挑戦していることとは……。(撮影/熊谷仁男 構成・文/中村恵美)
COLUMN 2013 2/1 UPDATE
川本:清水さんは、ここ2年、自腹でイギリスのエジンバラ・フリンジ・フェスティバルに行ってるんですよね。
清水:みんなNYとかロンドンとか行ってますが、僕はエジンバラです。地味ですよね。
川本:(笑)。もちろん、英語でやるんでしょ。
清水:イェース!
川本:(笑)。スタンダップ・コメディーをやるんですよね。
清水:シュアー。
川本:(笑)。前夜祭のライブを観させていただきました。セミドキュメンタリー。
清水:本当にあったことを、恐ろしく脚色するんですけど。その按配がキモで。
川本:スポンサー探しから始まるんですよね。本当の大企業にアポなしで突然行っちゃう。
清水:怒られますよね(笑)。それを体験談として話すんです。
川本:VTRも撮ってるんだけど、それは流さないで、詳細にトークで説明する。
清水:起こったことや、やり取りを本当に事細かに、身振り手振りでしつこく描写するんです。僕「今、あなた、そう言いましたよね!」、相手「嫌、そうではなくて…」、僕「何で、そういう言い方するんですか」なんてやり取りまで細かくね。煙たがられて、叱られて。そんなことを全部。2、3時間も。長い!!(笑)。
川本:これがホントおっかしいやらなにやらで。しかも、最終的には、奇跡的にスポンサーが見つかるんですよね。
清水:奇跡的にね。
川本:そのために、四国まで行くんだよね。自腹でね(笑)。地元の名士にも怒られながらね。
清水:怒られたり無視されたりね。思いもかけない展開になるんですよね。地元の名士の人が「何で私が、赤の他人の君をこんなにも、叱らなきゃいけないんだ!」と言っているうち、「もうわかったよ…」となっていく。根負けしていく感情の急激な変化が、見ているほうにとってカタルシスになるというかね。まぁ、マイケル・ムーアから、「考え方・テーマ」を抜いたみたいな。
川本:(笑)。
清水:無計画なマイケル・ムーア。
(笑)。「君はいったい何がしたいんだ!」って怒られるけど、「何がしたいわけじゃないんです。別にテーマはないです。」って言ってね。マイケル・ムーアと違って、僕の場合は哲学がない。
テーマがないまま行って、波紋が広がるのを伝えるのが僕のやり方なんです。川本:清水さんの場合、一番最後が、本当なのか嘘なのかわからない展開になるんだよね。スタンダップ・コメディアンとしての清水さんをずっと見てきて、最後は演劇人としての清水さんになって、ラストはファンタジーになる。
清水:ドキュメンタリーの部分で十分カタルシスはあると思ってるんです。前のめりに倒れるという話で、6:4で成功していると思う。
川本:ですよね。
清水:でも、演劇に文句を言いながら、せっかくずっと演劇にしがみついている人間
としては、演劇の部分を出していこうと思った。だから、ラストのところで、突然、「君の話に協力することしたのは、僕は本当は人間じゃないからなんだ。僕は、君が落とした財布の中の、亀の子たわしなんだよ。」「うそだー!」という展開にもっていく。こうなると、見ている人は全くわけがわかんない。
川本:わかんないわかんない(笑)。
清水:全く意味がわかんないけど、でも泣けてくる…というものにしたい
んです。ドキュメンタリーだけじゃ、気持ちが収まらない。
川本:なるほど。
清水:さらに内容を説明すると、いろいろやりあったあと、地元の市役所の人と車に乗るんですね。実際にはそんなことはしてないので、ここからがフィクションなんです。市役所の人が「清水さん、そろそろいいでしょう」、清「え?」、市「空を飛びましょうか」となる。そのまま車は成層圏まで飛んでいって、みんなで地球を外から見るっていう話にしたんです。
川本:そういう話でした。
清水:自分で、何でそういう風にするのかなーって考えたら、現実を描写するだけじゃ収まらない、せっかくわざわざ観に来てくれた人がいるんだから、それこそ、空を飛ぶような話にしないと申し訳ないと思って。それで、僕の話はやたらと、空、飛ぶんですよ
(笑)。
川本:それで、さっきまでドキュメンタリーを観ていたのに、最終的に演劇を観ているような感じになるんですよ。で、感動している。散々笑って、まさに清水宏劇場!
清水:馬鹿だなー(笑)
川本:と思ったら、ドキュメンタリー部分では、撮影してるカメラマンがキレたりしてるし。
清水:ケンカになって、カメラマンが「もう、帰っていいですか!」ってなることもあった。本筋とは関係なくても、それも全部ライブの中で話すんで、長くなっちゃうんですけど。
川本:でも、最終的にほろっとなるんですよ。それで極め付きに、一番最後に映像を流すでしょ。さっきまで話してたことが、映像に残ってる、全部本当だったんだ!ってね。清水さんのライブ観たときに、俺『ビッグ・フィッシュ』という映画を観たときの感覚と似てるなって思ったんですよ。
清水:どんな映画?
川本:ティム・バートン監督の映画で。ユアン・マクレガーが主人公なんですが、子供の頃からずっと、親父に御伽噺みたいな彼の人生を聞かされるんですよ。だけど大人になるうちに、親父の話してきたことは到底信じられなくて、単なるホラ話にしか思えなかった。ところが親父が死んでしまってルーツをたどると、夢のような話は実は全部・・・・。素敵な物語です。
清水:それです、俺がやりたかったことは。
川本:(笑)。清水宏の話芸と演劇的な表現力に巻き込まれていくうち、最終的に観客は泣いてしまうわけです。エジンバラ参加の前夜祭で、それを観てすごいなと。
清水:前夜祭ね。あれは、自腹で行くのに金が必要だったんで、やりました。あ、生々しくなりました(笑)。
川本:(笑)。どのくらいの期間、行ってたんですか?
清水:大体、1か月やってるんですよね。長いようで短い。エジンバラは、石畳の道やお城があるような古都で、エジンバラフェスティバルも、もともとは町おこしだったんじゃないかな。それが大規模になって、その期間だけ世界中から人が集まるようになったようですね。
川本:へぇ。
清水:時折、町の人の人情なんか感じたりするんですよ。期間中は、劇場をすべて使って、さらには普段劇場じゃない、バーなんかも劇場になるんですよ。コメディーはそういう場所でやるんです。だから、酔っ払いも来る。そうすると、酒飲みながら観るから、お客も「なんだぁー!」「ねぇーねぇー」とか大声を上げたり話しかけたりしてくるわけ。
川本:しかも全部英語ですもんね。
清水:そう。なにしろ、まずチラシ配りからやるんですよ。2年目に行った時は、まだ俺のこと知ってる人もいたけど、でも、まずゼロから。そうしないと誰も来てくれないからね。オレほど、人を集めるのにエネルギー使ってるやつ、いなかった
よ。チラシ渡し名人になってたから(笑)。
川本:(笑)。
清水:「ちょっといいですか~」って話しかけて、ちょっと笑わしたりなんかして。「アイ・アム・ジャパニーズ・コメディアン。フロム…ジャパン」なんていうと「そりゃそうだろ」とか言われて。「でも、ライブは英語でやるよ」って言って売り込んで。向こうの人って、行くって言ったら結構来てくれるんだよね、もちろん来ないやつもいるけど。
川本:それがすごいよね。
清水:「来ただろ」って合図してくれる。しかも終わった後に「面白かった、お前、今まで見た中で一番面白かった!」って言われると、やっぱり嬉しいよね。やりがいがある。チラシ配りは本当はすごく面倒なんだけど、そういうことがあるから、頑張ってやる。
川本:海外で面白かったって言われるってすごいねぇ。
清水:楽しい! もちろん、練習もしたよ。毎日。
川本:へぇー。
清水:ツカミでね、「私たちの国では英語の教科書で一番初めに習うのが、『This is a Pen』です。…『This is a Pen』ですよ!! …どのシチュエーションで使うんじゃいっ!!」ってね。それをしつこくしつこく繰り返してやるわけ。
川本:それも演劇的ですね。
清水:いつも日本でやっている自分の表現と近いよね。ただ向こうでは、「どう思う?」って聞いておきながら、何か英語でわかんないこと言ってきたら、もう「シャーラップ!」って言っちゃうけどね(笑)。自分がやってきたことに、英語で近づけたんで、今年はとても収穫があった。
川本:(笑)。それは、やっぱり経験ですか。
清水:経験と、俺のコメディー体験かな。日本で「お笑い」っていうと、俺の考え方と合わないというか、向いてないんだよね。お笑いでやっている人で、松村邦弘くんとか、尊敬できる人ももちろんいるけど、ぼくがやりたいのはアメリカン・コメディー。スタンダップ・コメディーも含めて、英語の文体が合うんだよね。それが根本にあって、演歌というか演劇がくっついている。
川本:なるほどねー。
清水:全力でやるから。それが俺に合ってるみたいね。だから正確に言えば、アメリカン・コメディーともちょっと違うみたい。向こうで「それが日本のコメディーなのか」って言われるけど、そうではないけどね。まぁ、なんとなく「そうだ」って言っちゃうときもあるけど(笑)。どっちでもないものが生み出ちゃったから、今その居場所を探してる感じ
かなぁ。
〈第2週に続く〉
ゲスト・プロフィール 清水宏(しみず・ひろし)
愛知県出身。俳優であり、演出家であり、声優であり、コメディアン。本人曰く、演劇出身のテンション爆発芸人。早稲田大学演劇研究会を母体とした劇団「山の手事情社」出身。退団後、石井光三オフィス所属を経て現在はフリー。舞台、ラジオ、テレビなど、幅広いジャンルで活躍中。2011年、2012年連続でイギリスのエジンバラ・フリンジ・フェスティバルに参加。〈2011年4ツ星を獲得〉
ホスト・プロフィール 川本成(かわもと・なる)
欽ちゃん劇団1期生として在籍。1994年“あさりど”結成。主な出演番組としてTV『笑っていいとも!』9代目いいとも青年隊、『王様のブランチ』他、TV・ラジオ・舞台に多数出演。現在はTV『スタイルプラス』、ラジオ「絶滅寸前男子」、へのレギュラー出演や、アニメ『テニスの王子様』、『遊戯王デュエルモンスターズGX』、『GON』(2012年4月~)他で声優として活躍の場を広げ、舞台では『小堺クンのおすましでSHOW』、『冒険者たち』他、また自ら『時速246億』を主宰し、定期的かつ精力的に舞台をプロデュースしている。
★お知らせ★その1
清水宏さん演出・出演舞台のお知らせです!
熱血学園ミュージカルcube neXt『押忍!!ふんどし部!』
日程:2013年2月6日(水)〜11日(月・祝)
劇場:CBGKシブゲキ!!
監修:河原雅彦
脚本:細川徹
演出:清水宏
出演:白洲迅 川原一馬 海老澤健次 君沢ユウキ 加藤諒 坂口涼太郎 冨森ジャスティン 金井成大 /広瀬諒人 明樂哲典 田鍋謙一郎 清水宏 シルビア・グラブ
チケット:チケットぴあ・e+・ローソンチケット・カンフェティにて発売中
前売4,800円/当日5,200円(全席指定・税込)
/学生券3,500円(前売りのみ・チケットぴあのみ・劇場受付にて学生証提示・税込)
/前売セット券6,000円(一般チケット代4,800円、公演パンフレットと「おすふんタオル2013」のセット)
お問い合わせ:キューブ03-5485-8886(平日12:00〜18:00)
http://osufun.com/stage/index.html
★お知らせ★その2
清水宏さん出演舞台のお知らせです!
KAKUTA第23回公演『秘を以て成立とす』
日程:2013年3月1日(金)~10日(日)
劇場:シアタートラム
作・演出:桑原裕子
出演:[KAKUTA]成清正紀 若狭勝也 原扶貴子 高山奈央子 野澤爽子 佐賀野雅和 ヨウラマキ 桑原裕子 [GUEST]清水宏 藤本喜久子 瓜生和成(東京タンバリン) 吉見一豊(演劇集団円)
チケット:KAKUTAオフィシャルサイト・世田谷パブリックシアターチケットセンター・チケットぴあにて発売中
前売3,900円/当日4,200円/サービスデー3,300円(前売・当日共)/学生割引3,300円(劇団扱いのみ)
お問合せ:KAKUTA 090-6311-1996 info@kakuta.tv
http://www.kakuta.tv/hmss/
★お知らせ★その3
清水宏さん出演ライブのお知らせです!
清水宏のお笑いヨットスクール~新ネタ道場Vol.3
日にち:3月13日(水)
会場:新宿2丁目道楽亭Ryu’s Bar
出演:清水宏 しゃばぞう 居島一平(米粒写経) けいいちけいじ
詳しい情報は、清水宏オフィシャルブログをご覧下さい。http://ameblo.jp/hiroshimizuflamingcomedy/
★お知らせ★その4
川本成さん出演舞台のお知らせです!
劇団たいしゅう小説家×空飛ぶ猫☆魂「サヨナラ誘拐犯のパーフェクト・ストーリー」
日程:2013年2月20日(水)~24日(日)
劇場:萬劇場
脚本・演出:西永貴文
出演:太田基裕・山本涼介・長戸勝彦・岸潤一郎・西興一郎・佐々木光弘・小休暁・永田卓也・石井苗子・川本成
日替わりゲスト:20日(水)湯澤幸一郎 / 21日(木)昼・夜 粟島瑞丸 / 22日(金)川尻恵太 / 23日(土)昼 竹本孝之 / 23日(土)夜 水谷あつし / 24日(日)政岡泰志・小林健一
チケット:ローソンチケットにて発売中 ¥4,500
お問合せ:劇団たいしゅう小説家 03-3710-2370(平日11:00~19:00)
★お知らせ★その5
川本成さん出演ライブのお知らせです!
ナルウザクスダの!公開収録Vol.5
日時:2月28日(木)18:00開場 19:00開演
会場:阿佐ヶ谷ロフトA
出演:川本成・UZA・楠田敏之
チケット:ローソンチケット(Lコード:34695)にて発売中
前売・当日¥2,000(全席自由・整理番号付)*別途飲食代が必要となります