連載
第13回ゲスト「山田マサルのオレ哲学」第1週
連載対談「川本成のオレ哲学」(略してオレ哲)。13回目のゲストは、北海道が誇る新進気鋭の演劇ユニットPaingSoe(パインソー)の主宰で、役者でもあり演出家でもあり、そして現役デザイナーでもある、山田マサルさんです! その本性に成さんが迫ります!
COLUMN 2016 3/18 UPDATE
川本 マサルさんは経歴が不思議で。デザイナーなんですよね。デザイナーやりながら舞台もやってる。
山田 20代の頃はデザイナーだけやってました。この世界に入ったきっかけは、最初は、芝居の舞台美術、宣伝美術を手がけたんですよ。やってるうちに、「出てみない?」って22歳か23歳のころに誘われて。そこから、裸でオムツ1枚で人をぶっ殺したりするような役ばっかりの役者になってしまったんです。
川本 その劇団がそういう芝居ばかりするということだったんですね。
山田 そこが悪かったんです(笑)
川本 でも、もともとそういう気質を持った人だったんでしょ?
山田 そうかもしれないですね。でも、僕、そういうことやりたくてお芝居始めたわけじゃないんですけどね。
川本 お芝居には、もともと興味あったんですか?
山田 いや、全然なくて。むしろ、ダサいな、って思ってたんですよ。
川本 ほう。
山田 お芝居やってる人たちって、なんだかこう、小さく繋がっちゃってるな~って言うか(笑)。
川本 (笑)
山田 まあ、北海道っていう、地域性もあったんでしょうけど。そもそもお芝居をやってる集団がそんなに札幌にあるってことも知らなくって。
川本 うん。
山田 でも、だんだん俳優としてやっていくうちに、人と違うことをするのが、だんだん気持ちよくなってきたんですよ。
川本 それで、デザイナーであり、俳優であり、演出家である山田マサルがいると。
変わった人ですよね(笑)。今もデザイナーの仕事やってるんでしょ。クライアントさんもいて。
山田 ええ。
川本 クライアントさんの中には、マサルさんが役者やってるってことを知らない人がいるわけでしょ?
山田 十中八九、知らないですね。黙ってます。
川本 (笑)。
山田 あの、気持ち悪い演技をする人だって、逆に知られちゃってることもありますけど。その時は、困ったな~って思いますよ。
川本 (笑)。舞台美術の方は、今もやってるんですか?
山田 昔はいくつかやってましたが、最近はもうやらなくなりました。いいことを思いつく人もいっぱいいるので。アイデアだけ、お伝えして、ということはありますけど。
川本 変わった人ですよね~。
山田 いやいやいや。
川本 デザイナーをやりつつも、お芝居をやるのは、なぜなんでしょう? マサルさんにとって、お芝居の魅力とは?
山田 最初、役者をやってたときには、奇異な感じにニーズがあるのかな、と思っていたんですが、演出をやり始めると、人間の欲望って面白いな、と思うようになったんですよ。人と違うことをしたい、あいつより気持ち悪いことをしたい、変態と思われるのが気持ちいい、みんながそれぞれ、そういう気持ちを持っている。そういう人間の欲望を表現するのが面白いなと。
川本 汚い部分を描きますよね。
山田 どんな人にも汚い部分があるし、人には言えない汚い気持ちがある。心の奥底で「あいつ、死ねばいいのに」と思っている。でも表に出さない。そうやって社会は成立してると思うんです。
川本 表裏一体。その裏側の部分をお客様に見てもらって、ハッとしてもらう?
山田 そうですね。お客さんもそうでしょ?ということですよね。そういう感じの作品が多くなって、今ここにいたる、ということでしょうね。
川本 なるほど。
山田 パインソーは、川尻(恵太)君の作品が多いんですけど、川尻君もそういう部分を秘めている。東京ではあまり出せてないですけど。
川本 そうですね、川尻君の表裏一体の片側が北海道では出せていると。どちらかというと、こちらの方が、表裏一体の「表」の部分でしょうね。
山田 そうかもしれないですね。
川本 パインソーの旗揚げは、いつでしたか?
山田 2009年に、札幌の小劇場でだったんですけど、最初、5ステージあって、合計で100人ぐらいしか入らなかったですね。11人しかお客さんがいなかったこともあった。
川本 まだ、ノウハウなども何も知らなかった?
山田 何もわからなかったですね。チラシやポスターも、芝居の公演なんだかなんなんだか、わけのわからないものを作りましたし(笑)。自分で脚本も書いて、「わけのわからない、ぐちゃぐちゃのものをやろう!」といって始めたのが、最初ですね。
川本 演劇ユニットを、立ち上げた理由は?
山田 まず、劇団にはしたくなかった。自分の作りたいもの、役者の作りたいもの、作家の作りたいもの、それぞれが舞台の上に集まって、何かわからないですが、「これヤバイよ」となる一瞬が欲しいなと思った。そうした時に、自分で主宰した方がいいなと思ったんですね。
川本 デザイナーの時の、ものづくりの仕方って、基本的に同じですか?
山田 同じですね。たとえば、一瞬で人生を変えられるところ。広告デザインやWEBを見て、例えば、「死にたい」と思っている人が「生きよう」と変わる。ばかばかしいことを見ることで、解放されるようなことが一瞬でも起これば、500人の人が見て1人の気持ちが変わることがあれば、それでいい。それが、デザインと演劇との共通点だと思います。
(第2週につづく)
ゲスト・プロフィール 山田 マサル(やまだ・まさる)
1998年に札幌の劇団「AND」に参加。以降俳優として解散まで多数の作品に出演。
2009年、当時自ら一人だけのユニットを「PaingSoe(パインソー)」と命名し活動開始、現在に至るまで、全ての作品を演出し、札幌出身の作家・川尻恵太が脚本を担当することが多いが、まれに脚本も担当する。無謀と言われつつも機動性の高い企画や作品をハイペースで創作し続けており、近年では東京公演を2回にわたり行うなど、活動範囲を大きく広げている。また、俳優として客演も多数行っている。
その活動の傍ら、1994年からグラフィックデザイナーとして、広告デザインからWEBに至るまで、また短編映画や映像を製作するなど、現在はディレクションに軸を置くが、前述の演劇活動を含め、まさに節操のない「神出鬼没のディレクター」(本人談)である。
人間の欲望と業をあぶりだし、「一見形にならなそうなことを、形にしようとする」作品を自身のフィールドとしている。
ホスト・プロフィール 川本 成(かわもと・なる)
欽ちゃん劇団1期生として在籍。1994年“あさりど”結成。主な出演番組としてTV『笑っていいとも!』9代目いいとも青年隊、『王様のブランチ』他、TV・ラジオ・舞台に多数出演。現在はTV『スタイルプラス』、ラジオ『ナルウザクスダの!』へのレギュラー出演や、アニメ『テニスの王子様』、『遊戯王デュエルモンスターズGX』、『GON』、『義風堂々!!』他で声優として活躍の場を広げ、舞台では『小堺クンのおすましでSHOW』、『冒険者たち』、『男子はだまってなさいよ!聖バカコント』他、自ら『時速246億』を主宰し、定期的かつ精力的に舞台をプロデュースしている。趣味の分野では映画好きで、大の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ファン。この作品を語らせたら右に出る者はいない、と本人が自負している。(あくまでも本人が)
★山田マサルさん出演情報です★
イレブンナイン 短いはなしシリーズ「分泌指南」
3月30日(水)〜4月3日(日)@札幌/演劇専用小劇場BLOCH
★オムニバスの企画に過去の脚本を提供しています。
パインソー パルチザン03「タイトル未定」
5月27日(金)〜29日(日)@札幌/演劇専用小劇場BLOCH
★プロデュースと出演を担当します。
HP https://yamadamasaru.wordpress.com
パインソーHP http://paingsoe.com
Twitter https://mobile.twitter.com/yamasaruox
★川本成さん出演情報です★
<舞台>
月刊「根本宗子」第12号『忍者、女子高生(仮)』
4月23日(土)~5月1日(日)@下北沢ザ・スズナリ
http://gekkannemoto.wix.com/home
時速246億 川本成ソロ公演「独歩」
7月6日(水)~10日(日)@中野・テアトルBONBON
演出:小林顕作/作:川本成、小林顕作/出演:川本成
http://www.jisoku246.com/info/
<テレビ>
スタイルプラス
東海テレビ 毎週日曜12:00~13:45
http://tokai-tv.com/styleplus/
演劇人は、夜な夜な、下北の街で語り合う…(再放送)
BSスカパー 3月20日(日)24:40~26:10
http://www.bs-sptv.com/program/1810/
<ラジオ>
ナルウザクスダの!
インターネットラジオステーション音泉 毎週月曜配信
http://www.onsen.ag/
おしゃべり会 戦車部
インターネット放送局 ケーズステーション 不定期配信
http://www.kzstation.com/
blog「Naru’s blog’n boy」http://ameblo.jp/kawamotonaru/
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