連載
第17回 根本宗子さん
第17回ゲスト「根本宗子のオレ哲学」第3週
連載対談「川本成のオレ哲学」(略してオレ哲)。17回目のゲストは、劇団、月刊「根本宗子」の主宰、根本宗子さんです。ラストとなる今週は、作品の魅力の秘密をさらに深堀りします! そしていつかかなえたい根本さんの夢とは!?
COLUMN 2018 5/25 UPDATE
川本:『超越』で、リアリティを書く人だっていう印象で思ってた節もあるけど、話の途中で時間戻そうってなるじゃん。それで、オレは認識違いだったなと思って。ああいうところはすごいエンタメだよね。
根本:時間戻したりしてるから、最近、舞台監督が「今回は何の時空を超えるんですか?」って打ち合わせで言ってきて、「別に時空越えないときもありますから!」みたいな(笑)。
川本:時空とか時間の概念て好きなの?
根本:日常だと時間て戻せないじゃないですか。「あぁ、あの人と付き合わなきゃよかった」と思っても、そこまで戻れない。でも舞台だと戻れるから。「あの時に戻りたい」っていう感情は、絶対誰しもが一度は思ったことあるじゃないですか。それを面白いやり方で共有できないかなと思って。好きなんでしょうね、元々。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も好きですし。
川本:一時期からの荒木飛呂彦先生の『ジョジョ(の奇妙な冒険)』にすごく時間の概念が入ってきたのよ。それみたいだなって。時間を戻したり、話が“時間”ってことにすごくこだわってて。舞台っていう2時間くらいの中で“時間”を表現するってのはやっぱりそういうのが好きっていうのがあるのかもしれないね。
根本:そうですね。一昨年、本多劇場でやった『夢と希望の先』っていう『夢も希望もなく』をリメイクしたバージョンがあって、リメイク版では最後、主人公が地元に戻ってそこからやり直そうって話になったんですけど、本当はセットの上にいる地元の友達が手を伸ばすと、下にいる主人公まで届いて手でギュッて引き上げてる絵が私のやりたかったことなんです。
川本:手塚治虫さんの漫画みたいなやつだ。
根本:そうそう。でも手が伸びるって舞台では無理じゃないですか(笑)。
川本:無理だね(笑)。
根本:だから階段を出して上がってくることにしたんですけど。なんか、舞台だと時間や空間を行き来できるじゃないですか。それが面白いなと思いますね。ちょっとメタっぽいって言うとアレですけど、そういうのが好き、なのかなぁ。そういうのがあればいいな、と思って芝居観てるのに、意外とそういうことしないなと思って。
川本:パッケージ感ていうかさ、まとめるってことにしちゃいそうだもんね。
根本:何個か部屋があるセットの時、絶対的なルールとして2つ部屋が分かれてたら、左の部屋の人の手が右の部屋にちょろっと出ちゃったら見栄え的に変なわけですよ。で、ほぼ旗揚げからずっとやってくれてる美術さんに、そこが気になるって場当たりで言われて、確かに、と思う反面、いちいちうるさいなと思って。手が見えても納得させる理由がないかなと思った時に、あ、時空超えちゃえばいいんだ、みたいな。なんか 見えない線をずっと守ってるのが気持ち悪くて、別にそこを守るために芝居してるんじゃない のにな、と思って。
川本:面白いね。
根本:自分が若かったし、上の世代のスタッフさんとやることが多かったので、「若いから知らないと教えてあげよう」ってみんな思ってくれるじゃないですか。でも いちいち言われることが、余計なお世話って思うこともあって(笑)。
川本:(笑) そういうパンク感あるよね。
根本:それで芝居が小さくなるよりは、出ちゃってもいいの!私的には!みたいな。
川本:うるせーなって?(笑)
根本:多少は(笑)。だって、それを言われちゃうと役者も小さくなっちゃうじゃないですか。なんかそういうのも「いい、いい、いい」って思ってやれる作品を書こうと思って、そしたら時空を超えがちになったというのもあります。
川本:そういう確固たるものがあるよね。
根本:みんなバトル体質なんで、すぐケンカだと思っちゃう(笑)。
川本:そう? オレの中ではそういう印象はないけど。
根本:あ、ホントですか? そんなケンカみたいなのは日常的には起こらないですけど、自分の中だけでそう思ってて。
川本:ホントに緻密ですごく細かいことを演出するときがあるじゃん。その作り方がね、オレはすごい好きで。オレ、基本的に稽古嫌いなのよ。でも宗子ちゃんの稽古は嫌じゃなかった。
根本:それ、いつも言ってましたよね。
川本:セリフも極力「うん」とか「はい」だけでいいと思ってて、覚えたくないのよ。覚えるのが苦手で。でも宗子ちゃんの本はわりと覚えやすいのね。で、何でだろう?って考えたら、やっぱりやりやすいんだなと思って。動きやすかったりとか。多分ね、心技体関係なく言わなきゃいけないことが多すぎると覚えづらいなと思って。だから稽古が嫌じゃなかった、2回とも。宗子ちゃんは年上の人とやることも多いし、結構ズバっと言えるじゃん。
根本:あー、それ言われますね。去年やったM&Oplaysプロデュース『皆、シンデレラがやりたい』で、ベテランの女優さんが3人出てて、そのプロデューサーも年上の方なんですけど、その方に「結構ヒヤッと思うくらい言うんだな」って言われて、良い意味で言ってくれたんですけど。「もうちょっと言わないタイプかなと思ったら、ちゃんと的を得たことをわりとズバズバ言うから、稽古がスムーズだった」みたいなことを言われて。
川本:言ってほしいってのもあるしね。
根本:言ったらちゃんと聞いてくれて、若い人とやるのを面白がってくれる人とやるので。そうじゃない人とやったら大変でしょうけど。
川本:説教されるかもしれないしね。もう時間も迫ってきたので、あと今後のことを聞きたいです。
根本:ミュージカルとか音楽劇をやりたい んです。今、一番やりたいのは、ももクロにミュージカルを書きたい。みんな、どんどん歌唱力も上がってるし表現力もすごいじゃないですか。でも、難しいだろうなあ〜やってほしいなあ〜(笑)。
川本:聞いてみれば? やるかもよ。
根本:舞台をやらない人が舞台をやるってことを、否定する人もいるじゃないですか。こっちに来るな、みたいな。でも、私、そういうのはないんですよ。面白かったら誰でも一緒にやればいいと思う。まぁ、そういうのでつまんないものもありますけど。あと 帝劇とかの、ものすごく硬派なミュージカルもやってみたいです。
川本:『レミゼ』みたいなやつ?
根本:あ、『レミゼ』はやりたくないです(笑)。
川本:なんでよ! 何で『レミゼ』はやりたくないのよ。
根本:日本にまだ届いてない作品だったらやってみたいんですけど。私、今までオリジナルしかやってないんで、オリジナルのミュージカルが一番書きたいです。日本人の話で。
川本:ああ、みんなマイクとかボブとか言っちゃうから嫌なんでしょ?
根本:そう(笑)。
川本:「寅さん」のような日本の心みたいなのをミュージカルにするのがいいんじゃない?
根本:日本人の日常劇で、ずっと歌いっぱなしの形ではなくて自然に歌の入るミュージカルを作りたいですね。
川本:コクヨとかでノートを作るじゃない? その企画会議からノートができるまでをミュージカルにしたいなって思ってるんだけど。
根本:やっぱりキッカケは日常の方が、今のお客さんは見やすいんだろうなって思いますね。
川本:聞きたいことまだまだいっぱいあるんですけど、また飲みながらにでも。
根本:はい(笑)、ありがとうございました!
(第17回おわり。次回のゲストをお楽しみに)
★根本宗子さん お知らせ★
<舞台出演>
ナイロン100°C 46th SESSION『睾丸』
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
・東京公演 2018年7月6日(金)~29日(日) 東京芸術劇場シアターウエスト
・新潟公演2018 年7月31日(火)〜8月1日(水) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
・宮城公演2018 年8月4日(土) えずこホール(仙南芸術文化センター)
・いわき公演 2018 年8月11日(土・祝)〜12日(日)いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場
http://sillywalk.com/nylon/
<ラジオ>
『根本宗子と長井短のオールナイトニッポン0(ZERO)』 毎週月曜深夜3:00~4:30 ニッポン放送
http://www.allnightnippon.com/nemonaga
<イベント>
『吐夢の秘ダイエット手帖』発売記念 『真夏のダイエット (or リバウンド)歌謡ショー(仮)』
2018 年8月24日(金)東京キネマ倶楽部
http://otonakeikaku.jp/2018miyazakishow/
<雑誌>
RiCE(季刊発行)コラム『美味しいお芝居』連載
https://www.rice.press/
anan (毎週水曜日発売)コラム『根本宗子の妄想スイッチ』連載
https://magazineworld.jp/anan/
twitter @nemoshuu
★川本 成さん お知らせ★
<舞台>/
バクステ
2018年6月13日(水)~17日(日)赤坂レッドシアター
http://no-4.biz/bakusute/
*川本成初演出作品です
時速246億 川本成ソロ公演『独特』
2018年8月22日(水)~26日(日)中野・劇場MOMO
http://www.jisoku246.com/
時速246億「バック・トゥ・ザ・ホーム」再演&新作同時上演
2018年秋
http://www.jisoku246.com/
<LIVE>
ナルウザウクスダの!公開収録Vol.15
2018年5月26日(土)昼の部13:00/夜の部18:00 阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/82791
<映画>
紅葉橋
2018年公開
http://no-4.biz/momijibashi/
ONLY SILVER FISH
2018年秋公開
http://www.mmj-pro.co.jp/onlysilverfish/
<テレビ>
アナログBANBAN
AT-X 初回放送 隔週日曜24:00~24:30
https://www.at-x.com/program/detail/7978
<ラジオ>
ナルウザクスダの!
インターネットラジオステーション音泉 毎週月曜配信
http://www.onsen.ag/
おしゃべり会 戦車部
インターネット放送局 ケーズステーション 不定期配信
http://www.kzstation.com/
blog「Naru’s blog’n boy」 http://ameblo.jp/kawamotonaru/
twitter @Runarurunaru