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少年たちは、なぜ旅に出たのか――? 世界 26 カ国で愛される児童文学をもとにした舞台『チック』上演中!

世界 26 カ国で愛される児童文学をもとにした舞台『チック』が、8月13日(日)より東京・世田谷パブリックシアターにて上演中です。14歳の冴えない少年マイクとロシア移民の転校生チックの二人の少年が、夏休みに盗んだ車で旅をするというロード・ムービーさながらの物語は、児童文学であり社会派作品としての強度も持ち、幅広い年代・客層の心に沁みる味わい深い舞台に仕上がっています。初日コメントとともに舞台写真をお届け!(舞台写真:世田谷パブリックシアター『チック』 撮影:細野晋司)

NEWS & INFORMATION 2017 8/20 UPDATE

ミリオンセラーを誇るドイツ児童文学賞受賞小説『Tschick』を舞台化した『チック』は、14歳の冴えない少年マイクとロシア移民の転校生チックの二人の少年が、夏休みに盗んだ車で旅をするというロード・ムービーさながらの物語。

2011年にドイツで初演、翌シーズンにはドイツ国内で最も上演された演目となり、現在もなお上演の度にチケット完売が続くなど、大成功を収めている作品。また、2016年にドイツで封切られた原作の映画版も、『50年後のボクたちは』と題して9月16日(土)より日本公開を予定している。

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たった数日間の旅で、それまでの価値観が一変するような大きな経験をする二人の 14歳 を演じているのは、柄本時生と篠山輝信。篠山演じるマイクは、クラスでは目立たないタイプだが魅力を秘めたドイツの少年。柄本演じるチックは、不敵な佇まいのアジア系ロシア移民。

本作は、舞台と客席の距離が非常に近くつくられており、まるで少年二人が運転するオンボロ車にともに乗り込み、彼らと一緒にひと夏の旅に出ているような感覚になれる。次第に、観客自身も14 歳の自分と大人の自分の両方の感情が入り交じり、誰もが持っている感覚や思い出を、『チック』という物語を通してあぶり出されることになるだろう。

少年二人を取り巻く人物約20役を演じ分けているのは、土井ケイト、あめくみちこ、大鷹明良の3人。大鷹明良とあめくみちこが演じるマイクの両親だけでなく、登場人物誰もが各々のバックボーンがあることを想像させる、細部まで大変繊細に作り込まれた秀作だ。

日本初演の演出を手掛けたのは、ドイツ・ハンブルグ出身の若手注目株・小山ゆうな。自らの手で翻訳も行い、長年あたためてきた題材の念願の日本初演を手掛けた。

少年たちは、なぜ旅に出たのか――? 旅先でどんな人々と出会うのか。他者を理解したい、理解されたいと心から思える体験となる、マイクとチックのひと夏の冒険。
児童文学であり社会派作品としての強度を持った本作は、幅広い年代・客層の心に沁みる味わい深い舞台に仕上がっている。
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【初日コメント】(8月13日)
小山ゆうな[翻訳/演出]
『チック』の原作者ヘルンドルフは、自身に脳腫瘍が見つかった後に、死を強く意識しながらこの14歳の少年二人の物語を書きました。登場人物たちの背景にはドイツの重い歴史がありながらも、若者たちはそれを悲観せずに、ただ生まれつきそうだった現実として受け入れています。その中で人々が生きている姿を描き、ユーモアいっぱいにきっと誰もが共感できるエピソードを積み重ねていったことが、他にありそうでないこの作品の魅力となったのだと思います。
今日はお客様からたくさん笑いや反応をいただいて、それと呼応するように役者たちもさらに生き生きとしていました。柄本さん、篠山さん、土井さんの若者3人がとても可愛らしく、また大鷹さんとあめくさん演じる大人たちが彼らの世界を大きく包み込んでいます。毎日稽古で見ていたのに、今日も新たな発見があり、魅力の尽きない作品だと感じています。

柄本時生[チック (アンドレイ・チチャチョフ)]
疲れました。でも僕より疲れているのは、台詞の多い篠山さんだと思います(笑)。「何かが壊れたらいい」ということをずっと考えながらやっていて、今日は良い初日でしたが、でも初日ということで構えてしまった自分もいて悔しい思いもあるので、これからも日々試して、壊していきたいです。
この作品の魅力は“14歳”というところで、やっぱり思春期って面白いです。ちょうど人の琴線に触れるような年齢ですよね。ドイツが舞台の作品ですが、どの国でも14歳って同じなんだなと思います。

篠山輝信[マイク・クリンゲンベルク]

登場人物たちは、マイクくんもチックくんも皆、色々なものを抱えていますが、でもそこには常にユーモアがあって、寓話的で、素敵なお話だと改めて感じました。マイクくんはお客様に語りかけながら舞台を進めていくのですが、初日では笑いが起きたり、真剣に聞いてくださって深い沈黙になったり、問いかけたら「うん」ってうなずいてくれた方もいました。お客様一人一人とキャッチボールをしながら、劇場という同じ空間で時間を過ごして、お芝居を一緒につくっていける楽しい役なので、これからも一期一会のお客様との出会いを楽しみたいです。

土井ケイト[イザ/タチアーナ/看護士 ほか]
本当に面白いけど不思議な台本で、演出プランも今までに経験したことのないものだったので、どうなるんだろうと思っていたら、お客様の反応がいいこといいこと! 小山ゆうな流石! って思いました。
この作品に出てくるキャラクターはみんな孤独や偏見の中で必死に生きていて、チックとマイクを取り巻く一人一人にもストーリーがあるので、感情移入できる人物が観る人によって違うと思います。私は、マイクのお母さんが言う「他人なんてクソくらえ、大事なのは自分が幸せかどうか」という台詞に、いつもハッとさせられますし、励まされます。

あめくみちこ[母/フリーデマンの母/カバおばさん ほか]
この独特な戯曲の、独特なユーモアと愛を、お客様が入って緊張感もあるなかでどれだけ伝えられるだろう、伝わったらいいなぁと思っていました。そして今日、お客様が楽しんでくださっているということがだんだんと伝わってきて、背中を押してもらったように感じました。
一人の役者が色々な役を演じるのもこの舞台の面白いところです。お父さんが子どもとして出てきたり、マイクの母役の私がアイスクリーム屋さんや“カバおばさん”を演じて、でも結局アル中の母に戻ったり。そのバランスが絶妙な作品だと思います。

大鷹明良[父/フリーデマン/フリッケ/ライバーほか]
皆さんには「芝居をつくりに来ませんか?」と言いたいです。今日改めて実感したのですが、このお芝居は舞台上だけで完結するものではなくて、どういう芝居になるか、最終的な道筋はその日のお客様次第です。
チックとマイクはこの社会からはみ出したアウトローで、誰からも理解されないと自分たちでは思っていますが、実は色んな人から興味を持たれています。僕が演じる6歳から100何歳までの役も、それを伝えるためにあると思っています。心を閉ざしてしまった人の交流を通して、最後、人間のるつぼというか、大きなことを言ってしまうと、世界の縮図、生と死の縮図が舞台の上に立ち上がれば最高だと思っています。
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【ストーリー】
マイク(篠山輝信)は14歳、ベルリンのギムナジウムに通う8年生。アルコール依存症の母(あめくみちこ)と、その母と喧嘩ばかりで家庭を顧みない父(大鷹明良)、そして気になる女の子だけでなく誰からも見向きもされない、あだ名もつけられない退屈な学校生活…“出口なし”の日常に嫌気がさしている。
ある日そんな生活に大きな風穴をあける、転校生チック(柄本時生)がやってくる。彼はロシアからの移民らしく、風変りで得体のしれない雰囲気をかもしだしている。夏休みが始まり、いつにも増して最悪な気分のマイクの元に、チックは突然車を乗りつけてきた。
――どっか連れて行こうか? 乗れよーー
チックいわく“借りた”というオンボロなラーダ・ニーヴァ(ロシアのSUV)に乗り込み、チックのおじいさんが住んでいるというワラキア(ルーマニアの地方、またはドイツ語で「僻地」という意味)を目指し、二人だけの旅が始まる。
見知らぬ大家族の家で味わう見たことも聞いたこともないけど“めちゃめちゃ美味い”料理、ゴミ山で出会う格好は汚いけど利発な少女イザ(土井ケイト)、いきなり銃撃してきたあとに昔話をするフリッケじいさん…旅先で出会う、一癖も二癖もある人たち。
チックとマイクは、旅の中で、これまで見えていた世界とは違う新しい景色と出会っていく。

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『チック』
[東京公演]2017年8月13日(日)~27日(日)シアタートラム
[兵庫公演]9月5日(火)~6日(水)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
原作:ヴォルフガング・ヘルンドルフ
上演台本:ロベルト・コアル
翻訳・演出:小山ゆうな
出演:柄本時生、篠山輝信、土井ケイト、あめくみちこ、大鷹明良
※詳細はhttps://setagaya-pt.jp/performances/201708tschick.htmlをご覧ください。
※原作の映画版『50年後のボクたちは』は2017年9月16日(土)公開。http://www.bitters.co.jp/50nengo/

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