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『水の戯れ』初日レポート&コメント
11月1日東京・本多劇場で幕を開けた『水の戯れ』初日レポート&コメントがとどきました!(文・武田吏都、撮影・柴田和彦)
NEWS & INFORMATION 2014 11/7 UPDATE
岩松了が“竹中直人の会”に書き下ろした代表作のひとつ、『水の戯れ』が16年ぶりに再演。主演には岩松の舞台初出演となる光石研を迎え、ほかにも菊池亜希子、池田成志、近藤公園ら、魅力的な顔ぶれが揃った。
ほぼ真ん中に存在感のある階段がそびえ、昭和の気配をありありと残す「テーラー北原」が舞台。中年に差し掛かった仕立屋の春樹(光石研)は、10年以上前に自ら命を絶った弟の妻であった明子(菊池亜希子)に想いを寄せ、彼女のための洋服をこっそり仕立てている。「テーラー北原」には、ふらりと舞い戻った兄・大造(池田成志)とその中国人の恋人・林鈴(瑛蓮)が滞在中。近所の交番の巡査・増山(近藤公園)もしばしば上がりこんでは、無駄口を叩いて帰っていく。
増山は、明子とある縁でつながる菜摘(根本宗子)への恋心が芽生え始めたところだ。互いの想いをなんとなく知りながら距離の縮まぬ春樹と明子だったが、とあるきっかけにより、機が熟したかのように結婚の運びとなる……。
欲しくてたまらなかったものを手に入れた男の話である。次男ながら家業を継ぎ、ただただ実直に働いてきたであろう春樹は、長年抱き続けた想いが明子に通じたとき、子供のように取り乱す。「ずっと闇だった、オレの人生」に一気に光が射し、「……生きていけるよ、オレ。」と、生の実感をようやく見出すのである。
だがその半年後から始まる二幕では、結婚した2人に早くも綻びが生じている。大造曰く「もてる女」である明子から見え隠れする他の男の影に怯え、嫉妬を膨らませていく春樹。明子も徐々に精神が不安定になっていく。互いの想いのベクトルが相手に向かっていることは客席からは明らかなのに、どうしてこんなにもすれ違ってしまうのだろう。春樹と明子の対比として描かれるのが、兄・大造と林鈴のカップル。想いのベクトルの話でいえば、風来坊であるらしい大造のそれは、真っ直ぐ林鈴に向かっているかは判然としない。そもそもこの2人には育った文化が異なるというハンデがあり、顔を合わせれば喧嘩ばかり。にも関わらず、不思議な安定が彼らを支えている。男女の仲は本当に不可思議だ。
ラスト、春樹は衝撃的な行動に出る。岩松作品にはままあることだが、今回は不思議と、その行動がストンと自分の中に入ってきた。それだけ、恋する春樹の気持ちにぴったりと寄り添えたということなのだろう。大人の俳優たちが演じる大人のメロドラマだが、初めて異性を好きになったときの瑞々しい感覚がよみがえった。そして時間が経ってもなお、じんわりとした余韻がいまだ消えない。
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以下、岩松了さん(作・演出・出演)、光石研さん(出演)のコメントもお届けします!
岩松了
「自分で言うのもなんですけど、良く出来たホンだなと思って(笑)。僕のはややもするとわかりにくいって言われるんですけど、自信を持って一番わかりやすいと言える作品だと思います。
初日を迎えるにあたって、現場の我々が楽しいという実感があるのが、一番信じるべきことのような気がします。褒められたりけなされたりする仕事ですから、そこらへんで動揺しないようにするためには、一緒に作っている身近な人間がお互いに信じあっているんだって考えるべきだし、いま実際そういう現場だから、とてもいい感じだと思います」
光石研
「初めて岩松演出を受けましたけど、楽しかったですね、ほんとに。嘘でもなんでもなく。岩松さんの稽古は百本ノックだ千本ノックだって噂で、もちろん何回もやりましたけど、やればやるほど実になっていく感じもわかったし。それにすごくわかりやすかったです。難しいことを言わず、それぞれの役者に合わせて端的にちゃんと指示してくれるので。
岩松さんの世界にいると、家に帰ってもそれがそのまんま続いてるような。しみついている、しみつかせていただいた感じがします」
M&Oplaysプロデュース『水の戯れ』
作・演出:岩松了
出演:光石研、菊池亜希子、近藤公園、瑛蓮、根本宗子、岩松了、池田成志
【東京公演】2014年11月1日(土)~16日(日) 本多劇場
【大阪公演】2014年11月22日(土) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
【名古屋公演】2014年11月24日(月・振休) 名鉄ホール
【神奈川公演】2014年11月29日(土)・30日(日) KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
お問い合わせ 森崎事務所M&Oplays03-6427-9486(平日11:00~18:00)