インタビュー & 特集
INTERVIEW! 『新版義経千本桜』水夏希さん×佐野岳さん
『新版義経千本桜』で30-DELUXに初出演の、源義経役・水夏希さんと狐忠信役・佐野岳さん。歌舞伎の三大名作の一つ『義経千本桜』を大胆にアレンジし、台詞と殺陣で物語を紡ぐアクションプレイに濃縮して作品の真髄を見せる作品です。袴姿もバッチリ決まったお二人に話を伺いました。(文・大原薫、写真・浅沼ノア)
INTERVIEW & SPECIAL 2015 7/19 UPDATE
――『義経千本桜』を題材としているとのことですが、どう描かれているのですか?
水 長いストーリーをギュッと凝縮して見せているんです。『義経千本桜』の代表的なエピソードも全部入っていて、すごくわかりやすくなっていると思いますね。
――歌舞伎では主人公でない源義経が本作で主役になっているのが、歌舞伎とは大きく違うところです。
水 もう昔の話ですから、実際の義経がどんな人物だったかは誰にもわからないですよね。でも、(脚本の)西森(英行)さんの手によって「女性だったらこんな生き方だったんじゃないか」と解き明かされている。一本筋が通ったものになっています。
――水さんが演じる源義経は、女性であって男役ではないということですよね。
水 そう、袴を履いて立ち回りもして、でも男役じゃないというのはなんだか自分でも不思議で(笑)。女性であることを隠して義経として生きているわけだから、あまり女性としての部分が見えない方がいいかな、と思って演じているんですが、それでも男役ではないというところが自分では難しいですね。
――以前、水さんが演じられた『ベルサイユのばら』のオスカルと通じるものがあるようにも思いますが……。
水 ああ、そうですね。でも義経とオスカルはメンタルが全然違うんですよ。「仲間と共に戦い、戦の華となって散ろう」というオスカルの考え方は私自身と近い部分があるんです。でも、義経は「生き延びたい」という思いが強い。そこが初めはなかなか理解できなかったですね。ある友人にそう話したら「それが女性だということじゃないですか? 女性って自分の生命を守りたい本能があると思う」と言われて。「ああー、なるほど」と思いましたね。
――確かにそう言われると、義経が奥州まで落ち伸びた理由にも納得がいきますね。そして、佐野さんが演じるのは義経の家臣、佐藤忠信。
水 岳君の忠信、最高ですよ!
佐野 ええっ、そうですか?
水 ラストもすごくいいしね。
――しかも、歌舞伎の『義経千本桜』と同様に子狐の化身で、鼓の皮になった親を慕い佐藤忠信の姿になって現れ、その鼓を持つ静御前を守ろうとする「狐忠信」なんですよね。
佐野 ファンタジーというか、不思議な設定ですよね。今はまだどう演じようかと決めきれていないので、本番までに詰めていきたいなと思います。
水 でもね、岳君がやっているのを見ると何か納得できる。私が舞台で佐野君を見たのは『龍が如く』と『タンブリング』だったから、カッコよくて強い人というイメージがあったんですよね。でも、演出の伊勢さんは「子狐のイメージでやってほしい」と言っていて。
佐野 やっていて恥ずかしいんですけどね。伊勢さんから言われたのは「800人に媚びろ!」と(笑)。
水 小動物系みたいなイメージがぴったり(笑)! きっとお客様も母性本能をくすぐられると思う。
佐野 公演前に源九郎狐を祀っている源九郎稲荷神社にも行ってきて、お守りをゲットしてきたんです。
水 稽古中から(お守りを)ずっと腰につけてるよね。
佐野 そうなんです。夏希さんも鎌倉に行かれたんですよね。
水 そうそう、義経が(源頼朝にあてて)腰越状を書いた満福寺にも行ってきたんですよ。実は私は元々あまり歴史物にあまり興味がなくて(笑)知識がなかったんだけど、もっと知りたいと思って大河ドラマの『義経』も1年分全部見ました。面白かった! 名優が演じてらっしゃるから、登場人物のキャラクターがよくわかるんですよね。
――水さんと佐野さんのお互いのご印象を教えてください。
水 岳君を最初に見た『タンブリング』や『龍が如く』はゴリゴリの役だったので、もっと「オラオラ」みたいな感じかと思ったら、全然そうじゃなかった
佐野 意外とへにゃっとしてた?
水 ふふふ(笑)。だから、今回は素の岳君が生かせる役なのかなと思って。
佐野 夏希さんは面倒見がよい方で、コミュニケーションもしっかり取ってくださるんです。助けられましたし、「座長はこの人しかいない!」と思いましたね。
――30-DELUXといえば殺陣が見どころになると思うのですが、今回は?
佐野 夏希さんは殺陣が多いですよね。
水 そう、後半はずっと殺陣。こんなに殺陣をやったことはないですよ。でも、それで後半追い詰められていく義経の心情が表現しやすいかなと思いますね。岳君の殺陣はちょっと特殊で。
佐野 妖術を使いながら、中華系の動きもあるので複雑なんです。きれいに見せないといけないのがです。
水 でも、身が軽くてすごい技をやっているから「おおーっ」ってなるね。殺陣指導の方もすごく褒めてたもの。
佐野 夏希さんもすごいですよ!
――水さんが、和物の殺陣というと?
水 (『星影の人』の)沖田総司以来ですが、そのときは剣の名手の役なのにちょっとしかやらなかったので。今回は本当に殺陣が多い。でも、やればやるほど楽しくなってきますね。
――今回の座組の皆さんはいかがですか?
水 私はとても心地よくやらせていただいています。皆一生懸命だし、全員で力を合わせて一つのものを作り上げようという「劇団感」があるので。
佐野 本当に尊敬できる方たちばかり。僕は基本的に怠け者なので。
水 えっ、そうなの? 一人でもずっと稽古して、一生懸命やってるじゃない。
佐野 全然ですよ。僕が質問する前に皆さんが教えに来てくださるんです。本当に素敵な方たちで、「それに比べて俺は何てちっぽけな人間なんだ」とか(笑)反省したくらい。感謝ばかりです。
水 そう、殺陣がわからなくても、何回も何回も付き合ってくださるのが本当にありがたいです。
――見どころは?
佐野 どこか一つのシーンでなく全体を見ていただきたいんですが、シリアスな中にも笑えるシーンも盛り込まれているので、最後まで肩の力を抜いて見ていただけると思います。
水 そう、堅苦しく見る感じではなくてね。
佐野 楽しめると思いますよ。
水 笑いと涙のバランスがいい。すごく笑えるところとすごく泣けるところがあるのが、30-DELUXのいいところですよね。あとは、後半の殺陣も見どころになると思います。こんなに泣き叫んで感情を吐露する芝居をするのも初めてですが、どうやって毎公演マックスまで持っていくかが、自分にとっての挑戦になると思う。
――佐野さんが挑戦しているところは?
佐野 やっぱり殺陣ですね。去年は『仮面ライダー鎧武』をやっていてアクションも多かったんですけど、刀を持っての殺陣は今回で二回目。これをものにできたら強いなと自分でも思うので、頑張ってます。
――お客様にはどこを楽しみにしていただきたいですか?
水 いろんなエピソードがあって、どの人にも見せ場があるんですよ。1回でももちろん楽しめるけれど、2度3度見ると「ああ、ここでこんなことが」と思うような伏線も見えてくると思う。噛めば噛むほど味が出る作品になるのではないかと思います。
佐野 全体的に殺陣が多くて、皆の運動力もすごい。力が入っているシーンは大迫力だと思うので。
水 アクションプレイだものね。それに、(『義経千本桜』が初演された)文楽を生かした人形振りや、能舞台風の舞台美術になっていたり、歌舞伎の「ツケ」の技法も取り入れられていたりして、いろんな要素が混じり合っているのも面白いと思いますね。歌舞伎で『義経千本桜』を全編上演したら10時間以上になるらしいのですが、今回は2時間半ほどでスピーディにお見せします。お客様も泣いたり笑ったり、忙しいんじゃないかと思いますよ(笑)。
みず・なつき●元宝塚歌劇団・雪組トップスター。千葉県出身。在団中は『エリザベート』『ソロモンの指輪/マリポーサの花』『カラマーゾフの兄弟』などで主演、2010年の退団後もさまざまな舞台で女優として活躍中。
さの・がく●愛知県出身。第24回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストグランプリを受賞し、芸能界入り。舞台『SAKURA』で俳優デビュー。『仮面ライダー鎧武/ガイム』に主演し人気を博す。今年は舞台にも精力的に出演中。
『新版義経千本桜』
東京公演 2015年7月16日(木)~20日(月・祝)サンシャイン劇場
名古屋公演 2015年7月22日(水)~23日(木)名古屋市北文化小劇場
福岡公演 2015年7月28日(火)福岡市民会館
大阪公演 2015年7月30日(木)~31日(金)サンケイホールブリーゼ
作:西森 英行
演出:伊勢 直弘
音楽:和田 俊輔 / 南 ゆに
出演:水 夏希
新垣 里沙
佐野 岳
聖也(Wキャスト)
森 大(Wキャスト)
小笠原 健
田中 精
武藤 晃子
谷口 敏也
大山 将司
枝 尚紀
川口 莉奈
金田 瀬奈
中村 悠希
加藤 雅人
伊与田 良彦
村瀬 文宣
田巻 篤
清水 順二
馬場 良馬
坂元 健児