インタビュー & 特集
INTERVIEW! フランク・ワイルドホーン氏(3回連載)Part.2
ミュージカル『ジキル&ハイド』や『ビクター/ビクトリア』の作曲家、フランク・ワイルドホーン氏。12月『GOLD~カミーユとロダン~』の上演を目前に控え、2012年には『BONNIE&CLYDE』『ジキル&ハイド』『ルドルフ ザ・ラスト・キス』とワイルドホーン作品の上演は続く。前回に引き続き、作品にまつわるお話を伺った。(写真/熊谷仁男、取材・文/高橋彩子)
INTERVIEW & SPECIAL 2011 11/18 UPDATE
——最初に作曲を全面的に手がけたミュージカルは97年の『ジキル&ハイド』ですが、95年、ジュリー・アンドリュース主演の『ビクター/ビクトリア』の一部作曲も手がけておられますね。
『ビクター/ビクトリア』は、『ジキル&ハイド』と同じレスリー・ブリカッスの作詞で、82年にまずミュージカル映画として誕生したわけだけど、作曲を手がけたヘンリー・マンシーニが、舞台版完成前に亡くなってしまったんだ。
一方、僕は、『ジキル&ハイド』をブロードウェイ開幕前に、プリキャスト・レコーディングというかたちでCDを2回出していた。一回目は、コルム・ウィルキンソンとリンダ・エダーによる最初の録音版で90年のもの(※1)、二回目は、こちらのほうがヒットしたんだけど95年のもの(※2)。舞台のほうもヒューストンで初演したよ。
それらのCDや、僕がリンダ・エダーのために作った曲を聞いてくれたジュリー・アンドリュースが、僕に「『ビクター/ビクトリア』のミュージカルを完成させてほしい」と声をかけてくれたんだ。
それで95年、僕が新たに書いた曲を加えたミュージカル『ビクター/ビクトリア』が開幕したというわけ。その後、97年に『ジキル&ハイド』がブロードウェイで開幕したんだ。
つまり、僕の最初のブロードウェイ作品は、ジュリー・アンドリュースのための書き下ろし曲だったというわけ。すごいことだよね!
——なるほど。まず『ジキル&ハイド』録音版が出て、次に一部楽曲の作曲を手がけられた『ビクター/ビクトリア』のブロードウェイ初演があり、そして『ジキル&ハイド』がブロードウェイ初演されたという流れなのですね。
その通り。『ジキル&ハイド』は開幕前から世間へ出回り、みなさんの耳になじんでいたわけ。
思うに、ハミングしながら劇場を後にするのは素敵だけど、もっと良いのは、劇場に来る前からお客さんがハミングしていること。アメリカではそれができたということが誇らしいし、そういう意味で、じっくりと作った『ジキル&ハイド』は特別な作品だね。
僕が劇場音楽を手がけることを知った時、周囲は「ポップスの世界で成功しているのに、わざわざ苦労しに行くなんて」とあきれ顔だった。
でも、ヒューストンでの初演の演出家グレゴリー・ボイドは、僕のもっているポピュラー音楽の感覚をうまく生かしてくれたし、僕のポップ界のチームを引き連れて、最先端の技術を駆使して作曲することができた。
あまりにも楽しくてロマンティックな体験だったから、それ以来、劇場芸術の虜になってしまったんだ(笑)。
——「ハミング」とおっしゃいましたが、まさにワイルドホーンさんの楽曲は、誰もが楽しく口ずさめる音楽です。ポップスの親しみやすさをミュージカルでも意識されているということでしょうか?
そうだね。みんなにメロディーをおぼえてほしいし、できる限り、多くのひとの心の琴線に触れる音楽を作りたい。世の中には、どれだけ頭が良いかを見せつけたがる作曲家もいるけど(笑)、そんなのつまらないよね。
僕にとって、作曲は頭でやるものではなく、もっと感覚的・肉体的な作業なんだ。世界の至るところで音楽を分ち合いたいし、僕自身、自分の作品の一観客なんだよ。
※1 「Highlights From Jekyll & Hyde(Concept Recording)」
※2 「Jekyll & Hyde: The Complete Work」
(Part.3へ続く)
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