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インタビュー & 特集

2014-0410_MT-0005

INTERVIEW!ドラマライブラリー『死神の浮力』牧田哲也さん

伊坂幸太郎の小説『死神の浮力』が舞台化され、4月22日より下北沢・本多劇場にて絶賛公演中です。シリーズ第1弾『死神の精度』の舞台版『7Days Judgement—死神の精度—』に引き続いて、脚本・演出を手がけているのは和田憲明さん。死神・千葉役のふかわりょうさんをはじめ個性豊かなキャストが揃ったこの作品で、殺人犯・本城崇を演じているのが、牧田哲也さんです。「非道な男」という役柄に果敢に挑む牧田さんに、初日を間近に控えた稽古場でお話をうかがいました。(取材・文/金井まゆみ、撮影/増田慶)

INTERVIEW & SPECIAL  2014 4/24 UPDATE

——この作品は「限りなく芝居に近いリーディング公演」と銘打たれています。一般的な芝居や朗読劇とはどう違うんでしょうか?

これは和田憲明さんの演出方法のひとつですが、「リーディング」と言いつつ役者はだいたいのセリフを入れているんです。和田さんの言葉を僕なりに受け止めるなら、「次、セリフなんだっけ」なんて頭によぎると、役として自由な状態でいられなくなってしまう。だったら台本を片手にやることで、セリフの心配をすることなく、役として自由に生きる状態が続く、自由にいられるパーセンテージが上がる、ということなんです。だから普通のリーディング公演とは違って台本はあまり見ないし、動きも多少ある。空気感や役者さんの心の揺れ具合といった“生”な感じが、すごく強く出ていると思いますね。僕自身もすごく惹きつけられる演出です。

和田さんには役として限りなく自由にいることを求められていて、セリフの間がつまったり逆に空いたり、早口になったりゆっくりになったり、ということを意識的にするのではなく、役として心がそう流れているから自然にそうなった、でないといけない。その感覚はなかなか難しいけど、自分でも思っていなかったような言葉のニュアンスが出たり、攻撃的になったりする瞬間があるんですよ。すごく楽しいですね。その中でも微妙に役になりきれていなくて似たようなテンポが続いたりすると、厳しくダメ出しされますね。自分では役として生きていたつもりでも、段取りをふっと意識するとすぐに見透かされてしまう。役としての空気感を大切にして、稽古し、本番に臨みたいと思います。

 ——牧田さんが演じる本城崇は、女の子を殺したものの証拠不十分で無罪となる男。非道な役柄に対して、どのように取り組んでいますか?

  稽古に入る前のイメージとしては、表向きは世渡り上手というか、好青年という雰囲気で、でも裏で残酷なことをやっている。だからまずいつもの僕がもっと好青年モードになった感じを表の顔として出して、その裏の残酷さとの対比を深めれば深めるほど、底知れなく、よけいに怖く見えるんじゃないかと思っていました。でも稽古に入ってみると、憲明さんに「自分の延長線上で」って言われて。なので「良心のない人間だからこういうふうにやろう」とはあまり深く考えない。普段の自分の中でもちょっとドシッとしているところの延長線上で作って、「もっとこういうふうにやった方がいいな」というものを見つけていきたいと思います。

本城が殺した女の子の父親である山野辺遼と話すシーンが結構あるんですけど、そこではイニシアチブを握って会話を支配していく楽しみを見出だしたいですね。そうすれば自ずと、場を仕切っていく感じになるんじゃないかと思います。だから、「ここにこう食いついてきた」「じゃあここで落とそう」って相手の反応をうかがう部分も大きいですね。僕自身は普段いじられることが多いけど実は意外といじりたいタイプだったりもするので(笑)、この役の「上に立っている」感じはすごく楽しい。自分の中に眠っている何かが目覚めてくる、そんな感覚ですね。

 ——この作品の前に出演されていた『熱海殺人事件 Battle Royal』を通じて、この作品に反映されていることはありますか?

 『熱海~』で演じた熊田留吉は、木村伝兵衛に転がされまくる側でした。KENCHIさんと馬場徹、2人の伝兵衛がいたんですが、KENCHIさんは大人というか、僕の言うことを聞いた上で転がしてくる。逆に馬場は、何か言った瞬間もう次のことが始まっている。どんどん違うことをやっていくから、こっちもどんどん拾っていかなきゃいけない。しかも切り返しはぼんぼん来る。その鋭いエッジに揺さぶられる感じが、すごく疲れるんです。今回の『熱海~』は僕にとっては再演でしたが、初演の時には膨大なセリフ量に追われて自由になりきれなかったところがたくさんある。でも再演ではセリフはもう入っているし、自分の中で熊田としての流れができあがっていた。だから、その時起きるハプニング――調書が落ちたり、調書から写真が落ちたり、僕の拳銃が落ちたり、いろいろあったんですけど(笑)――にも動じることなく反応していけたんです。今回、憲明さんに求められている「自由な状態」というのは、それに近い感覚じゃないかと思いますね。そういう意味でも、『熱海~』を経験できたことはすごくプラスになっていると思います。

 ——そうして現在取り組んでいる中で、どのような手応えを感じていますか?

  この前までは普通にテーブルと椅子を並べて、お互いに向き合う形で本読みをしていたんです。でも今、劇場の広さに近い稽古場に移って、より本番に近い状態でやっています。本番では、みんな客席に向かって立って、お互いの顔が見えない中、でも相手の空気を感じながら芝居をしなきゃいけない。僕の立つ位置は後ろの方で、前にいる方たちの後ろ姿しか見えないから、声の音色や反応、うっすら見える相手の動きとかを繊細に感じ取って、その上で自由にやっていかなくちゃいけないんです。本当に難しいですね。憲明さんには「今までの稽古どおりの感じで」と言われるけど、やっぱり目線の対象がいない感覚がまだ掴みきれていませんね。

 憲明さんに求められている「自由」「生っぽさ」というのは、芝居の内容による部分もありますけど、まずどんな芝居でも必要とされること。「相手がこういうふうに来るから」「こういう感情があるからこういう口調になって」とか、芝居の流れに沿っていかなければいけないのは当然ですが、やっていく中で生の感情を感じられると、やっぱりすごく楽しいですね。その上でさらに乗ってくると、もっといろいろなものが見えてくる瞬間がある。逆に、まだ乗り切れていなかったり不自由なパーセンテージが高かったりすると、すぐに憲明さんに突っ込まれる。そこで「ああ!」と気づくことがたくさんあります。そこをクリアしていきながら、本番までにいい感じでつくり上げていきたいと思いますね。

 ——話は変わって、牧田さんにとって俳優としての転機になった作品や役についてうかがいたいのですが。

  僕は不器用な人間なので、いろいろな舞台でターニングポイントになる経験をさせてもらってきたと思います。でも最初に考え方などが変わったのは、PARCO劇場でやった『吸血鬼』(2010年)ですね。僕は『テニスの王子様』やD-BOYS STAGE以外の、ベテランの役者さんたちに交じって出演する舞台は初めてでした。その時の僕は、役に近づこうとしてつい「あれをやっちゃダメ」「これをやっちゃダメ」と消去法でつくろうとしていた。今思えば、すごく不自由でしたね。だから行き詰まって、悩んでしまっていたんです。そんな時に、主演の鈴木砂羽さんが「牧田哲也っていう人間が面白いんだから、それを舞台上でやっちゃえばいいんじゃない」って、あっけらかんとおっしゃって。それが今でも忘れられません。それを聞いた瞬間、肩の荷が下りて、それこそ普段の僕の延長線上でいろいろな可能性を試して、稽古の中で淘汰していけばいい。そう発想を逆転させることができました。おかげで、本番では本当に初歩的なことではあるけど「ベテランの方たちがいる中に馴染んで立っていた」とほめていただいたりして。その時、自分でも何か変われたような気がしました。

 ——その後の作品の中で、特に大きな経験となったのは?

  シアタートラムでやった『千に砕け散る空の星』(2012年)ですね。難解な戯曲で、なかなか理解できなくて。面と向かって向き合えない家族の話で、僕はフィリップという役を演じました。僕自身も、特に父親には素直に「ありがとう」と言いにくい部分もあるので、向き合えない気持ちはよくわかるんです。でも、ある流れで話している時に急に別の話を始めたりする。なぜそのセリフが発せられるのか、意味がわからないまま稽古していました。そこで、演出の上村(聡史)さんが言ってくれるフィリップの感情の流れや自分で考えたことをまとめて、ノートに書いていったんですよ。次の日に稽古場でそれを見ながらつくろうとしたら、上村さんが「それは解釈の提示でしかない」って。言われたことの意味が、全然わからなかった(笑)。

 その時は「そういうふうに思ったからやりました」としか思えなかったんです。でも「ここではその感情は表に出ない」「その感情がここでは出る」ということが根底にあって、その上で場の空気を感じたり人のセリフを聞いたりしながら反応していかなくちゃいけない。本番を通じて、それを理解することができました。

 その時に「すごく良い」と言っていただけたのは「相手の言うことを聞く芝居」。シアタートラムという、誇張せずに自分が感じるそのままでお客さんに伝わる、無理なくお芝居ができる空間だったことも良かったんでしょう。劇評にも名前が載ったりして、とてもほめていただけたんです。これは前に三浦友和さんと話した時に言われたことですけど、「役者業は物差しがないから、結局好みで判断される」。それはそのとおりで、でもひとつの物差しとして劇評というのは大きいと思います。そこで評価していただけたことは、自信につながりましたね。

 その後に出演したDステ11th『クールの誕生』(2012年)でも、共演の三鴨絵里子さんが「マッキー(牧田)は聞くことが良くて、そのフィルターがすごくきれいだ」って言ってくださった。三鴨さんは森山未來さんを例に出してくださったんですが、森山さんは周りからいろいろなものを受けてそれに反応していくことにすごく長けている。でもそのフィルターが個性的。僕の場合はそのフィルターがきれいで、そのまま純粋に言葉を出してくる。そういうところが魅力的だ、と。森山さんを引き合いに言っていただけて、光栄でしたね。それも『千に砕け散る空の星』があったからこそ、そういうふうに変われたんだと思います。僕は不器用なので毎回何かしら壁がありますが、周りの方にご迷惑をかけながらもいろいろと学べていることは多いですね。

 ——そうした作品を経ての『死神の浮力』。千秋楽までに達成したい目標はありますか?

  本多劇場という広い空間なのでいろいろと難しいところがあるかもしれませんが、会話を支配するだけじゃなく、劇場そのものの空気感を支配できたらと思いますね。特に中盤くらいでは、どんどん崩されていく描写もあるけど、ストーリーテラーの役割もあるんですよ。そこで空間を支配できたら、いいエッセンスになるんじゃないかな、という感じがして。ぜひそれをやりとげたいと思います。

 

★牧田さんからのメッセージです★


PROFILE   まきた・てつや
1984年6月7日生。愛知県出身。第3回D-BOYSオーディション準グランプリ&オリコンエンタテインメント デビュー賞を同時受賞。主な出演作に舞台『熱海殺人事件 Battle Royal』、映画『HK 変態仮面』、ドラマ『市長はムコ殿』『半沢直樹』など。
公式サイトhttp://www.d-boys.com/


公演情報
ドラマライブラリー『死神の浮力』—限りなく芝居に近いリーディング公演—
4月22日(火)〜28日(月)本多劇場
原作:伊坂幸太郎『死神の浮力』(文藝春秋刊)
脚本・演出:和田憲明
出演:鈴木省吾、ふかわりょう、MEGUMI、牧田哲也、遠藤留奈、鬼頭真也、原慎一
公式サイト http://www.watanabepro.co.jp/information/shinigami.html
問合せ サンライズプロモーション東京 0570-00-3337

 

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