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インタビュー & 特集

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INTERVIEW!『冬眠する熊に添い寝してごらん』井上芳雄さん Part.2

井上芳雄さんのロングインタビュー後編です。現在、蜷川演出『冬眠する熊に添い寝してごらん』に出演している井上さん。10年ぶりに蜷川さんが井上さんにかけた言葉とは……。(文/武田吏都、写真/齋藤ジン)

INTERVIEW & SPECIAL  2014 2/7 UPDATE

<Part.1から続く>

――そうして臨んだ稽古初日、蜷川さんから「上手くなったな」という言葉をいただいたそうですね。

稽古に入る前から「優しくするからね」とは言われていたんですけど、やっぱりうれしかったですよね。その後もずっとそう言ってくれたから、あまり嘘でもないのかなって。だから今回、否定的なことはほとんど言われなくて。

――逆に拍子抜けしませんでしたか?(笑)

でもやっぱりすごいのは、蜷川さんの前でやるというだけで誰も手を抜かないというか。たとえ褒められ続けても「明日はダメなんじゃないか」とか「もっと蜷川さんを喜ばせるアイデアがないかな」とか。そしてもちろんシーンはどんどん進んで増えていくからその繰り返し。だから必死でしたね、この稽古は。

――それこそまさにこの10年での成長というか。

この引き出し使ってみようっていうのは明らかに10年前よりあるでしょうけど、ただ何ができるってよりは、違うのは心構えというか。とにかく準備をするだけしてあとはやってみようと思える勇気――自信というのかわからないですけど、そこはあったのかなあ。あと恥ずかしさというか、躊躇はなくなったかもしれないですね。恥らっても何も得することはないっていうのはわかったかもしれない。

――そこまで剥き身にされたのは、やはり蜷川さんという演出家の存在が大きいんでしょうね。今回もご自身のポリシーに則って、脚本に書かれていることをある意味愚直なまでに、舞台上で表現しようと務められていました。命を削ってやられているのを目の前で見せられると、どうしたって心が動かされるというか……。

ほんとそうですね。蜷川さんのあの“姿勢”にどうにかついていきたいというか。で、「わかんねえなあ」とか「こんなんできねえよ」って苦しんでいる姿も隠さないから余計、じゃあこのシーンを成立させるにはどうしたらいいのかなってじっくり考えたりとか。そういうのは今までの自分の意識にはあまりなかったことなんですけど、その、普段よりも作品のことを考えるっていうのがすごく面白いことだなと思ったんですよね。『ハムレット』のときは恐怖ばかりが立って蜷川さんの力になりたいも何もなかったんですけど、今は蜷川さんのやり方を楽しめる自分がいるんだなっていうのは思いますね」

――ちょっと話は戻ってしまうんですけど、これまでもいろんな場面はで『ハムレット』はトラウマだったというような話はされていますよね。ただ実際にあの舞台を観た者からすると、ご自身が言うほどのことはなかったけど……といつも疑問に思っていたのですけど。

 あー、やっぱり僕がちょっと言い過ぎている感もあるのかもしれないですね。ほら、蜷川さんの稽古で大変な目に遭ったって言ったら「ああ~」って共感してもらいやすいっていうのはあるのかも(笑)。ただいつも思うんですけど、本番で観てもらうものっていうのは自分の努力はもちろん周りの助けを借りてどうにか形になっているものを見ていただいているんで、そう酷いことはあまりないと思うんですよ、僕に限らず(笑)。だから周りからはどう見えていたかわからないけど、やっぱり稽古の段階での「はー、もうこれ全然ダメだな」っていう自分の感覚がとても大きかったってことなのかな。あとそういう経験がほぼ初めてでしたし。なんていうのかな、当時はどこかで才能があるんじゃないかと思ってたんでしょうね(笑)。歌とか踊りほどやってはいなかったけど、お芝居の感性みたいなものも自分は持ってて(笑)、一生懸命やればできるんじゃないかみたいなうぬぼれっていうか、根拠のない自信みたいなのがあったんじゃないかと思います。そしてそこをはっきりと「お前ヘタだぞ」って言ってくれる人もなかなかいない中で、初めてぐらいに言ってくれた人が蜷川さんだったんだと思います。

――当時は今ほどストレートプレイの経験はなかったわけで、やっぱり「自分はミュージカルの人なんだから」というようなアウェイの感覚もあったんでしょうか?

 ありましたね。僕はほんとは歌が武器なんだから、これだけで評価されてもな、みたいな甘えはやっぱりあったんじゃないかな。最後の打ち上げで歌ったら(藤原)竜也くんが「井上くんって歌上手いんだね」って言われたりして(笑)、周りの人も「この人、何の人なんだろう?」って感じがあっただろうし。だからあのときはこんな台詞だけの芝居なんて金輪際やらないと思ったんです。やらないというか、出来ないだろうと思いました。そういう恐怖心がありつつ、でもどこかで絶対に必要だって思いはずっとありました。今もあるけど。

――そのお芝居に対する畏怖のようなもの、でも俳優にとって絶対に必要なものという思いが早い段階で同時に芽生えたのは、井上さんのその後の成長や今の活動を考える上でも大きかったですね。

 最初に『ハムレット』の体験があったことで全然違ったと思いますね。ミュージカルといえどもお芝居をしていかなきゃいけないわけで、ナメたら大変な目に遭うっていうか。自分には一生かけても出来ないかもしれない、お芝居ってものすごいもんだっていう思いは以来、ずっとありましたね。 

――この先の話も少し聞かせてください。発表されている作品は『ダディ・ロング・レッグズ』『シェルブールの雨傘』『モーツァルト!』の3本で全部ミュージカルですね。

そして全部再演なんです。いつも1年の間での作品のバランスは考えるんですよね。新作と再演とか、ストレートプレイとミュージカルとか。だからちょっと再演が多いなと思うんですけど、これ(『冬眠する熊~』)1本で新作3本分やったぐらいのインパクトはあると思うんで、そういう意味では(笑)バランスはいいかなと思いますね。ただこれを経てどうなるかはまだわからないですけどね。再演だから楽とかいうことはないんですけど、自分の中で物足りなく思ったらイヤだなとは思います。でもこの作品をやって、やっぱりすごい刺激的だなと思ったんです。これがありだったらほとんどのことがありだろうから(笑)、つまり演劇って何でもありなんだなと思ったし。だから刺激を求めているし、もっともっといろんな演劇をやってみたいって今思うんです。その中で再演にどう挑むのか。自分でもどうなっちゃうのか(笑)、興味があります。

 

井上芳雄●いのうえ・よしお
1979年、福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科在学中の2000年に『エリザベート』のルドルフ役でデビュー。以後、ミュージカルや舞台を中心に活躍。06年読売演劇大賞杉村春子賞、08年菊田一夫演劇賞、13年読売演劇大賞優秀男優賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞 他を受賞。出演作にミュージカル『モーツァルト!』『ウェディング・シンガー』『キャンディード』『三銃士』『二都物語』、舞台『ハムレット』『ロマンス』『組曲虐殺』『イーハトーボの劇列車』、映画『おのぼり物語』『宇宙兄弟』『プレーンズ』など。本年は3月~4月『ダディ・ロング・レッグズ〜足ながおじさんより〜』、9月『シェルブールの雨傘』、11月~12月『モーツァルト!』に出演予定。


『冬眠する熊に添い寝してごらん』
2014/1/9(木)~2/1(土) Bunkamura シアターコクーン
2014/2/7(金)~2/12(水) 森ノ宮ピロティホール

作:古川日出男
演出:蜷川幸雄
出演:上田竜也、井上芳雄、鈴木杏、勝村政信
 立石涼子、大石継太、冨樫真、間宮啓行、木村靖司、石井愃一、瑳川哲朗、沢竜二ほか

 

 

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