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SPECIAL! ミュージカル『モンテ・クリスト伯』舞台レポート
12月29日まで日生劇場にて上演中のミュージカル『モンテ・クリスト伯』、舞台写真&観劇感想をお届けします!(写真提供/東宝演劇部、文/中村恵美)
INTERVIEW & SPECIAL 2013 12/25 UPDATE
自分の観劇日から随分たってしまいましたが、まだの人には滑り込みでも観劇していただきたいので、「劇場へ急いで~!」とオススメするのが、ミュージカル『モンテ・クリスト伯』。 『三銃士』でおなじみのアレクサンドル・デュマ原作で、日本では『巌窟王』というタイトルでもおなじみの復讐劇です。音楽は、いまや日本で次々と作品が上演され、ミュージカル界ですっかりおなじみのフランク・ワイルドホーン氏。欧州や韓国で大ヒットしており、作品クオリティー的にも太鼓判のミュージカルです。
主人公モンテ・クリスト伯ことエドモン・ダンテスに石丸幹二さん、ヒロイン・メルセデスに花總まりさん、悪役3人組には、モンデゴの岡本健一さん、ダングラールの坂元健児さん、ヴィルフォールの石川禅さん、さらには女海賊ルイザに濱田めぐみさん(Wキャストの彩吹真央さん)、恩人のファリア神父に村井國夫さん、船主モレルに林アキラさん、友人であり使用人のジャコボに岸祐二さんと、ミュージカルファンなら、キャストを聞いただけでも、その音楽的な出来上がりにワクワクしてくるはず! もちろん、幕開きから、その期待は裏切らないのでした。みなさんの安定感は「さすが!」の一言。
モンテ・クリスト伯/エドモン・ダンテス 石丸幹二さん
メルセデス 花總まりさん
ヴィルフォール 石川禅さん
ダングラール 坂元健児さん
女海賊ルイザ 濱田めぐみさん(Wキャスト)
女海賊ルイザ 彩吹真央さん(Wキャスト)
エドモン 石丸さんと ファリア神父 村井國夫さん
ジャコボ 岸祐二さん
登場シーンの若い石丸エドモンと花總メルセデスの、美男美女の組み合わせに、いきなり釘付けです。クルクルパーマ頭エドモンもなんだか新鮮でかわいいし、民族衣装のメルセデスもキュート。
いつまでも見ていたいカップルだなーと思っていたら、あっという間に引き裂かれてしまいます。展開が早い……。さすがは復讐劇! 辛酸をなめて復讐にいたるところからが見せ場なんだなぁ、と思っていたのですが……。
詳しいストーリーは東宝さんの公式サイトにお任せするとして、このお話は一言で言えば、愛する人も財産も地位も、すべてが一度に奪われてしまった男の復讐と愛の物語。 原作やこれまでさまざま映像化されてきた作品のイメージでは、「巌窟王」=「復讐劇」という印象がとても強かったのですが、このミュージカルは、それだけではなくて、男女の愛、友情、親子の愛、正義、冒険、欲望、いろんなものが描かれています。獄中での師匠ファリア神父とのやりを取りはほほえましさすらあるし、スリリングでスペクタクルな脱獄シーンはハラハラするし、なにより一番心に迫ってきたのが、復讐相手の妻になってしまったメルセデスとエドモンとの、切ない大人の恋愛の部分でした。
冷え切った夫婦生活をおくっているメルセデスの前に、死んだと思ったエドモンが現れた……でも、自分は母として妻としてもう戻ることはできない、彼と心を通わすことすらできない、その切ない気持ちが花總メルセデスから痛いほど伝わってきます。 (それにしても花總さんは、気品のある大人の女性を演じさせたら天下一品ですね! はやくも『レディ・ベス』が見たくなりました!!)
石丸エドモンの復讐心も、牢獄で復讐を思い描いていた最初の頃は、そんなに激しい復讐心を感じなかったのですが、脱獄後、現実を目の当たりにしてから、特にメルセデスが憎きモンテゴの妻になっているのを知ってからのエドモンは、復讐心がマックスに増幅している感じがしました。それだけメルセデスへの愛が強かったんだなぁ……と思いながら、観客としては、「復讐の道を突っぱしらずに、ある程度やったら戻ってきてー!メルセデスには心を開いてー!」と心の中で祈らずにはいられなかったのでした。
とはいえ、復讐シーンは期待通り! 正義の名の下に、権力、金、酒池肉林におぼれる3悪人が仕返しされるのは当然の報いと思えるのも、この作品の醍醐味です。復讐される姿を、実力派のお三方が、それぞれきっちり見せてくださいました。拍手ーーー!!!
「正義」と「愛」、その二つの間でエドモンが最終的に選んだ道は、誰もが満足できる結果だと思います。年の瀬に気持ちよく劇場を後にできる、そんな作品で、アナタも今年をしめくくってみてはいかがでしょうか?