インタビュー & 特集
INTERVIEW! 『CHESS in Concert』対談スペシャルvol.2 中川晃教さん×マテ・カマラスさん
12月12日初日の『CHESS in Concert』スペシャル! 今回、登場するのは日本代表とハンガリー代表の自由人、中川晃教さんとマテ・カマラスさんです! さっそくそのあたりのお話をと思いきや、しょっぱなから強烈な先制パンチを頂戴しました。自由人らしく、どんどん広がる話題。この自由な感性こそ、アーティストが常に進化を続ける源なのかもしれません。(文/小柳照久、撮影/増田慶)
INTERVIEW & SPECIAL 2013 12/12 UPDATE
――石井一孝さん、中川晃教さん、マテ・カマラスさんのお三方は、シアタークリエ公演『ONE-HEART MUJICAL FESTIVAL』(2012年12月~2013年1月)以来の共演になります。
マテ 楽屋が笑いに包まれてて、楽しかった!
中川 うん、楽しかった!
マテ でも、舞台ではちゃんと真剣にアーティストになりました!
中川 ホント?(笑)
――石井さんから、中川さん「も」とっても自由人と紹介を受けていますが?
中川 そんな印象ありますか、僕? なんかね、かずさん(石井)から見ると僕はすごい自由人らしいんです。そういえば、安蘭けいさんが真剣に歌稽古している横でかずさんはバナナを食べて、僕は爪を切ってた! それぞれ真剣に自分のやるべきことをやってたんです! かずさんは集中して歌稽古をした結果、腹ごしらえをしとかないとってバナナを食べてたし、僕は僕で踊りがあるので、生爪はがれても嫌だったから、爪を切っていたと。結果、お互い自由人に。うーん、自由人というと語弊があるかな? 「相手をすごく感じてコミュニケーションが取れる人たちの集まり」ですよ、僕たちは。でも、かずさんに「そういうことでしょ?」とか言うと、全然違うことを言い出したりするから、僕たちの会話はゴールがないんです。あ、そこが自由人か!
マテ かずさんで思い出した。『ONE-HEART』の千秋楽の挨拶で「マテ・カマラスです。今日は千秋楽です。ありがとうねー! そうそう、来年に新しいお仕事やります。『CHESS』です。審判をやります、イェーイ!」って叫んだらかずさんが、「それ、秘密だったのに……」ってフリーズしてた。後で、プロデューサーからも「この話は秘密でお願いします!」と。
中川 念押された!
マテ ヨーロッパだとお仕事もらった時点でオープンなので、つい……。
中川 マテ、間違っちゃったのに「イェーイ!」ってやっちゃったの?
マテ 日本はプロデューサーにOKもらうまでは秘密。でも、それがわかってなくて、「次のお仕事、『CHESS』ね、イェーイ!」
中川 (笑)、それくらい楽しみにしてたんだ。でも、秘密だよって言われないとわからないよね。
マテ 日本はちょっと違うね。
中川 で、来年は何やるの?
マテ ・・・・・・わからない。言わないよ(笑)。 でも、戻ってきたい!
中川 待ってるよ!
(※2014年1月13日@名古屋ブルーノート、14日@ビルボードライブ大阪でコンサート予定があります^^ これは公開OKです!)
――中川さんは英語での大ナンバーがありますね。二幕冒頭の「One Night in Bangkok」の突き抜け感、弾けぶりに度肝を抜かれました。
中川 サビの部分はメロディがあるけれど、あとはラップなので、日本語にするのが難しい曲ですね。歌っている内容は、フレディがレポーターとして、バンコクという街に感じていることなんですよ。人が物欲や性欲に溺れていたり、ブッダなどの精神的な世界、文化など、オリエンタルへのイメージを表現しているだけなので、うまく演出できれば英語のままでも行けるのかなと。そういう意味では、このミュージカルの中でもあの曲だけ異質。当時、みんなに支持されてヒットチャートに入ったのもわかりますね。
――『CHESS』ではなく『CHESS in Concert』とはこういうことか、と納得した瞬間でした。
中川 そうかもしれません。台詞や芝居は極力減らして、音楽の良さを届けることに重きを置いたのが前回の『CHESS in Concert』ですが、今回は セカンドバージョンなので、少しキャラクターに肉付けしたいという思いがあるんです。フレディって男は陽気で激しくて、自由奔放。そして天才的プレイヤー。その一方、陰を秘めたところ、もしくはどこか精神的に病んでいるという、二面性を持った人物です。
音楽の中では彼の感情が爆発していて、たとえば「Pity the Child」というナンバーがあるんですが、低音から高音までものすごく音域が広いんですね。で、低音の部分は割と台詞のように語っているんです。さっきまでハイテンションだった男が次の瞬間孤独になるんです。やがて、彼は、自分自身に対する怒り、まわりの人への怒り、愛するフローレンスに対する怒りなど、彼の複雑な感情が高音に乗って噴火する。一曲の中で、彼の孤独な陰にこもった部分と、感情が爆発するものが込められているドラマティックなナンバーです。だから、音楽としても充実感があるんだけれど、俳優としての部分も試されるし、やりがいがあります。
マテ とても大きな挑戦ね。
中川 マテも以前、フレディ演ってるでしょ。
マテ 私は『CHESS』のアンサンブルでプロデビューしました。ハンガリー語によるブダペストのプロダクションで、まだ20歳だったので、ハンガリーのスターたちと一緒の舞台に立てることができたのがとても嬉しかったです。
その後、2000年にノルウェー版『CHESS』でフレディを演じました。この時は英語です。そして、今回、日本語でアービターを演じます!
中川 それぞれ役も言葉も違うんだ!
――安蘭けいさんが「マテさんは電話でも日本語でしゃべれるくらいペラペラよ!」とおっしゃてました。
マテ ペラペラと言ってくれるなんて優しいね。簡単な日本語ならできるようになりました。『MITSUKO』(2011年5月~6月)の時は「文明開化!」と一言台詞をしゃべるだけで、舞台裏で彼女と一緒になっても通訳なしでは話せなかったけど、今は電話でもお話できるようになり僕もうれしい。時間をかけてちょっとずつですが、どんどん良くなってます!
今までたくさんの役をやらせてもらったけど、『MITSUKO』、『エリザベート』(2012年)に続き、今回『CHESS』でアービターという役を演じるのはとても特別なことです。ハインリッヒやトートとは全く違う自分が見えると思います。確かに、トートと重なる部分がある役ですが、個性的なみなさんとご一緒するので、その中で、僕なりのアービターというのを作り上げたいと思ってます。
今までと違って台詞も長いので僕にとって大きな挑戦です。でも、観に来てください。決めます!! 凄いことになりますよ!!!
――アービターは「ルールが絶対」と威圧感たっぷりな役ですね
マテ 実は彼自身には感情がないんです。小さいときに何か問題があったんじゃないかと思いますね(笑)。だから、プリンシパルではあるけれど、実は重要な役ではないんです。が、重要じゃないからこそ重要になってくるんです。アービターは「物事が白が黒かは僕が決める。僕こそ真理だ」と言ってますが、個人的に主張すればするほど空虚な空気が流れます。絶対なんてありえません。普遍的と言われているカトリック教会の教えですら、時代とともに変わってきています。真理というものも、絶対ではなく相対的なものなんです。
――マテさんはハンガリー出身ということで、ソ連による共産党独裁支配、そしてハンガリーの民主化運動、冷戦の終結と、激動の時代をリアルで体験されてるんですよね。
マテ CHESSというゲームは白と黒に分かれていて、ほんの一手で次がどうなるかわからない……。これはアメリカとソ連の冷戦を表現しています。第二次世界大戦が終わった時点で、アメリカとソ連がヨーロッパの国を分け合い、今度は資本主義と共産主義が対立する冷戦へと突入しました。独裁支配下のハンガリーは閉鎖された世界で窒息しそうでした。お隣のドイツは、壁を越えようとした人は射殺される死の壁=ベルリンの壁により街が二分されました。今はEU連合の中ではパスポートなしで行き来できるようになっているのですが、日本に来るようになって、韓国と北朝鮮のことを他人事でなく感じるようになりました。どのような言葉をしゃべってようと、どんな姿かたちをしていようと、地球人は一つです。日本で僕が迎えられていることに感謝しています。
――中川さんは前回公演の千秋楽で「コンサートとしては長すぎる、でも、ミュージカルとしては短すぎる」という印象的な挨拶をされてました。
中川 ミュージカルとしての上演だったらもっと稽古期間もあったんでしょうが、in concertということで、時間がなかったんですよね。短い限られた時間の中、どこまで歌を自分のものとして体現できるか。そういう意味ではやりきった感があったんですが、ミュージカルとしてはまだまだ伸びしろを感じたんです。今回セカンドバージョンとして幕を開けるということは、コンサートとしてだけでなく、ミュージカルとしてどこまで役を深めていけるかがポイント。再演までの間に、他の作品やコンサートなどいろんなことを経験させてもらって、それから作品に再会する。また、マテが加わることで作品に深味が加わる。このミュージカルは、少しずつ、少しずつ成長させていく作品なんだと思います。そうやって成長させることで、観てくれるお客さんがより作品に引き込まれる、非常に壮大なプロジェクトに携わっている実感があります。是非、劇場で御待ちしています!
『CHESS』プチ・ヒストリー&ストーリーはこちらから!
『CHESS in Concert』
セカンドヴァージョン
作曲:ベニー・アンダーソン ビョルン・ウルヴァース
原案・作詞:ティム・ライス
演出・訳詞:荻田浩一
音楽監督◇島健
出演:安蘭けい、石井一孝、中川晃教、マテ・カマラス(五十音順)
AKANE LIV、戸井勝海 他
●12/12~15◎東京国際フォーラムC
●12/20~22◎梅田芸術劇場メインホール
《イベント》
■東京公演■
12/12(木)14:00スペシャルカーテンコール
12/13(金)14:00アフタートークイベント(出席:安蘭けい、石井一孝、中川晃教、マテ・カマラス、AKANE LIV、戸井勝海)
12/14(土)17:30マテ・カマラスサイン会(※終演後実施、公演パンフレットご購入の方限定)
■大阪公演■
12/20(金)14:00大阪初日スペシャルカーテンコール/マテ・カマラスサイン会(※終演後実施、公演パンフレットご購入の方限定)
12/21(土)17:30プレ・クリスマスイベント(クリスマスソング披露♫)&ご来場のお客様全員に特製クリスマスカードプレゼント
企画・制作・主催:梅田芸術劇場
〈問合わせ〉梅田芸術劇場
東京 0570-077-039
大阪 06-6377-3800
【公式HP】http://www.umegei.com/schedule/290/
【公式Twitter】@musical_chess