インタビュー & 特集
INTERVIEW! 『新春浅草歌舞伎』市川猿之助さん
若手俳優の登竜門と呼ばれる『新春浅草歌舞伎』。亀治郎時代に12回、猿之助襲名後は初めての出演となる市川猿之助さんに、お話をうかがいました。(取材・文/臼井祥子)
INTERVIEW & SPECIAL 2013 12/7 UPDATE
『新春浅草歌舞伎』は毎年、正月に浅草公会堂で上演され、浅草の新年の風物詩となっています。2014年は、市川猿之助さん、片岡愛之助さんら、華のある若手俳優さんたちが出演。「上州土産百両首」や舞踊劇「博奕十王」等を上演します。
「第一部で上演する『上州土産百両首』は、オー・ヘンリーの短編が元になっています。僕も読んでいましたが、非常にシャレている。正太郎と牙次郎というふたりの男の友情がよく描き込まれているので、演じるふたりの俳優がしっかりと出てきます。だから、歌舞伎座で猿之助(現 猿翁)と勘九郎(十八世 中村勘三郎)が何十年ぶりかで共演した際にもこの作品が選ばれたし、僕が自主公演でやった際には福士誠治さんに共演をお願いしました。僕らの仲の良さはファンのみなさんも知っていたので。
今回は巳之助くん(坂東巳之助)に牙次郎役で出てもらいます。また違った男同士の友情が出せればと思っています。わかりやすく華やかで、浅草を舞台にしているので親しみやすさも出るような作品にしたいですね。大変よくできた友情の物語ですから、歌舞伎にこだわらずいろんな方がやってくれるといいですよね。たとえば藤原竜也さんと小栗旬さんがやったら、絶対ウケると思う。
第二部の『博奕十王』は、伯父(猿翁)が作ったとても明るく楽しい作品です。お正月にはピッタリだと思います。「是非残したい」と、2年前に自主公演で上演した際には、伯父が作った衣裳も譲り受けて仕立て直しました。
とにかく華やかで、お客様を明るい気分にさせて最後は笑顔で帰っていただける、よくできた作品だと思います。地獄で閻魔様と博打をするという話。僕はせっかく地獄なのでと松羽目の松も枯らし、長唄さんや後見さんにも白い三角頭巾をつけてもらいました。その自主公演の千秋楽には大ゼリやスッポンが動かなくなり急遽演出を変更するアクシデントがありました。その時弟子が『これなら大ゼリもスッポンもない劇場でもできますね』と。それで『あ、これならば浅草でできるぞ』と思いました。今回浅草でできるのは、そのハプニングがあったからなんです。
『新春浅草歌舞伎』は、亀治郎として卒業しましたので、今回は初めて猿之助として出させていただいているという意識です。浅草の思い出といえば、年を追うごとに、お客様の数が目に見えて増えていっているのがわかった時は嬉しかったですね。厳しい現実を痛感して、どうすればお客様に来ていただけるかをみんなで考え、相談して。
その工夫として、夜の部を15時半開始にして、観劇後に浅草でごはんが食べられる時間設定にしました。いまでは普通のようですが、始めたころは新しかった。『お年玉ご挨拶』も、お客様に喜んでいただくための工夫でした。『お客様が入らないから、素顔で出よう!』(笑)。それが名物になりましたが、いまとなっては重荷以外のなにものでもない(笑)。ただ、これをやっておくと口上の時にビビらないから、いい訓練になります。今回出演の若手のみなさんには、舞台を通してしかわからないものもありますし、一緒に出て、何かを感じ取ってもらえればいいなと思います。
今回の『新春浅草歌舞伎』は古典もあって新作もある、舞踊もある。歌舞伎のすべてのジャンルが入っていますから、昼夜を見ていただくと、だいたい歌舞伎の様式というのはこういう演劇形態だというのがわかるようになっています。非常にバランスのとれた公演で見やすく、楽しんでいただけると思います。是非、新年は浅草でお迎えください」
『新春浅草歌舞伎』は2014年1月2日より、浅草公会堂にて上演されます。製作発表記者会見の模様はこちら!
[公演情報]
『新春浅草歌舞伎』
2014年1月2日〜26日 浅草公会堂
演目
■第一部■
お年玉〈年始ご挨拶〉
一、源平布引滝 義賢最期
二、上州土産百両首
■第二部■
お年玉〈年始ご挨拶〉
一、博奕十王
二、恋飛脚大和往来 新口村
三、上 屋敷娘
下 石橋
公式サイト●http://www.asakusakabuki.com