インタビュー & 特集
INTERVIEW!『WORLD』辻本祐樹さん
10月18日に初日をむかえ、27日までシアター1010にて上演される『WORLD』。スピーディにストーリーが展開する、ジェットコースターサスペンスの本作で、連続爆弾犯・リュウジ役を演じる、主演の辻本祐樹さんに、お話をうかがいました。(取材・文/金本美代、撮影/笹井孝祐)
INTERVIEW & SPECIAL 2013 10/18 UPDATE
日本中を震撼させる連続爆破事件をきっかけに、封印した過去の事件が解き放たれる。爆弾犯である2人の青年と1人の女、警察、アジア系マフィア…過去の事件とそれぞれの思惑が複雑に絡み合い、思いがけない結末が彼らを待ち構えていた―。
――連続爆破事件を起こす爆弾犯のリーダー・リュウジを演じられますね。
リュウジは“日本を変える”っていうのが大きなテーマにあって爆破事件を起こしていく。そして次第に“世界を変える”に変化していくんです。リュウジが世界を変えてやるって気持ちになるまでの、その気持ちを表すのがすごく難しいです。リュウジは自分のトラウマと戦っていくうちに変化していくんですね。もしかしたら人って持っている小さな悩みが大きくなったら、こういうふうに気持ちが変わるのかもと。そういうふうに考えると、リュウジの気持ちが分からなくもないというか。でもやってることはかなり破天荒なので、どう見せるかかなり悩みました。演出の菅野さんからは、リュウジは闇を抱えているんですけど、「前半は表のリュウジをたくさん見たい」と言われていて。彼がただ単に無邪気に、やんちゃに爆破を起こしている感じでいいと。そのアドバイスをもとに役を作っています。
――今回の作品は、かなり幅広い年代・ジャンルの俳優さんが集まっていますね。かなり刺激の多い現場かと思います。
ドラマでは少し経験していますけれど、舞台ではベテランの方々が出ていて僕が主役を務めるのは初めてなので、自分なりに大きなプレッシャーを感じています。できるだけ悩んでいる姿を稽古場では見せないようにしたいとは思っていました。それから佐藤亜美菜さんや松尾雄史くんに対しては、作品の中では相棒として、共演者としても2人を引っ張っていける存在にもならなければいけないとも思っています。先輩方には、ただぶつかっていくだけだなって思っています。自分の芝居が先輩たちに伝わるように、そしてそれを先輩方から返していただけるように。そうやってぶつかって、戦っていけたらなと思っています。
――稽古場の雰囲気はいかがでしたか?
先輩方に盛り上げていただいきました。特に金山一彦さんの場の盛り上げ方が天才的で(笑)。現場を盛り上げていただけるのは、ほんとうに若手側としてはありがたいというか。明るくチャレンジできる場を提供してくれます。野村宏伸さんは、普段話している時はすごく優しいんですけど、お芝居になると場がキュっとしまるというか。そういう稽古場だったので、この芝居がどこまであがっていけるのかは、自分を含めた若手次第な感じがして、がんばらなければと思っていました。
――制作会見では、すでに通しで稽古していて…とありましたけど。本番数週間前と考えると早い印象を受けましたが…。
僕もこんなに早く最後まで通したのは初めてでした(笑)。動きだけでいえば、稽古初日から4日くらいで全部でき上がったんですよ。2時間20分、全部できちゃって。あとは役者たちがこの動きとセリフを覚えたらすぐ通せるみたいな段階になっちゃって。「あちゃちゃちゃちゃ〜」みたいな(笑)。でもこれは僕的にはとてもありがたいことでした。演出家さんが全体をどう作っていくのか、どう作っていきたいのかが早く見えたわけですから。映像作品のように、舞台では考えられないくらいのシーンが展開されるので、舞台でこのシーンをどうやって見せるんだろうとか、台本上だと分かりづらいこともあったんですよ。それを実際に早い段階で確認できたので、リュウジの感情も作りやすかったというか。あとは役を深めながら稽古すればいいだけでした。
――本番への課題はありますか?
爆弾魔というのになじみがないと思うんですよ。爆破をする人、爆発で無差別に人を攻撃する人は身近ではないですよね。その爆弾魔の感情というか、それを理解というか現実に日本で起きているふうにお客さんに伝えたい。いま舞台上でお客さんが見ていて、爆破が起きて、これだけの人が犠牲になってるっていうのがリアルに伝わるように。そのドキドキ感を与えられたらと思っています。
――見どころを教えてください。
そうですね。ストーリー展開はもちろんですけど、シーン転換の早さも舞台では考えられないので、そこは見どころなんじゃないかな。でも展開は早いですけど、その中にもいろんなところがつながっているんです。だから1個1個のシーンがすごく大事。そのつながっていく様も面白いんじゃないかなと思います。
一見、ストーリーとかポスターを見ると、暗い作品なのかなって思われると思うんですけど、(演出の)菅野さんは、暗い作品ではなくて、一人一人の人間の強さを表したいと言っているのですが、この『WORLD』という世界は、小さな弱い、心が小さくなったり大きくなったりそういう人間模様がたくさん見える作品なので、お客さんも見ていて感情移入できる部分がたくさん出てくると思うんですね。弱い部分はみんな持っていると思うので。どう自分で補うか。人それぞれ補い方が違うと思いますけど、それでも生きていく、大きく戦う方向にもっていけるように。強い気持ちというか、マイナス方向に持っていくことではなくてポジティブに考えられるような作品になればいいなと思っています。
―― この舞台はもちろんですが、舞台のほかにも、ドラマ、映画など幅広く精力的に活動されていますね。
人を楽しませたい、何かを伝えたいって気持ちを持ってこの仕事をやっているので、その意味ではどのジャンルでもそのスタンスは変わらないし、どれかを優先したいとかは思わずに、いまはどんな仕事でもやりたいんです。もちろん得意不得意はあるんですけど、チャレンジする中で自分の苦手な部分を見つけて、それをひとつずつ克服していけたらいいなと思っています。
[公演情報]
『WORLD』
2013年10月18日〜27日 シアター1010(東京・北千住)
脚本・演出:菅野臣太朗
出演:辻本祐樹 / 佐藤亜美菜(AKB48) /松尾雄史
岩永洋昭 中原裕也 渡部将之 右近良之
棚橋幸代 諒太朗 米沢瑠美 早川亜希 川名浩介 吉田晃太郎
田中しげ美 小峰めぐみ 苅羽 悠 湖木信乃介 篠田力子
モロ師岡 逸見太郎
うじすけ 宮川慶 中村卓也 福田アキ☆ラ 岩崎康幸 飯田祐貴
小林照平 片岡優 杉本茜 山下龍大 小野友花里 森本悠加
鈴木まさゆき 下村尊則
野村宏伸 / 大鶴義丹 / 金山一彦
公式サイト●http://world-ask.com
公式ツイッター●http://twitter.com/WORLDAsk1
[プロフィール]
つじもと・ゆうき
1985年1月12日生まれ、大阪府出身。’01年『3年B組金八先生Ⅵ』でデビュー。以降、『ウォーターボーイズ』(CX)、連続テレビ小説『ちりとてちん』(NHK)、『新選組血風録』(NHKプレミアム)、大河ドラマ『平清盛』などのドラマで好演。舞台出演は、’08年にミュージカル『テニスの王子様』の青学5代目キャスト・大石秀一郎役で注目を集め、『ドリームジャンボ宝ぶね』『マウストラップ』『冒険者たち』など幅広く活躍中。