インタビュー & 特集

INTERVIEW! 舞台『詭弁・走れメロス』森見登美彦さん×松村武さん対談 part1

太宰治の『走れメロス』を大胆に生まれ変わらせた森見登美彦さんの小説『新釈・走れメロス』が、〝青春音楽活劇〟と銘打った舞台に。脚本・演出を手掛けるのは、カムカムミニキーナ主宰の松村武さん。初対面ながら、実は奈良県人同士、かつ同じ中・高一貫校出身のふたりにお話を伺いました。(文/山上裕子、写真/齋藤ジン)

INTERVIEW & SPECIAL 2012 12/28 UPDATE

――今回のタイトルにある〝詭弁〟とは?
森見 詭弁論部って、僕の小説によく出てくるんです。うちの父が学生時代に弁論部に入ってて、それをもじって詭弁論部っていうものをまず作って。太宰治の『走れメロス』はストレートに友達を助けるために走るってことなんで、それを逆転させて、〝助けに行かないのが友情だ!〟と強弁する人を出そうと思ったら、〝まぁ、詭弁論部かな?〟っていう感じで組み立てていったんだと思います。
松村 〝詭弁〟の解釈って難しいですよね。いい加減なことばっかり言ってる奴らとも取れますけど、僕としては本当の詭弁ではなくて、最後にはいい意味にパンッとひっくり返るといいなと思ってます。

――ご自身が書いた小説の舞台化、アニメ化についてどう思われますか?
森見 以前舞台になった『夜は短し歩けよ乙女』のときもそうですけど、どうやって舞台に出来るんだろう? と思いました。自分の小説は現代離れしているし、セリフではなく地の文で面白味を出したり、変なリアリティを出したりしている。これをどう置き換えるのか、僕には想像が出来ない。でも、『夜は短し~』のときにもいろんな工夫をして、別のものにしていただいた。きっと今回も何とかして下さるに違いないと思って、そこから先は完全にお任せです。

――松村さんの脚本を読んだ感想はいかがでしたか?
森見 自分が書いた文章がだいぶ使われていて、心配になりました。

――どんなところが心配に?
森見 目で読むものとして書いているので、役者さんに言ってもらうことでどういうふうにされるのかな、っていうことが気になったんです。それから脚本を読んだだけでは舞台上の動きとかがわからないから、どうやって舞台で走るのか、追いかけっこをどう表現するんだろうと思っていた。
松村 堂々巡りのような、セットを動かして積木みたいなことをずーっとやってます(笑)。

――脚本化される上で、どのような工夫をされたんですか?
松村 森見先生の小説は、今仰ったように地の文体が面白い。話も追っかけっこで、ゆっくり会話してるところもないから、どうすればいいかすごい悩みました。ヒントになったのは、原作の文庫版のあとがき。先生が〝筆が進んでどうしようもない感じが太宰の『走れメロス』だ〟みたいなことを書いてらして、それをイメージしたら、地の文章をみんなで怒濤のようにモノローグで言い続ける、というアイデアが浮かんだんです。そして本来は何十人も出てくるのを2~3人で入れ替わり立ち替わりやれば、転がってる感じが作れるんじゃないかと。
森見 脚本に役者の方のクレジットがあったんですけど、〝あれ? これだけで終わり? もうちょっと人がいないと……〟と思ってたんです。稽古では何人かの人たちが見事に入れ替わり立ち替わり、いろいろやってました。

――では、実際に稽古を見た感想は?
森見 すごいアホやなと(笑)。もちろん、僕の「アホ」というのは褒め言葉ですよ。『走れメロス』っていうタイトルに相応しく、皆さんが走り続けてる。僕自身〝走り続けているような文章で書きたい〟と思って書いたものなので、それをちゃんと汲み取って、舞台の上でやっていただいてるんだなぁと思いました。
松村 今日初めて通したんですけど、みんな途中で電池が切れてた。
森見 一服しようと稽古場の外に出たら、さっき演じてはった方が、ハーハ-言いながら出てきて……。
松村 3~4人で全部を表す、みたいなことをしているので、非常に忙しい人がいます。それにこの話はずっと芽野を追っかける話だから、芽野役の武田航平くんは出ずっぱりで、ほぼ走り続けるんです。

――見ていて最もアホだと感じたところは?
森見 小技をやり続けている感じがあるので、ここ、と選ぶのは難しいです。もちろんクライマックスは、一番アホになるのに、妙に感動します。多分そこまでにいろいろな小技を見てるうちに、こっちも興奮してくるから。

――イケメン二人が、破廉恥きわまる桃色ブリーフを!?
松村 それは外せない。そこに感動するわけです。

(次回に続く)

アトリエ・ダンカンプロデュース 青春音楽活劇『詭弁・走れメロス』
原作:森見登美彦
脚本・演出:松村武
出演:武田航平、山下翔央、新垣里沙、市川しんぺー 他
2013年1月4日(金)~17日(木)銀座博品館劇場(プレビュー公演、大阪公演あり)
http://www.duncan.co.jp/web/stage/melos/

 

 


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