インタビュー & 特集
INTERVIEW! 『カワイクなくちゃいけないリユウ』村井良大さん part1
ニール・ラビュート作のラブコメディ『カワイクなくちゃいけないリユウ』に出演する村井良大さん。最近さまざまな舞台で活躍している村井さんに、昨年から今年にかけての舞台について、ふりかえってお話をうかがいました。(取材・文/臼井祥子 写真/望月研)
INTERVIEW & SPECIAL 2012 5/18 UPDATE
今回のインタビューでは『こころ』以降の舞台について振り返っていただきました。まずは動画のメッセージをどうぞ。
●まず、昨年8月に出演された『こころ』について教えてください。『こころ』では「私」と「若いころの先生」の二役を演じていましたね。
一人二役で、しかも舞台上で芝居がつながったまま役が変わるという面白い演出でした。衣装も舞台装置も変わらずに僕が演じる役と場面がいきなり変わるので、まずその変わった瞬間をお客さんにわかってほしいなと思っていまして。それはたぶん演出だったり、見た雰囲気だったりで、感じ取っていただけたと思います。
円形劇場だったのも大きかったかもしれません。お客さんにとても近いから、ささやくような声やため息も聞き取ってもらえました。今度やる『カワイク』もそうなんですけど、センターステージって感じ取りやすいんじゃないかな。人によっては大事な場面で役者の顔が見えないこともあるけれど、その時、どんな表情をしているのかを、間だったり声色だったりで伝えることができるし、逆にお客さんが敏感になって感じ取ってくださることもあるんです。見えないからこそニュアンスで感じ取れるのかも。
昔は見せる芝居ばかりやってきていたけれど、最近、見えないで感じさせる芝居をやりたいと思うようになりました。一瞬の表情や一瞬の間、体がとどまる瞬間、そういうことでドラマが深まっていけばいいかなと。舞台ってお客さんの目の前で生の人間が演じるわけで、お客さんがワクワクドキドキしている空間に役者がいて、その中でこそ自分は冷静に、一つ一つ的確に伝えられたらいいなと思います。
●続いて秋には音楽劇『醒めながら見る夢』に悪魔役で出演しました。グローブ座もまた密度の高い空間ですね。
そうですね。客席がけっこう高い位置まであって、しかもハの字に広がっていて、でも意外と舞台と近いんですよね。そういう意味では非常に面白くてやりやすかったです。
『醒め夢』は悪魔という異質な役だったので、印象に残るような演技ができたらと思っていました。役作りは、天使役の古川雄大くんとすっごい話し合って取り組みました。非常にヒントの少ない役だったので、自分の個性や性格を出していくしかないというか、自分の中で消化して作っていくことしかできなくて…。台詞も難解な、ひと口では飲み込めないようなものが多くて、難しかったです。でもパートナーがいたので。
●古川さんはどんなパートナーでした?
いやもう、なんでしょう。最高に不思議な、古川雄大の持つオーラ、雰囲気が、すごく面白いですね。頼れるし、頼ってくれよとも思うし、また一緒にやりたいです。前に共演したこともあるので、やっぱり話はしやすかったですね。
●その後に、ラフォーレ原宿ミュージアムで『天正遣欧少年使節』があって、年末は『大江戸鍋祭』ですね。
あれはまためちゃめちゃな舞台なんで(笑)。いろいろなパロディをやったり、歴史ものなのか、歴史物じゃないのかよくわかんないことになってきてますけど(笑)。不思議な作品です。けど、ああいうなんでもありな舞台って、僕、すごく好きなんですよ。
例えばミュージカルを観にいって、ミュージカルを楽しむ。そういう楽しみもあるんだけど、そうじゃない楽しみもあるんじゃないかなと。意外性というか、「おお! ここでこんなんが出てきたか」っていう楽しみっていうか。ミュージカルじゃない舞台を観てたら、いきなり歌いだしたみたいなね。そういう楽しさが『鍋』にはあるんですよ。観にいってみないと何が起きるかわからないびっくり箱みたいな作品で、本当にそういう意味で、お客さんに楽しんでいただけたんじゃないかと思いますね。
●本当に楽しかったです。『鍋』で年を越して、その次の舞台『弱虫ペダル』は熱かったですね! ハンドルしか持っていないのに、自転車に乗っているように見えてくる。あのエネルギーは生ならではじゃないかと思いました。
生じゃなきゃ感じられないでしょうね。最初僕たちも困惑していたんですよ。タイヤもついていたほうがいいんじゃないか、もっと装飾品があったほうがいいんじゃないか。でも違うなって途中で気がついて。「お客さんが見るのはハンドルじゃないだろう。表情だろう」って。これがハンドルの形をしていなくて棒だったとしても、ちゃんと伝わるよって思った。そこはお客さんの想像力に委ねたんです。
何より嘘をついていない作品なんですよ。本当にみんな汗をかきながら走ってるんです。だから観てくださった方は、「もう完全に自転車だったよ」「自転車レースしてたよ」って言ってくださる。僕らの気持ちが伝わって、作品の持っている熱を率直に伝えることができたのがありがたかったです。演出が西田シャトナーさんなので、パワーマイムというか。なんでしょうか。投げるから感じ取れという舞台になりました。
●でも肉体的には苛酷な舞台じゃなかったですか?
痩せました。初日は朝から場当たりをやって、ゲネプロ、本番とやったわけですが、終わるころには何かに体を預けてないと倒れそうなくらい疲れてましたね。帰りの電車の中でもずっと何かにもたれかかっててました。
●体をいじめて鍛え抜いた舞台の次が、まったく方向の違う『ラ・パティスリー』でしたね。
全然違いましたね(笑)。演出家さんが女性の方だったので、女性目線で捉えていらっしゃるからポップな感じで、ほんわかしていて。日常をすごく優しく綺麗に表現される方だから、観ていて心安らぐ作品になったんじゃないかな。
『ラ・パティスリー』では、8割の芝居を心掛けていました。舞台の芝居って、客席の一番後ろの人に伝わる芝居というイメージがあったんですよ。以前すごく大きな劇場の後ろのほうで観劇したら、出ている方は米粒のようだし、声しか届かなくて、何をやっているのかわからなかった。セットも豪華ですごいけど、僕は置いてけぼりにされた気がして、それ以来、一番後ろの人にも届く芝居をしようっていうのがいつも念頭にありました。それが10割の芝居。
けど『ラ・パティスリー』はすごく繊細で、心が動くから体が動くっていう作品。だから8割の芝居をしようと。非常に難しく、でも楽しくやれましたし、ベテランの俳優さんとも共演できて、すごく勉強になりましたね。
村井さんは『ラ・パティスリー』の後、4月には『We Love 兄さん!』リーディング劇『僕等の図書室~ みんなで読書会~ 』に出演。そして6月、『カワイクなくちゃいけないリユウ』が上演されます。
(part2に続く)
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[プロフィール]
村井良大
むらい・りょうた
1988年6月29日生まれ、東京都出身
舞台『赤毛のアン』で俳優デビュー。2007年ドラマ『風魔の小次郎』で初主演。同ドラマの舞台版やミュージカル『テニスの王子様』『新春戦国鍋祭〜あんまり近づきすぎると斬られちゃうよ』『遠ざかるネバーランド』などの舞台に出演。またドラマ『仮面ライダーディケイド』や映画『華鬼』『アブラクサスの祭』など映像作品でも活躍している。
公式ブログ●http://ameblo.jp/murai-ryouta/
[公演情報]
舞台『カワイクなくちゃいけないリユウ』
6月2日(土)〜10日(日) 新国立劇場 小劇場
6月23日(土)〜24日(日) 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
演出:深作健太
出演:村井良大、植原卓也、吉川 友、村川絵梨
お問い合わせ:
サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00—19:00)(東京)
芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00—17:00 月曜休/祝日の場合翌日休)(兵庫)
http://www.ntv.co.jp/kawaiku/