インタビュー & 特集

新たに国内外のアーカイブ配信が決定! 刺激的な舞台『バイオーム』レポート

朗読劇のはずなのに役者はハミングのような歌も歌い、パントマイムのような動きを見せ、次第に台本を持たず魂のぶつかり合いのような熱演を見せる――。すごい集中力とエネルギーが配信の画面越しでも伝わってきた、スペクタクルリーディング『バイオーム』。上田久美子さん×一色隆司さんの見事なタッグ、人間と植物が織り成す不思議な物語の中で“生き切っていた”キャスト。本公演を見逃した人は、6月22日~28日の新たなアーカイブ配信で、この奇跡的な座組の舞台をぜひ体感してほしい。(文/小野寺亜紀、舞台写真撮影/花井智子)

INTERVIEW & SPECIAL 2022 6/24 UPDATE

宝塚歌劇団月組公演『月雲の皇子 -衣通姫伝説より-』で2013年に演出家デビューしてから、上田久美子さんの快進撃はすごかった。人間の美しさだけではなく弱さや深い内面まで描く脚本、全く飽きさせない展開の妙、ズドンと心に響く台詞など、王道路線に見えてアグレッシブに挑戦を重ねているのが伝わる作品を発表し続け、「次はどんな舞台が!?」と期待せずにはいられないクリエイターだった。

だからこそ、2022年3月末での宝塚退団は衝撃的だったが、6月8日~12日に東京でのみ上演されたスペクタクルリーディング『バイオーム』で、まずは作家として新たな一歩を踏み出した。演出は大河ドラマ『麒麟がくる』などを手掛けてきた一色隆司さん。さらに、中村勘九郎さん、花總まりさん、古川雄大さん、野添義弘さん、安藤聖さん、成河さん、麻実れいさんという、百戦錬磨の豪華なキャストが揃い、朗読劇の枠に収まらない舞台が誕生した。

上田久美子さんありきで作品紹介を始めたが、それほど骨太な書き下ろし戯曲ということはお伝えしたい。彼女が宝塚在団中と違い、今感じることを制約なく自由に書き上げたという物語には、宇宙から小さな人間を見つめるような目線があり、自ずと作品は壮大な世界観へと広がっていく。ストリングカーテンに映し出されるプロジェクションマッピングも、絵画のように美しく幻想的だ。

登場するのは、代々続く政治家一族とその家に仕える家政婦や庭師、そして彼らを見守る庭の植物。7名の役者が一人二役を演じ分け、特に中村勘九郎さんは、一族の息子で植物と会話ができる8歳のルイと、家政婦ふきの孫娘で8歳のケイを、瞬時に表情や声色を変えて演じてゆく。配信の画面では、よりその細かな演じ分けが見てとれて、精神も肉体も柔軟な彼だからこそ発せられるピュアな輝きに惹きつけられた。

一方、大人たちは金や権力を求め、欲望を満たそうとする愚かな行動に走り、ルイとは対照的。一族の一人娘・怜子(花總まり)は、学(成河)との夫婦仲がうまくいかず、厳格な父(野添義弘)には反抗し、怪しげなセラピスト・ともえ(安藤聖)の花療法にすがっている。

人を愛せず、精神が不安定な怜子が生々しい台詞を発する場面はひとつの大きなクライマックスで、ここでの花總さんの鬼気迫る演技とその後の物語の展開には、深化した上田イズムが凝縮しているように感じた。その花總さんが、クロマツの芽という清純な少女のような役も担っているのが意味深い。

古川雄大さん扮する一重の薔薇役の、頬杖をついたようなしぐさやマダム口調の台詞。成河さん扮するセコイア役の、仁王立ちして両肩を広げる姿と若き威厳。いずれもパントマイム的な動きも見せて存在感を醸し出す。さらに朴訥とした雰囲気の庭師・野口(古川)と、衆議院議員の自制的な婿養子・学、それぞれが演じるキャラクターの対比がおもしろい。

ともえや家政婦のふき(麻実れい)も、決して脇役などではなくアイデンティティーが濃厚に出てくる。ここは特に女性の観客なら、どんどん感情移入してしまうはず。

頑固な一族の長・克人役の野添義弘さんが、クロマツの盆栽に扮したときの愛嬌。ふき役の麻実れいさんがクロマツに扮したときの、ダイナミックな存在もまた作品に不可欠。麻実さんは上田さんにとって創作の糧ともなったようで、クロマツの発する穏やかな響きの言葉が、ルイを、そして私たちの心をフラットな状態へと導いてくれるようだった。

植物や鳥の声に耳を傾ける主人公の様子から、一見ファンタジーのように始まるが、実は今の時代のリアルなものを鋭く描いている舞台。音(生演奏)や視覚の面でも最後まで刺激的なステージは、やはり“スペクタクルリーディング”と銘打つにふさわしいものだった。その創作の裏側が、アーカイブ配信のアフタートーク映像や、上田さん×一色さんの対談映像で紹介されているのでお見逃しなく。

スペクタクルリーディング『バイオーム』
上演日程:2022年6月8日(水)~6月12 日(日)
会場:東京建物 Brillia HALL
作:上田久美子
演出:一色隆司
出演:中村勘九郎/花總まり 古川雄大/野添義弘 安藤聖/成河/麻実れい

【アーカイブ配信 データ】
配信日程:6月22日(水)0:00~6月28日(火)23:59
内容:本編映像(約155分)
特典映像(約 55分)…6月9日13時公演アフタートーク映像、上田久美子×一色隆司による対談映像(6月11日実施のライブ配信と同じ映像)、稽古場・バックステージ映像(来場者向け配信と同じ映像)
料金:英語字幕なし配信視聴券 4000円、英語字幕あり配信視聴券 4000円
チケット販売期間:6月17日(金)11:00~6月28日(火)22:00
視聴・購入方法:Streaming+(イープラス)
詳細: https://www.umegei.com/schedule/1042/event.html#live

※近日発売「オモシィプレスVOL.21」でも『バイオーム』のステージ写真&レポを掲載! 想い出を紙で残しておきたい方にオススメします!


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