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アダム・クーパー『SINGIN’ IN THE RAIN~雨に唄えば~』、日本最後のドン・ロックウッド、この勇姿を逃さないで!
5年ぶりに、アダム・クーパー主演『SINGIN’ IN THE RAIN~雨に唄えば~』の熱狂が帰ってきた! 2月2日~13日の東京公演を経て、2月18日~21日には同作初の大阪公演が行われている。来日公演のまっただなかアダム・クーパーが、700回以上演じているこの舞台への想いや、初演時のエピソードなどを語ってくれた。
(取材・文/小野寺亜紀、舞台写真/阿部章仁、人物撮影/野津千明)
INTERVIEW & SPECIAL 2022 2/20 UPDATE
2014年、2017年と過去2回東京で上演された来日公演で、10万人以上を動員した大ヒットミュージカル『SINGIN’ IN THE RAIN~雨に唄えば~』が、コロナ禍での開幕延期を経て、2月2日に東急シアターオーブでスタートした。アダムは名作映画『雨に唄えば』でジーン・ケリーが演じたサイレント映画のスター、ドン・ロックウッド役として、素晴らしいパフォーマンスを披露している。
「日本が大好きなので、来日できるか心配で気持ちが沈んだときもありましたが、こうして公演が実現し胸がいっぱいです。大阪で上演するのは初めてですが、大阪には何度も行ったことがありますし、この作品をとても気に入っていただけると思います。『SINGIN’ IN THE RAIN』は観る人に太陽の光=サンシャインと雨、喜びを与えてくれる作品です。演じているときはまるでマラソンを走っているかのように、肉体的にも精神的にもハードなのですが、同時に大きな達成感があります。それは私の年代でこれを演じられているという達成感でもあります。作品がもたらす喜びが、自分をさらに盛り上げ、力を与えてくれるのです」
アダムは英国のロイヤル・バレエ団の元プリンシパルであり、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』(主役)、映画『リトル・ダンサー』(成長したビリー役)など、多彩に活躍してきたスーパースターだ。そんな彼の原点は、6歳から始めたタップダンス。
「私が最初に目指したのはタップダンサーでした。ジーン・ケリーもフレッド・アステアも大好きで、幼い頃から映画を観ていて、彼らは私のヒーロー的な存在でした。『雨に唄えば』はユーモアがあり、バレエの要素があるダンスシーンを含め、大好きな映画です」
2012年にロンドン・ウエストエンドで誕生したミュージカル版の初演に出演することになったアダムは、当初ここまで作品が成功するとは思わなかったという。
「初演のドレスリハーサル(ゲネプロ)はさんざんだった。雨がうまく降らないし、傘は壊れるし、何もかもうまくいかず、とんでもない失敗作になるとみんな覚悟していました。でもその日の夜、開幕すると観客の皆さんがとても喜んでくれた。今も毎公演、楽しんでくださいますが、この作品は、(14トンもの)雨が降るというところが他の舞台とは違いますし、前の席の方はキャストからの水がかかるという特別な体験ができて、より演者と観客とのつながりを感じるのかなと思います」
初演の頃は雨の中のパフォーマンスで転んでしまった経験もあるというが、今はそういうこともなく、雨の中で踊るための靴や床、さまざまなサポートの中で思い切り踊り、演じている。
「舞台のいいところは、成長できること。やはり10年前のドン・ロックウッドと、今のドン・ロックウッドでは違います。異なるキャストと何度も演じ続けることで変化していきますし、作品で言えば、ドンとキャシー(ドンと恋に落ちる駆け出しの女優)も、物語が書かれた1950年代と現代との社会的な価値観の違いから、もっと男女の関係が平等に描かれるようになっていきました。振付も少しずつ変化しています。アンドリュー・ライト(振付)は、私が提案することをオープンに受け止めてくれるので、パフォーマーとしてありがたいです」
いまやアダム・クーパーの代表作となったこの名作。彼のドン・ロックウッドを日本で観られるのはこれが最後になるという。
「私にとってこの作品はスペシャルなショーです。なぜなら、これまで立ったどの舞台よりも多く、700回以上演じています。また、先ほど言った通り、ジーン・ケリーは子どもの頃からのヒーローで、その役を自分が演じる、しかも彼の演技をコピーするのではなく、自分のバージョンで演じることができる。とても光栄で、特別な作品なのです」
稀有なパフォーマーであるアダム・クーパーが全身全霊で届ける、躍動感に満ちたダンスやハッピーなメロディを、ぜひ享受しよう。
【データ】
『SINGIN’ IN THE RAIN~雨に唄えば~』
アダム・クーパー特別来日 日本公演
東京公演/2022年2月2日(水)~2月13日(日) 東急シアターオーブ
大阪公演/2022年2月18日(金)~2月21日(月) オリックス劇場
演出:ジョナサン・チャーチ
振付:アンドリュー・ライト
出演:アダム・クーパー シャーロット・グーチ 他