インタビュー & 特集

再演が開幕! 評判の劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の魅力に迫る

胸にしみる優しさと希望――。2020年秋の開幕直後から反響を呼び、雑誌『ミュージカル』の「2020年ミュージカル・ベストテン」で作品部門第1位に選ばれた、劇団四季の『ロボット・イン・ザ・ガーデン』。昨年12月22日に東京・自由劇場で再演がスタートし、2月23日から4月16日までは、京都劇場でも上演される。本作を手掛けた劇団外の注目クリエイター、長田育恵さん(台本・作詞)、小山ゆうなさん(演出)と、劇団四季の吉田智誉樹代表取締役社長が取材会を開き、今作への想いを語った。(取材・文/小野寺亜紀 撮影/阿部章仁、舞台写真/上原タカシ、阿部章仁)

INTERVIEW & SPECIAL 2022 1/7 UPDATE

左から、吉田智誉樹代表取締役社長、小山ゆうなさんさん、長田育恵さん

壊れかけのロボット「タング」と、両親を事故で失い無気力な日々を送る主人公のベンが出会い、旅を通して絆を深め、人生の大切なものを見出していくミュージカル。原作は2015年に英国作家デボラ・インストール氏が出版した同名小説で、各国でロングセラーを記録し、今年8月には二宮和也さん主演の映画『TANG タング』の公開も予定されている。

アンドロイドが人間に代わって家事や仕事を行う近未来、イギリスの田舎町に住むベンが庭で見つけた旧式ロボットのタングは、駄々をこねる幼い子どものように「イヤイヤ!」と叫びながら家の中を走り回る。ベンの妻・エイミーはタングを処分するように言うが、ベンはタングを修理するために国境を越えて旅に出る。弁護士として働くエイミーのベンへのいら立ち、アンドロイドと共存する中で生まれる世の中の溝など、さまざまな立場からの想いや状況が、幅広い楽曲に乗せてテンポよく紡がれていく。再演に向けてブラッシュアップを重ねてきた、台本・作詞担当の長田育恵さんと、演出担当の小山ゆうなさんが、まず初演の手応えや作品の深化について語った。

長田「この作品は登場人物に共感させる力がとても強く、普通の人たちの日常を丁寧に描くことで、そこに潜む“祝福”みたいなものが舞台に立ち上がっていきます。ささやかだけれども普遍的なメッセージが込められていて、その“ささやかさ”こそが今の時代にフィットし、新しいミュージカルとして受け入れられたように感じています。たくさんの楽曲、装置、ロボットの可愛さなど色々な要素がありますが、最も大事にしているのは“ささやかな人間の感情”で、再演でもその方針は変わっていません」

小山「まず、タングをパペットにしようという劇団四季さんのアイディアが素晴らしく、お客様の想像にゆだねる部分がとても大きい作品です。そして長田さんの、日常的なのにポエティックな、美しい日本語で書かれている本を、言葉を大切にされる劇団四季の俳優さんたちが扱われているというバランスが、とても良かったと思います。さらにお客様が一緒に作品を育てて下さり、作品がより豊かに変容しているのを感じます。初演から出ているメンバーも、役がどんどん深まっています」

劇団「てがみ座」を主宰し、紀伊國屋演劇賞個人賞など数々の賞を受賞している今注目の長田育恵さん。劇団NLT演出部に所属後、「雷ストレンジャーズ」を主宰し、2017年の世田谷パブリックシアター主催公演『チック』で2018年読売演劇大賞優秀演出家賞などを受賞した小山ゆうなさん。二人の才能に以前から注目し、今作に起用した吉田智誉樹社長は、「ここまで作品が愛されたのは、今回のクリエイターの布陣ゆえ。特にこのお二人は、本当に素晴らしい仕事をしてくれました」と改めて感謝を述べた。

今作では、旅先の国のカラーを多彩に表現した装置やダンス、鮮やかな照明などにも目を奪われるが、やはりパペティアと呼ばれる2名の俳優が歌や台詞を届けながら操作する、タングの動きと表情に釘付けとなる。ゆらゆらと体を揺らして歩く姿、顔を傾けたりベンを見上げたりする角度、目の表情などがとても自然で、観ているこちらの愛おしさも増していく。パペットのデザインとディレクションを行ったのは、『リトルマーメイド』などにも携わったトビー・オリエ氏。

小山「最初は口を動かす、パーツを光らせるとか色々なアイディアがあったのですが、どこを動かすかなどはトビーさんが計算し、チョイスして決まりました。タングは目の角度、まぶたの開閉が主なのですが、パペティアはタングの顔を正面から見れないですし、難しい技術が必要。目の角度も、(操作する)手の感覚でしかわからない。タングの頭を担当する人と、胴体を担当する人に分かれるのですが、目立たないけれど支えになっている胴体を担う人の役割がすごく大きくて、二人の息が合わないといけない。パペティアは議論しながら切磋琢磨し、初演の稽古からすごい進化を遂げています!」

最初からプログラミングされたロボットであるはずのタングが、次第に人間らしい感情を抱き、ベンとの関係性を築くなかで、ベン自身も殻を破り成長していくのが今作の見どころでもある。

長田「日本には鉄腕アトムやドラえもんなどの文化がありますが、タングはいわゆる感情が補填された可愛いキャラクターとして存在するのではなく、ブラックボックスでもあります。オープニングにある通り、人間が何かを入れたらそれによって方向性が変わる、未知なる未来を秘めた箱なんです。ベンが旅の過程で何を感じているのかを、タングが感じ取り、人の営みの美しい部分を全部取り入れて、最後に自分の道を選びます。そういう、タングの未知なる方向性が重要だと感じながら、感情を粒立てるように創作しました」

ベンとタングの旅先では、アメリカの超一流プログラマー、秋葉原で働く元AI研究者、パラオで隠居暮らしをする男など、様々な人との出会いがある。今作では俳優がアンサンブルを含め色々な役を演じる演劇的手法がとられ、温かい手作り感のある作風を引き立てている。

長田「もともと小説家志望だった私が、大学のとき間違ってミュージカル研究会に入ったのが舞台との出会いなのですが、その時から一番の憧れが劇団四季でした。その四季に一歩入ったら、才能に恵まれた素晴らしい方々の集団なのに、一人ひとりが絶え間ない努力をされている。努力の天才みたいな方たちが集まっていて、キャストだけではなく、スタッフの隅々に至るまで、舞台にかける情熱、もっと上を目指そうとするモチベーションが高いことに驚きました。
また、ゆうなさんの演出はその俳優自身が持っている魅力を等身大の役として引き出してくれて、アンサンブルにいたるまで、全員実在感のある人物が出来上がっていく。舞台上で呼吸が自然に流れている、生き様を信じられるというゆうなさんの演出がすごく好きで、とても信頼しています」

長田さんと小山さんは今作が初タッグだが、同世代の演劇人として親しみを感じながら、コロナ禍でもSNSなどで連絡を取り合い、緻密に作品を練り上げていったという。

小山「(長田さんは)こんなふうに柔らかい方なので(笑)、コミュニケーションが取りやすく、質問もどんどんさせていただき、とてもやりやすかったです。今回、初演ではいっぱいいっぱいで気づかなかった言葉のチョイスの素敵さ、深さに、改めてすごいなと思いました」

劇団四季にとっては、『ミュージカル南十字星』以来、16年ぶりの一般向け新作オリジナルミュージカルとなった。

吉田「ファミリーミュージカルではなく、一般ミュージカルとして2018年に着手しました。素材選びから何もかもが手探りで、生みの苦しみを味わった分、非常に愛おしいものになりました」

長田「より深く、物語の筋と描写を印象づけるため、(原作の場面を)色々ミックスし、オリジナルで創り直すということもしています。小説はイギリスが舞台でウイットに富んだ軽妙さがあるのですが、日本の働き盛りの私たちが観たら、どういう夫婦像なら共感できるか、などと考えて、夫婦のやり取りをきめ細やかにし、タングとの出会い方も丁寧に解きほぐすようにしました」

そうやって生まれた舞台は、よくありがちなロボットと人間の対比、友情などを超えたもっと深いところ、人生の再生、生きている喜びなど、私たちに最も身近で、今の時代に求めているものをそっと提示し、背中を押してくれる。

小山「長田さんが書いた言葉は、私自身にもいまだにキラキラと響きます。物語としては、浮き足だったものではなく、地に足のついた幸せ、痛みとかを描いているので、例えば家で子どもとケンカをしたとかお客様も日常で色々あるなか、たぶん観るたびにキャッチするものは違うと思うので、自由に感じ取っていただければうれしいです」

テーマ曲「ロボット・イン・ザ・ガーデン」のメロディを聴くだけで、ウルッと涙腺がゆるむような心洗われるミュージカル。1月22日(土)・23日(日)の公演ではライブ配信も予定されているので、ぜひ寒い冬に心を温めてほしい。

【公演データ】
劇団四季 ミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』

2021年12月22日(水)~2022年1月23日(日) 東京・自由劇場
2022年2月23日(水・祝)~4月16日(土) 京都・京都劇場
2022年5月14日(土)~ 全国公演

原作:デボラ・インストール
台本・作詞:長田育恵
演出:小山ゆうな

予約方法:インターネット SHIKI ON-LINE TICKET http://489444.com

【ライブ配信データ】
日程:2022年1月22日(土)13時開演、1月22日(土)17時半開演、1月23日(日)13時開演
※ライブ配信のみ。巻き戻し視聴・見逃し配信はなし
料金:4500円
販売期間:12月2日(木)10時~各回の開演時刻まで

視聴方法
①劇団四季ライブチャンネル
https://shiki.stores.play.jp/

②U-NEXT
https://www.video.unext.jp/lp/shiki_robot

③Rakuten TV
https://tv.rakuten.co.jp/static/stage/robot20211101/


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