インタビュー & 特集

「楽曲が入って完成する。ミュージカルはそこが素晴らしい」 レイ役・ジュウザ役 伊礼彼方×上原理生 対談

★★開幕記念ミニ連載 part.3★★
ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』が12月8日に初日を迎えた。レイとジュウザ二役をダブルキャストで演じる 伊礼彼方と上原理生が互いの魅力を語り合った。(文:臼井祥子)

INTERVIEW & SPECIAL 2021 12/8 UPDATE

●最初に出演が決まった時のお気持ちや周りの方の反応はいかがでしたか?

伊礼 僕は原作の『北斗の拳』をあまりよく知らなかったんですよ。パチンコ屋の看板と「YouはShock」(アニメ版のOPテーマ「愛をとりもどせ!! 」の歌詞)のイメージしかなくて(笑)。それで出演が決まって全巻読みまして…「うわー、みんなユリア取り合ってるんだ!」と思いました(笑)。たぶん原作者にとって理想の女性がいて、それがユリアなんだろうなあと。

上原 僕は原作はもともと読んでいたので、あの世界観をミュージカルにするんだってことに驚きました。それで自分の役がレイとジュウザと聞いて、「そうなんですね」って言ったら「なので(ダブルキャストだけど)毎日出ますよ」って。ダブルキャストで二役というのは初めての経験なので「そういうことになるのかあ」と思いました。それと、普段ミュージカルにあまり関心のない男性の反応がすごくて、「ちなみになんの役をやるの?」「レイとジュウザです」「めっちゃカッコいいじゃん」って言われてました。

●お稽古中に見つけたお互いのすごいところは?

伊礼 理生くんのジュウザの時のソロのナルシストっぷりがすごいんですよ。

上原 それは褒めてるの?(笑)

伊礼 褒めてる褒めてる(笑)。俺はそういうの本当に苦手で。理生くんはもともとロックバンドを目指していたそうで、だからそういう気質をもってるんだなと。「俺を見てくれ」的な。

上原 (笑)。

伊礼 僕もバンドをやっていたんですけど、ロックじゃなくてパンクとか、メッセージ性の強い音楽をやっていたので、形じゃなく「ウワーーー!!!」とか、シャウトしたりすることをカッコいいと思ってたんですよ。ビジュアル系や、ダンサーみたいに形で見せることが得意じゃなかったので、そういうところを盗もうと思ってます。

上原 そんなこと、やろうと思ってやってないよ。

伊礼 自然にできるのがすごいんだよ。

上原 (伊礼と)一緒の役をやったことはあったけど、こんなふうに一緒の空間で一から作り上げてくのが初めてです。伊礼さんは芝居をずっと突き詰めてやってきたから、「このシーンはこうなんじゃないか」「こういう感情があって、こうだから、ここに一つ動作が入ると違うんじゃないか」とかを経験から来る言葉で理論立てて構築していくので、すごく勉強させてもらっています。

伊礼 演劇はチームプレイで勝ち負けじゃないので、協力しあったほうがお互い特なんですよ。同じことをやっても同じようにはならないので、だったらどんどんいいところをマネしてみて、合わなかったらやめればいいし。平和的に協力しています。

●ほかに稽古場ですごい人はいますか?

上原 (大貫)勇輔ですね。

伊礼 勇輔のダンスがやっぱすごいですよ。初めて生で見ましたけど、あいつのダンスは別格です。

上原 力強いです。

伊礼 力強いし、繊細だし、ただの形じゃなくて、ちゃんとキャラクターの感情がのっている動きになっている。僕みたいなダンスを知らない人間からすると感動する理由がそこなんです。

上原 ひしひしときますよね。あと安福(毅・ミスミ役 ほか)さん。素晴らしいですよね。

伊礼 安福さんはアンサンブルの方なんですが、とにかく芝居をちゃんと生み出す、世界観を作ってくださるんですよ。アンサンブルってプリンシパルの邪魔をしないように遠慮がちなんですよ。でも逆に遠慮することによって悪目立ちするケースもあるんです。そこを安福さんはしっかりと構築して、僕らがうまく見えるように、そして自分もちゃんと立つようにお芝居をされる方です。

上原 素晴らしいです。あとは(上田)堪大(シン役)くん。太道をやっていて、その動きを見せてくれるんですけど、ちょっとした構え方とか足のステップとか、経験者じゃないと出せないものがあるんですよ。

伊礼 飯作(雄太郎・アンサンブル)くんもすごい。空手道のオリンピック候補にもなった選手で、本当にすごい方です。この座組にはいろんなエキスパートがいて、刺激的です。

上原 アメリカみたいだよね。

●『北斗の拳』の原作は、お二人にとっては昔の作品になると思います。核戦争への恐れが今より生々しく感じられていた時代背景の中で描かれた作品ですが、どんなふうに感じていらっしゃいますか?

上原 確かに自分たちより一回り上の世代の作品だなとは思います。でも終末ものって、今でも起こりうることだなとも思うんですよ。核戦争に限らず、たとえばなにか天災が起きたりした時に、人間がどうなっていくのか。極限状態で、強奪する者もいれば、奪われる側の人間もいる。そういう中で人としての道を歩んでいけるのか。そういうものの縮図でもあるのかなと思っています。

伊礼 僕は、そういう点では、自分には縁遠いテーマだなと思います。僕の父は戦時中に防空壕で生まれ、戦後移民として南米に渡って、僕が8歳の時に家族で日本に出稼ぎにやってきました。だから日本に親族がいないんですよ。戦争の話を父から聞くこともなかったし、NHKのドキュメンタリーくらいでしか知らないので。だから『北斗の拳』には、非現実的なイメージがありました。ファンタジーに近い感覚かな。

●そういう作品が、今、グランドミュージカルになることについて、どう思われましたか?

伊礼 実は最初脚本を読んだ時は、原作を読んだすぐ後だったこともあって、ちょっと内容が薄いなって思ったんですよ。長い物語を上演時間内に収めるには、どうしてもすごく凝縮しないといけないから、しかたないのかなと。でもそれが、曲が入った途端に膨らんだんですよ。物足りないと感じた部分が全部埋まったんです。だから脚本の(高橋)亜子さんと石丸(さち子・演出)さんとプロデューサーが話し合って、曲が加わったときのことを想定して、いろいろな場面をカットして作られたんだとわかって。その後、また原作を読み直してみたら、音楽によって逆に濃くなっているところもあるし、この壮大な物語を本当によくまとめたなぁって非常に感動しました。これがミュージカルの強みだなとあらためて思いました。一緒に一から作っていくオリジナルミュージカルだから感じられたことなんですが、曲が入った時の完成感、地に足がついた感じ、ミュージカルってそこが素晴らしい。

上原 僕もそう思います。1シーン1シーンが濃いですよね。今はまだ、稽古で試行錯誤している段階ですが、完成を楽しみにしていただけたらと思います。

[公演情報]

ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』
<東京>
2021年12月8日(水)~12月29日(水)
日生劇場
<大阪>
2022年1月8日(土)・9日(日)
梅田芸術劇場メインホール
<愛知>
2022年1月15日(土)・16日(日)
愛知県芸術劇場 大ホール

原作:漫画「北斗の拳」(原作:武論尊 漫画:原 哲夫)
音楽:フランク・ワイルドホーン
演出:石丸さち子
脚本・作詞:高橋亜子
振付:辻󠄀本知彦 顔安(ヤン・アン)
出演:大貫勇輔 平原綾香・May’n(Wキャスト) 加藤和樹・小野田龍之介(Wキャスト) 植原卓也・上田堪大(Wキャスト) 川口竜也 白羽ゆり 松原凜子 伊礼彼方・上原理生(交互で役替わり) 福井晶一・宮尾俊太郎(Wキャスト) ほか
https://horipro-stage.jp/stage/musical_fons2021


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